羽休みに娯楽を

読書、主に小説の感想を上げています。たまに、漫画や映画等も。

ミステリー

さよなら妖精

読み終えた後にタイトルの意味に気づく。悲しすぎる… 小説は発売された後に物語が変わるわけないのは分かり切っていることだけど、それでも否定したくなる結末は何度読んでも痛みが伴う。頼むから幸せでいて欲しかった。無邪気なマーヤには夢を叶えて欲しか…

真夜中法律事務所

五十嵐律人先生のストーリーテラーっぷりが発揮されていて最高でした。 設定、登場人物の目的がしっかりしてる分、結末にかけて高まる展開をしている。 冤罪である場合だと死者の幽霊が出てくる。死者が見える法律家の葛藤はいかにといったところ。起訴率を…

愛蔵版〈古典部〉シリーズII クドリャフカの順番・遠まわりする雛

素敵な作りで大好きな古典部シリーズ愛蔵版。 内容分かってるのに、1話1話噛み締めるように読んでいたくなる素晴らしさ。 青春の光りと影、それを描かれている。文化祭では期待、才能。祭りでは想いと言葉。奉太郎、千反田、伊原、里志、それぞれの胸に秘め…

ぼくと、ぼくらの夏

表紙が魅力的で、アンニュイな2人が素敵。 探偵とワトソンが高校生なのにハードボイルドの雰囲気が漂っていて、良い。味のある会話や遠回りな比喩、掴みどころのない主人公・戸川が魅力的でした。 一つの自殺事件を追っていくうちに見えてくる景色が変わって…

厳冬之棺

表紙、タイトルから面白そうな気配がぷんぷんで読みました。 非常に魅力的なミステリ作品で、今後の作品が楽しみな作家さんですね。密室の不可解さ、序盤から暗示される怪しげな風習、真相が気になる謎でした。 また、登場する探偵が漫画家、助手が声優、2人…

コーチ

人に仕事を教えることは難しい。様々な性格、向き不向きがあるから型通りの教えになってはならない。 今作は能力があるが、燻っている刑事の背中を押すコーチ的存在である向井が非常に魅力的。意味深で掴みどころがないが教えられた人からすると救いの声にな…

ecriture 新人作家・杉浦李奈の推論 X 怪談一夜草紙の謎

李奈が売れっ子作家みたいな扱いを受けて戸惑っている様子は現実でもあるのかなと想像してしまう。だけど李奈が地に足つけた歩みをしているから揺らぐ心配がないのは非常に安心で、応援したくなります。地道にめげずに小説と向き合っていたから、簡単に天狗…

法医昆虫学捜査官

虫の声なき声を拾うためならなんでもする法医昆虫学者の赤堀の無鉄砲さと思いやりが魅力的でした。 難事件を解く鍵は昆虫学にあり。警察の上層部の思いつきで捜査に法医昆虫学者加えることに。刑事・岩楯は最初は困惑するが、捜査が進むにつれて新たな視点か…

同じ星の下に

誘拐作は様々あるが、今作は優しさと厳しさの塩梅が上手かったです。だから最後まで真相を知りたくて仕方なかった。 優しい誘拐を描いていて、ある程度先が読めてしまうのが難点だが誘拐犯と虐待されていた人質の関係は安らぎの時間だったのは良かったです。…

ミナヅキトウカの思考実験

気になる作品だったので、献本で読ませて頂き助かりました。 題材が思考実験、ミステリ、オカルトとあって、各話の謎の始まりから解決まで興味が尽きることがなかった。 マクスウェルの悪魔、シュレディンガーの猫、中国語の部屋、スワンプマン、などなど小…

グレイラットの殺人

ワシントン・ポーシリーズ最高。 毎回、最後まで読んで事件の真相に唸るばかり。 前巻の真相に痛めつけられたが、今回はわりとユーモア多めで楽しめました。ポーとティリーのわき道にそれる会話はずっと追っていたい気分になります。タッグ感に磨きがかかっ…

ミステリ作家 拝島礼一に捧げる模倣殺人

題材、テーマが興味深くて、物語にうまく溶け込んでいたので説教臭くなっていないのが素晴らしい。 人を傷つけない表現はない。それが現実。それでも創作者として矜持を持って、表現をしていく拝島先生の決意は希望があって良かったです。 現実でも起こり得…

午後のチャイムが鳴るまでは

阿津川先生の新作はユーモア溢れる青春ミステリ。 読み終えたら、あぁ!と繋がりに気づき、満足して読み終えられる短編集でした。馬鹿なことに夢中になれる高校生の時間は貴重なものです。各話の謎に至るまでの伏線がしっかり張られていて、読者としても考え…

ぎんなみ商店街の事件簿 Brother編

brother編ということで、男兄弟の絆を描いていた。親がいない環境だからこその話だったかな。良い。 うお、凄い。sister編からのbrother編になって、違和感やしこりが吹き飛んだ。見方が変わると出来事の違う方面を炙り出せるのか。登場人物が入り乱れて少し…

ぎんなみ商店街の事件簿: Sister編

挑戦的な作品のようですが、単純に1冊としてもまとまっている。 事件を複数の視点で見たら真相が変わって見えるという試みは興味深くて読みました。そこを抜きにしても楽しめると思いました。 各話のタイトルに行き着く過程が秀逸で、爽やかな読後感です。 …

鏡の国

岡崎琢磨先生の最新作は最高傑作でした。 読み応えあり、驚きあり、反転あり、読む前から種を明かそうと注意してましたが無理でしたー 作中作品というのを忘れてしまいそうになるくらい練られている。だから終盤に明かされる反転の際の細やかな伏線配置に丁…

怪物のゆりかご

前作が好きだった人は安心して読んで欲しい。面白さが落ちず、むしろ良くなっているのではないかと思うくらい、のめりこめました。 衝撃度は前作程ではないが全体的に見れば、こちらの方がという感じです。 イジメが題材になっていたり、人が人を見るものさ…

ちぎれた鎖と光の切れ端

デビュー作が良かったので今作も楽しみにしてました。物語運びが巧みで、グイグイ惹きつける設定、シチュエーションを見せるのが上手い。 ただ、作品の構成が非常に良いが、テーマがちょっと古臭く感じてしまったのが惜しまれる。目には目を歯には歯を。復讐…

あの子の殺人計画

うわぁ。騙された。こんな風に複雑な構造になっているとは… 社会的問題を孕んだシリーズで、虐待の問題を取り上げていました。虐待を受けていた子供はそれが当たり前だから虐待だと思わないのは辛い。虐待を受けているという認識がないと、助けてを言えない…

君を描けば嘘になる

綾崎隼先生の作品は気になってましたが、もっと早くに読めば良かった! 今作が初作品としては文句なしの名作でした。 才能、芸術、一概には説明出来ないものを追求していくと迷ってしまう。それでも、自分の芯に眠る創作意欲を忘れてなければ大丈夫。 ただ、…

ヴァンプドッグは叫ばない

うわー、そう来るか!と驚かされる1冊。というかマリア&漣シリーズは毎回そう。 今回は現代設定で吸血鬼が登場してきて、いるわけないのに状況設定からいるとしか思えなくなってしまう。摩訶不思議な殺人、脱走した殺人鬼、緊迫感ある展開で最後の最後まで…

ecriture 新人作家・杉浦李奈の推論 IX 人の死なないミステリ

出版の裏側を暴いていく今シリーズ。 今回は人の死で感動を生む作品が業界で流行らせた件については、嫌気がさしてました。売れて、数字が出れば出版社的にはウハウハだろうが小説としての価値はどうなのかというところ。 反対に人の死なないミステリは好き…

焔【ほむら】と雪【ゆき】 京都探偵物語

大正時代、その時代の背景に乗っ取った男女の関係、人と人の関係を利用したミステリでした。各話の余韻がまた苦い。 現場に出向く探偵鯉城と病弱ゆえに安楽椅子探偵露木。2人の関係は簡単に説明出来るものではない。なんとも感情揺さぶられる関係性。短編形…

2023年 上半期おすすめミステリ作品

上半期に読んだミステリ作品でおすすめ作品を紹介していきます。 衝撃を受けたのはドールハウスの惨劇ですかね。デビュー作でありながら完成度が高かったです。シリーズ化するみたいで楽しみです。岩井圭也先生の完全なる白銀は真実を求めていく過程と待ち受…

アンと愛情

めちゃくちゃ良かった〜! 大好きなシリーズです。アンちゃんが順調に成長しているのが分かるが、壁にもぶち当たる。だけど乗り越えていく姿勢が魅力的です。 和菓子のネタやデパートの不思議を混ぜて、人の思い込みや言葉の良さと難しさを表していて、勉強…

十戒

わー、重たい。 方舟に似た表紙と漢字2文字タイトルから予想していたが、最後が良いね。 だが、方舟で衝撃を受けていたからこそ、かなり注意して読み進めた。おかげで最後の衝撃は予想出来た。こればっかりは仕方ない。読みながら、あれやこれやと想像を巡ら…

ヴィンテージガール 仕立屋探偵 桐ヶ谷京介

服を見れば、その人の状態を把握することが出来る名探偵登場。服の皺や状態から推測してズバリ当てるのは珍しく、頼もしい。設定が気になって読みましたが、驚きました。ガッツリミステリでした。 最初は軽いミステリかなと思ってましたが、事件を追っていく…

サクラサク、サクラチル

辻堂先生の作品は構成と登場人物の掘り下げが上手くて、没頭して読んでしまいます。 今作は東大受験、ネグレクトで苦しめられている2人を描いていました。 読んでいて、東大受験ってサスペンスみたいだなと思いました笑 難関大学だからこそ課せられるものが…

可燃物

ミステリのアンソロジーで収録されていた一編は読んでいたがゆえに、楽しみにしてました。 米澤穂信先生の警察ミステリが初めてなのは意外というか、作風の幅の広さを感じられる作品でもあります。 孤独の刑事が事件の真相に至るまで、思考を深めていく。周…

アミュレット・ホテル

作者のミステリ作品が好きなので、今作も読みました。 犯罪者向けに営業するホテルで起きる事件。ホテル内のルールを守っている間は何も関与しないが、ルールを守るものには容赦ない。面白い設定で、楽しめました。 ホテル探偵の背景やホテルのあり方も描写…