羽休みに娯楽を

読書、主に小説の感想を上げています。たまに、漫画や映画等も。

創元推理文庫

さよなら妖精

読み終えた後にタイトルの意味に気づく。悲しすぎる… 小説は発売された後に物語が変わるわけないのは分かり切っていることだけど、それでも否定したくなる結末は何度読んでも痛みが伴う。頼むから幸せでいて欲しかった。無邪気なマーヤには夢を叶えて欲しか…

ぼくと、ぼくらの夏

表紙が魅力的で、アンニュイな2人が素敵。 探偵とワトソンが高校生なのにハードボイルドの雰囲気が漂っていて、良い。味のある会話や遠回りな比喩、掴みどころのない主人公・戸川が魅力的でした。 一つの自殺事件を追っていくうちに見えてくる景色が変わって…

コーチ

人に仕事を教えることは難しい。様々な性格、向き不向きがあるから型通りの教えになってはならない。 今作は能力があるが、燻っている刑事の背中を押すコーチ的存在である向井が非常に魅力的。意味深で掴みどころがないが教えられた人からすると救いの声にな…

卒業生には向かない真実

のめり込むように読んでました。 自由研究には向かない殺人から始まる三部作の締めくくりである今作はかなりダークなミステリに発展していて、最後の最後までハラハラドキドキしました。凄いものを読んだと感じました。 前作から不穏な気配はありましたが、…

サエズリ図書館のワルツさん2

紙の本の貴重さ、大切さを示す、素晴らしい作品です。 本の重さは持っていたい人なので、刺さります。 今回、本を直す。図書修復家をテーマに組み込んでいて、図書館が存続する限り必要不可欠な存在だなと。 図書修復家を目指す女性の苦悩がありましたが、彼…

サエズリ図書館のワルツさん1

素晴らしい作品でした! 今、自分が読書する意欲が落ちているタイミングで巡り会えたのはラッキーでした。 単行本が気になっていたので、良いタイミングで文庫化してくれました。紙の書籍が貴重な世界にある図書館の物語。 現代はまだかもしれないが、徐々に…

Y駅発深夜バス

あらすじにある通り、ミステリのショーケースのような1冊でした。久しぶりにミステリ作品で気持ちが高まりました。 あの手この手で、謎解きの快感が伝わってきました。 ミステリ好き必読の短編集になっていました。様々なバリエーションで読者を振り回してき…

蝉かえる

全話シリアスで、ユーモアが少なめだったのは残念ですが、その分重みのある物語になっていました。謎の背景にある、人の願いには切なさが多分に含まれていました。 残酷な現実と向き合っていく、人の姿勢が窺える。 魞沢も控えめな態度でしたが、彼の優しさ…

サーチライトと誘蛾灯

蝉かえるが文庫化されたので、読み返しましたが、何度読んでも面白い。 主人公・魞沢のユーモア溢れる語り口から、切ない事件の真相に向かう流れがスムーズ。 だから、感情の流れをよく追いかけられる。事件関係者の内なる想いまで拾っているからこそ、読後…

動物園の鳥

素晴らしい最終巻。 坂木と鳥井の関係の不安定さ、危うさについて考える。 読み終えて、タイトルと表紙を見ると、繋がっているんだなと感じました。 人間だって、動物。動物だって、自然に生きている。悩み、苦しみながらも生き方を見つけていく。 坂木と鳥…

仔羊の巣

シリーズ2巻目。 1巻に出てきた人達も出てきつつ、坂木の同僚や様々な人が新しく登場してくる。 何度も出てきて、坂木と鳥井に絡んでくる人達の優しさは良い。生活に根付いているところにシリーズモノの良さが感じられます。 今回も未来に、現状に迷える人達…

青空の卵

坂木司先生のデビュー作。 自分は今作を読んで、坂木司先生の作品の虜となりました。 改めて読み返しても、人の負の感情と向き合っていく強さを与えられる作品ですね。坂木と鳥井の2人が一緒にいることもそうだし、登場する人達にも抱えているものがある。 …

犯罪

サクサク人の裏に触っていく短編集でした。 人の悪となる根幹に触れるようで、読み進めるのが止められない。犯人を切り捨てたり、拾ったり、読み味が独特で、短編集として旨みがあるなと。 話ごとにばらつきがあるのはデビュー作だから仕方ないのかなと。そ…

11文字の檻: 青崎有吾短編集成

素晴らしい短編集でした。青崎有吾先生の作品が好きな人ならば読んで損はしない。各所に収録されていた短編を1冊にまとまっているなんて、贅沢過ぎた。 最後の作者解説も面白い。 表題作の過酷な環境においても思考を止めず、考え続けるのは良い。最後の最後…

刑罰

タイトル、表紙に惹かれて読みましたが、中々パンチの効いた短編集でした。必要な部分のみ描いて、不要な部分は削いでいるような文章で、切れ味鋭い短編ばかりでした。 また、ふわっとしたまま、そのまま終わる話もあったりと作者の発想の良さが伝わってくる…

定価のない本

タイトルから気になって読みましたが、ミステリとしても、戦後の日本が見えたり、本に関わる人達の苦境があったりと様々な要素が詰まっているので、最初から最後まで気が抜けない。しかし、読み終わった後は非常に胸が熱くなりました。 タイトルの定価がない…

サスペンス作家が人をうまく殺すには

あらすじから面白そうな気配がプンプンしてましたが、想像以上に楽しめました。 海外小説を読み慣れてなくとも、入りやすい作品かなと。 主人公・フィンレイが物騒な殺人事件に巻き込まれていくのが非常に軽快で、思わず笑ってしまいます。殺人なんてやるつ…

探偵は友人ではない

青春ミステリ作品でもかなり好きなシリーズの2作目。 表紙が単行本から変わっていたが、これはこれで良いですね。 内容としては、前作の探偵は教室にいないに比べて、よりなぜそんな不思議なことが起きるのか、起きた背景を掘り下げる解像度が増していたなと…

ペンギンは空を見上げる

最高の読書体験でした。 ちょっとしたミステリがありつつも軸は少年、少女の成長物語。 思春期の葛藤と成長、そして希望が詰まっていて、心に響く成長物語になっていました。 心洗われるとはこのことか。 主人公・ハルがなぜ風船ロケットを飛ばし、宇宙を目…

夏を取り戻す

1年振りに再読。 夏の季節にピッタリの作品だ。2度目なので俯瞰して読めました。伏線の貼り方が上手いなと改めて確認出来ました。 また、見逃していた部分を発見できて、何度読んでも考えさせられる小説だなと。 小学生達が失踪した理由、そして、調査する側…

今だけのあの子

イヤミスの印象が強い作者だが、前向きに終わる作品もあるのかと、新しい発見でした。多少イヤミス要素はありましたが、全体的に見れば希望がある感じでした。 女性同士の関係を描く短編集。 どれも粒揃いで惹き込まれます。短編でありながら、物語としての…

ネクスト・ギグ

最高にロックでミステリー。 不可解な殺人がライブ中に起きることで、なぜ殺されたという謎とロックとは何か。という問いかけが繰り返される。 共に、興味を惹いて仕方なかった。 音楽に詳しくなくとも、作中の説明が優しくて、かつ頭に入りやすい精神的な…

臨床探偵と消えた脳病変

粒揃いの短編集でした。 各話の構成が素晴らしくて、物語に入って、出るときまで計算されているようでした。 表題作はミステリーズ新人賞で何度か読んでますが、それでも味わえる奥深さがありますね。 表題作以外も良かったです。 医療ミステリーですが、良…

優等生は探偵に向かない

待望の続巻が来た。 前巻の自由研究には向かない殺人から続いているというのが、こう作用するのかと。 ピップが探偵として動くことについて悩み、苦しむ。それは前回犯人を見つけだしてやり遂げたから。良いことだけではないのを知っている。今巻も探偵とし…

慟哭は聴こえない: デフ・ヴォイス

もう、このシリーズ大好き。 障害を抱えている人達の叫びや苦しみには心が苦しくなるが、その状況は現実でもあるのだと思うと勉強しないといけないなと思う。 今回は短編構成だがどの話も粒揃い。各話、テーマに沿った展開で、最後まで読むとひしひしと切な…

龍の耳を君に 文庫

前巻で終わらずにシリーズ化してくれたのは嬉しいです。 荒井が家庭、仕事で悩みながらも困っている人を見捨てられない優しさがある。 その性分が今回、人助けにつながっていて良い。 ろう者がろう者を犯罪にハメたり、障害を持っている人が証言をしたり、…

償いの雪が降る

続編の新刊が発売されるそうで、気になってたら今作が先というので読みました。 想像以上にタイトルが胸を打つ展開でした。 主人公・ジョーか殺人の罪を負った罪人・カールの話を聞き、伝記を書くことに。 カールの様子や関係者の話を聞いていくうちに不審…

強欲な羊 文庫

ミステリーズ新人賞受賞作品集の監獄舎の殺人で表題作を読んでいて、他の話も気になって読みました。 やはり、表題作が鮮烈で印象深くて何度読んでも良い意味でイヤな気持ちになります。 認識を誤らせる展開とその伏線の回収方法が非常にいやらしさがあって…

オーブランの少女 文庫

デビュー短編集でこのクオリティーは凄い! あらすじから女性の闇を描かれていそうで期待しでしたが、軽々と期待を超える1冊になっていました。 驚き、イヤミス、笑い、切実、ホッとする。短編集でそれぞれの話の余韻が様々で非常に良い。各話の謎はもちろ…

夜叉沼事件 創元推理文庫

今回は身に危険が迫ったりしなさそうで、安心して読めました。 ミステリーと俊介、ジャンヌ、アキの変化を感じられるのが噛み合っていて、良い読み応えでした。バランスが取れていました。 野上さんが俊介に諭すところや、店長がアキを思って手配したりと大…