羽休みに娯楽を

読書、主に小説の感想を上げています。たまに、漫画や映画等も。

さよなら妖精

さよなら妖精 (創元推理文庫)

読み終えた後にタイトルの意味に気づく。悲しすぎる…

小説は発売された後に物語が変わるわけないのは分かり切っていることだけど、それでも否定したくなる結末は何度読んでも痛みが伴う。頼むから幸せでいて欲しかった。無邪気なマーヤには夢を叶えて欲しかった。それくらい魅力的な少女でした。

 

安全な日本と戦争地帯の海外。育ちが違えば価値観、信念が違うのがよく分かる。

主人公・守屋は平均的な日本人だと思う。だからこそ、マーヤは踏み込ませたくなかった。

痛烈なピンタを食らう作品です。

 

大刀洗のクールだけど背負っている姿は痛ましい。彼女がいるから、今作は盛り上がったのかなと。

 

日常に潜む謎解きも魅力的でした。

 

だから変わり映えない日常の大切さ、貴重さが伝わってきました。

 

1991年4月。雨宿りをするひとりの少女との偶然の出会いが、謎に満ちた日々への扉を開けた。遠い国からはるばるおれたちの街にやって来た少女、マーヤ。彼女と過ごす、謎に満ちた日常。そして彼女が帰国した後、おれたちの最大の謎解きが始まる。謎を解く鍵は記憶のなかに――。忘れ難い余韻をもたらす、出会いと祈りの物語。『犬はどこだ』の著者の代表作となった、清新な力作。解説=鷹城宏

真夜中法律事務所

真夜中法律事務所

五十嵐律人先生のストーリーテラーっぷりが発揮されていて最高でした。

設定、登場人物の目的がしっかりしてる分、結末にかけて高まる展開をしている。

 

冤罪である場合だと死者の幽霊が出てくる。死者が見える法律家の葛藤はいかにといったところ。起訴率を上げるために踏み込まないといけない、しかし証拠がないというのは歯痒い問題。

今作だと死者が見える段階で真相は違うと見抜けるが、現実だとそうはいかない。死者が出てくるからこその真実には驚きました。

設定の意味と狙いが気持ちいいくらい絡んでいて、良かったです。

 

〈その日から僕は、死者が視えるようになったのである──〉

それは暗い夜のことだった。
検事である僕・印藤累(いんどう るい)は、夜道に立ち尽くす幽霊の存在に気づいた。
動揺する僕の前に現れたのは「案内人」を自称する親しげな青年・架橋昴(かけはし すばる)。
彼はこの世に未練を遺す幽霊を、ある場所に導くというのだ。
それは、真夜中にだけ開かれている弁護士事務所……その名は「深夜法律事務所」という。

リーガルミステリの旗手が拓く新境地!

愛蔵版〈古典部〉シリーズII クドリャフカの順番・遠まわりする雛

愛蔵版〈古典部〉シリーズII クドリャフカの順番・遠まわりする雛

 

素敵な作りで大好きな古典部シリーズ愛蔵版。

内容分かってるのに、1話1話噛み締めるように読んでいたくなる素晴らしさ。

青春の光りと影、それを描かれている。文化祭では期待、才能。祭りでは想いと言葉。奉太郎、千反田、伊原、里志、それぞれの胸に秘める気持ちを覗けるのは限りなく貴重なものなんだと改めて思いました。

 

クドリャフカの順番での里志、遠まわりする雛の奉太郎、普段は控えめな彼らにも明かしたくない感情がある。それを言葉に変換して伝えられる日がくるのだろうか。

 

千反田、伊原も自身の気持ちの先にいる彼らをどう捉えるのか。

 

彼彼女らの高校生活がどうなっていくのか、見届けたい。

 

 

青春ミステリの金字塔シリーズ愛蔵版第2弾。貴重な著者自筆資料を収録!

古典部〉シリーズ第3作『クドリャフカの順番』と第4作『遠まわりする雛』を1冊に合本し、函入り単行本として刊行します。
巻末付録として、著者と文化祭の思い出や創作の裏側に触れる特別編集「米澤穂信と文化祭」(コミックス「氷菓」著者あとがき再編成)と、「クドリャフカの順番」執筆時の自筆資料を収録。

ぼくと、ぼくらの夏

ぼくと、ぼくらの夏 (創元推理文庫)

 

表紙が魅力的で、アンニュイな2人が素敵。

探偵とワトソンが高校生なのにハードボイルドの雰囲気が漂っていて、良い。味のある会話や遠回りな比喩、掴みどころのない主人公・戸川が魅力的でした。

一つの自殺事件を追っていくうちに見えてくる景色が変わっていくように、戸川と酒井の関係も変わっていくのが良い。

 

地の文、キャラ造形がウィットに富んでいて、読み心地が良く、浸りたくなる作品だからこそ真実が沁みる…

 

 

暑い夏休みの朝、高校2年の戸川春一は同級生・岩沢訓子が、稲城大橋から飛び降り自殺をしたことを、刑事である父親から知らされる。あんなまじめそうな子が、自ら命を絶つなんて。その日の午後、彼女の死を偶然に出会った酒井麻子に伝えると、なぜか一緒に事件を探る羽目に。麻子は訓子とは中学からの親友で、高校入学後から距離をおかれて悩んでいたという。二人の探偵行は、新たな事件を引き起こし……。決して古びない瑞々しい文体で評判となった、青春ミステリの傑作。

厳冬之棺

厳冬之棺 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

表紙、タイトルから面白そうな気配がぷんぷんで読みました。

非常に魅力的なミステリ作品で、今後の作品が楽しみな作家さんですね。密室の不可解さ、序盤から暗示される怪しげな風習、真相が気になる謎でした。

また、登場する探偵が漫画家、助手が声優、2人が魅力的な人物になっていて、より物語に入りやすくなってました。2人が組むきっかけがメディアミックスというのは斬新だなと笑

それぞれの背景が描かれていたのは良かった。

 

重たい事件背景でしたが、きちんと伏線が張られていて、結末に納得しかなかったです。

解決パートで明かされる事件の裏側に驚きがあり、最後まで惹かれました。ミステリ、密室好きにおすすめです。

 

シリーズ化しそうで、楽しみです。

 

上海郊外の湖畔に建つ陸家の館で殺人事件が起こる。現場は大雨で水没した地下室で完全な密室だった! 天才漫画家探偵・安縝(あんしん)登場

コーチ

コーチ (創元推理文庫)

人に仕事を教えることは難しい。様々な性格、向き不向きがあるから型通りの教えになってはならない。

今作は能力があるが、燻っている刑事の背中を押すコーチ的存在である向井が非常に魅力的。意味深で掴みどころがないが教えられた人からすると救いの声になっているのが非常に良い。

殻を破るきっかけを見つけられた時の安心感は素晴らしい。

 

だからこそ、背中を押され、花開いた刑事達が向井のために動く展開は人情味があって良かった。人を導くのは簡単ではない。

 

 

期待されつつ伸び悩む若手刑事たちの元に、コーチとして本部から派遣される謎の男・向井。捜査中の失態に悩む刑事、有名俳優の取り調べに苦戦する刑事、尾行が苦手な刑事。彼らに適切な助言を与える向井はなぜ刑事課ではなく人事課の所属なのか? 成長し所轄署から本部に戻った三人が直面した事件と向井の過去が交錯、三人は彼の過去を探り始める。傑作警察小説、待望の文庫化。解説=古山裕樹

ecriture 新人作家・杉浦李奈の推論 X 怪談一夜草紙の謎

ecriture 新人作家・杉浦李奈の推論 X 怪談一夜草紙の謎 (角川文庫)

李奈が売れっ子作家みたいな扱いを受けて戸惑っている様子は現実でもあるのかなと想像してしまう。だけど李奈が地に足つけた歩みをしているから揺らぐ心配がないのは非常に安心で、応援したくなります。地道にめげずに小説と向き合っていたから、簡単に天狗にならないのは読者には分かっている。

 

今回は親子関係を突いていて、胸糞悪い裏事情がありつつ、李奈の成長もあって読後感が素晴らしかった。話し合って、溝を埋めていくのは必要なことだなと。李奈は作家としてだけでなく人としても大人に近づいているのが分かる。

 

また、シリーズのメタ要素には驚いた。松岡圭祐ってそういうこと!?と衝撃でした。

笑ったのは結衣の名前が出るタイミング笑

 

ますます好きなシリーズになってきました。

 

早くも10巻! 人気沸騰の超シリーズ!

十六夜月』がヒットしたことで作家としてのステージが上がった李奈。三十階建て駅前マンションに引っ越し、気持ちを新たに次作に取り組む中、担当編集者から妙な頼み事をされる。ベテラン作家・丹賀源太郎が開いていた文学塾の閉塾に伴って催される宴に出席して欲しいというのだ。しかも依頼主は極端かつ急進的で差別主義的な思想を前面に出した長編小説がベストセラーになっている源太郎の息子だという。2人に面識もなく、塾にも関係のない李奈は戸惑うものの渋々参加を了承する。果たして開かれた宴席は、奇妙なものだった……。