羽休みに娯楽を

読書、主に小説の感想を上げています。たまに、漫画や映画等も。

七丁目まで空が象色

七丁目まで空が象色 (文春文庫)


像が街中に出るという大事件を丸々一冊かけて描かれている。

象という生き物の強さや性分は読んでいて、ためになりました。動物園から出た根本的な理由は好きでした。

事件の背景は現実味がなく、あまり興味を引かなかったのは残念。

ただ、読み終えてみると悪くない流れだったかなと。

大変な状況だっただけにいつもの賑やかな日常が少なめでした。仕方ないとはいえ、惜しいなと。

長編も良いんですが、短編の方が話の自由さがあって好きです。


相変わらず桃達が事件に巻き込まれていたが今回は今までとは違うというのが明かされたが、これからはどうなっていくのか気になります。


(あらすじ)

マレーバク舎を新設する事となり、飼育方法などを学ぶ為に、山西市動物園へ「研修」に来た桃本ら楓ヶ丘動物園のメンバーたち。そこでは、桃本の従弟である誠一郎が働いていて、邂逅を喜ぶ二人だったが、園内ではある異変が―。なんと飼育している象が脱走してしまったのだ。象はどうして逃げたのか?待望のシリーズ第5弾!!




水曜日が消えた

水曜日が消えた (講談社タイガ)


曜日によって人格が違うという特殊な設定だが、読んでみるとコミカルな部分とシリアスな部分が上手い具合に配分されていました。

主人公が1番目立たない火曜日くんが主役ということで、灰色な日常が最初は見えますが、水曜日も過ごせるようになってからは今まで見えなかった景色が見えて嬉しい反面、他の曜日がどう考えて生きているのかが刺さってきます。


事態が変わり、このままでは自身の人格が消えてしまうという恐怖が付き纏ってきて、そこからはスリリングな状況になり最後まで一気に引き寄せられました。


人格入れ替わりの大変さを押し出すのではなく、7人の個性の良いところを見せてくるのは良かったです。

火曜日くんが最後に決断したことに火曜日くんの魅力が詰まっていました。


(あらすじ)

一つの身体に宿った“七人の僕”。曜日ごとに切り替わる人格のうち火曜日担当が僕だ。だけど、ある朝目覚めるとそこは―水曜日!?いつもは定休日の飲食店、入ったことのない図書館、そして、初めての恋。友人の一ノ瀬にたしなめられながらも、浮かれていた僕(火曜日)だったが、ある不穏な気配に気づく。僕らのなかに裏切り者がいる…?予測不能の“七心一体”恋愛サスペンス!


さよなら異世界、またきて明日Ⅱ 旅する轍と希望の箱

さよなら異世界、またきて明日II 旅する轍と希望の箱 (富士見ファンタジア文庫)


ケースケとニトの旅の続きが読めて良かったです。

新たな場所で出会ったのは物語を求めている届け屋のシャロルやすれ違ってしまった親子のポーラとファゴなどと出会う。

一緒に住んだり、話したりしていくうちに情が芽生えていくのが良いです。

それぞれ悩みを抱えている時間が長くなってしまって、歩き出し方を忘れてしまったようだけど、ケースケとニトがどうにかしようとあの手この手で導いていて、救いのある結末になってくれてホッとしました。


悲しみを抱えていた人達に暖かいエピソードが訪れるというのがこんなにも素晴らしいとは。


良い読み心地でした。


出会いと別れを繰り返していくのが人生。

作者が大切にしていることが文章を伝わってきました。


まだまだケースケとニトの旅を見ていきたいです。



1巻のブログ

https://wing31.hatenadiary.jp/entry/2020/02/21/210000


(あらすじ)

今日から明日へ。ぼくたちは「さよなら」の轍を残して往く。 
滅びかけた異世界で旅を続けるケースケとニトは、“物語”を探しているという届け屋の女性・シャロルと出会う。彼女の探し物を手伝ううちに、三人はとある村に伝わる“灯花祭”を復活させることになるのだが――!?




サンタクロースを殺した。そして、キスをした。

サンタクロースを殺した。そして、キスをした。 (ガガガ文庫)



ガガガ特有の灰色の青春もの。

社会に馴染めない青年と少女の世界への抵抗。

主人公とヒロインの危うい関係が良かったですし、周りの意味深な人達なども良い味出してました。

会話の雰囲気やそれぞれの考え方だけでも楽しめるのが良いですね。

最後の展開が幸せなものになっていて、本当に嬉しかったです。


作品全体に漂う哀愁は確かな武器だと思いました。これからの作者の作品が楽しみです。


(あらすじ)

クリスマスを消すため僕は少女の恋人になる 
聖夜を間近に控え、街も浮き立つ12月初旬。先輩にフラれた僕は、美しく輝く駅前のイルミネーションを眺め、どうしようもない苛立ちと悲しさに震えていた。 
クリスマスなんて、なくなってしまえばいいのに……。 
そんな僕の前に突如現れた、高校生らしい一人の少女。 
「出来ますよ、クリスマスをなくすこと」 
彼女の持つノートは、『望まない願いのみを叶える』ことが出来るらしい。ノートの力で消すために、クリスマスを好きになる必要がある。だから―― 
「私と、疑似的な恋人になってください」 
第14回小学館ライトノベル大賞、優秀賞受賞作品。 
これは、僕と少女の奇妙な関係から始まる、恋を終わらせるための物語。 




結婚が前提のラブコメ2

結婚が前提のラブコメ 2 (ガガガ文庫)


2巻から婚約所の説明が減り、ラブコメが始まってきました。

玉の輿を狙うカレンが主役。

1巻から貪欲に求めていたように見えたが、どうやら違うようにも見える。

そんな迷えるカレンを主人公の縁太郎は秘めている想いを見抜く努力をしているのが素敵過ぎる。これは惚れる… 

それに比べて縁太郎を敵視する黒峰の浅さよ。


カレンが迷いを払い、囚われていた気持ちから抜け出すことが出来て良かったです。

縁太郎がカレンに必要な言葉を投げるところは熱い。

次巻からカレンがどんどん動いていきそうで楽しみです。


結衣は縁太郎の助言や新しく出来た友人?笑のおかげで大分気持ちの変化が生まれてきて、これからという時にカレンが先に行ってしまうというのが不憫。

そして、まひるさんや牡丹のマズいところが見えてきていて、彼女達を縁太郎がどう導くのか気になります。


主人公が仲介というのが関係の変化にどう響いてくるのか楽しみです。


妹の蒼梨ちゃんの身勝手なところはイライラしました…


1巻のレビュー

https://wing31.hatenadiary.jp/entry/2020/01/22/203000


(あらすじ)

早乙女カレン。その恋、春雷のごとく。 
“結婚できない人を結婚させる仲人”、白城縁太郎は今日も婚活女子のサポートに奔走している。 
とあるイベント婚活で、結衣とカレンの気になる相手がバッティングしてしまう。 
ひとつ間違うと、恋の修羅場になりかねない。 
縁太郎は仲人として平等に接そうとするのだが――。 
「縁太郎、あなたは全力で結衣をサポートなさい。それでようやく、私と対等になるというものですわ」 
カレンの申し出は、明らかに自分に不利となるものだった。 
縁太郎は改めて思う。 
上流階級の世界に戻るべく、金持ちとの結婚にこだわるカレン。 
しかし裏腹に、彼女はいつも誰かを優先し、損な役回りを引き受けている。 
彼女にとって婚活とは――“本当に幸せな結婚”とは、なんなのだろう。 
ぜったい結婚したい系婚活ラブコメ、心が疼き出す第2幕。 


シュレディンガーの猫探し

シュレディンガーの猫探し (ガガガ文庫 こ 4-1)


(あらすじ)

探偵嫌いの僕と迷宮落としの魔女 
妹にまつわる不思議な現象、「やよいトリップ」。未来視とも思えるその力が原因で巻き込まれたとある事件をきっかけに、訪れた洋館。 
洋館の表札には『探偵事務所 ラビリンス』。 
そして、古めいた書架に囲まれるように彼女はいたーー。 
魔女のような帽子に黒い服。書架に囲まれた空間そのものが一つの芸術作品のように美しい佇まい。 
「解かれない謎は神秘と呼ばれる。謎は謎のままーーシュレディンガーの密室さ」 
彼女ーー焔螺は、世界を神秘で埋め尽くしたいのだと言った。 
「私は決して『探偵』なんかじゃない。神秘を解き明かすなんて無粋な真似はしないよ」 
探偵じゃないなら、いったい何なんだ。 
問えばふたたび、用意していたように即答だった。
「魔女さ」 
まったく、時代錯誤も甚だしいと嘆かずにはいられない。 
神秘的で、ミステリアスな一人の魔女に、この日ーー僕は出会った。 
第14回小学館ライトノベル大賞・審査員特別賞受賞。 
ゲスト審査員・若木民喜氏絶賛の新感覚「迷宮落とし」謎解き(?)開幕! 


タイトルからして好きだなと。

シュレディンガーの猫の理論をうまく利用していて、非常にトリッキーな作品でした。

読んでいて、楽しい作品でした。

左さんのイラストも素敵です。


探偵嫌いの主人公令和と神秘を求める魔女のバディが互いに仲良くならずに、だけど不思議と息があう。

それは謎は謎のままが良いということを大事にしているから。

探偵はいつだって謎の解明という大義名分によって土足で人の心に踏み込んでくる。

確かに、その通りだなと。

令和は過去に被害にあっているからそう考えるのが自然だなと。

魔女の特殊な力と機転の効いた考えで、謎の真相に辿り着けないようにひっくり返すスタイルは面白いです。

謎は謎のままにしておくという形で進んでいくのは珍しかったし、説得力があったので面白いかったです。

事件を未解決に導くというのを主軸にするという発想が生まれるのが凄いです。


どうやら上下巻構成みたいなので、次巻を読みたいです。

君の嘘と、やさしい死神

君の嘘と、やさしい死神 (ポプラ文庫ピュアフル)


表紙から泣かせる内容だと思ってましたが、じわじわと来ました。

(あらすじ)

通り雨が過ぎて虹が出た昼休み、高校二年の百瀬太郎は同学年の美園玲と運命的に出会う。美少女なのにクラスメイトとどこか距離を置いているクールな玲に、なぜか百瀬はなつかれる。幼少期のトラウマで「嫌だ」と言えない性格も手伝って、百瀬は強引に文化祭の準備を手伝わされる羽目になり、「ある作戦」を実行するため奔走するうち、二人の気持ちは近づいていく。そんな時、逃れられない過酷な出来事が二人を襲う。感動、切なさ、悲哀、そして愛しさ…温かな涙が溢れる、究極の恋愛小説。


嫌だと人の頼みを断れない主人公の百瀬が堂々と生きている美園と出会うことで、変わっていく日々。

最初は百瀬と美園の明るい青春と見せておいて、様々なところにあった美園の行動と台詞の真の意味が分かったらガラッと見えていた景色が変わるのは巧みでした。

分かりやすいとはいえ、日々の会話や関係の積み重ねを描き、美園の必死な想いを読んでいくとじわじわと胸に苦しくも暖かくなる感情が湧いてきました。

腕に書いた電話番号については悶絶必死の鍵になっていました。


人はいつ死ぬかわからないから毎日を必死に生きる。大事なことだけど、自分がいざそういう立場にならないと気づけない。

美園はもっともっとやりたいことがあっただろうが、やさしい死神と出会い、自らが幸せだと思う生き方で過ごせたので幸せだったんじゃないか。


百瀬は美園と過ごした日々に残っている考え方や言葉が頭にいつまでも残ってるだろうから、これからの彼が周りの世界に踏み出せる未来が見えるような終わりには感動しました。


素晴らしい青春小説でした。