羽休みに娯楽を

読書、主に小説の感想を上げています。たまに、漫画や映画等も。

魔女の愛し仔

魔女の愛し仔 (星海社FICTIONS)


魔女が生贄の少女と一緒に暮らしていき、互いに相手を自分以上に大事にしているのは依存に近いですが、尊いと思います。

最初から中良い状況で始まりましたが、途中に挟まっている出会った頃のそっけない関係から愛が育まれていった過程が胸にきましたし、だからこそ互いの必死な行動原理に納得がいきました。


おとき話でなるべき結末にならなかった世界に入り、物語に介入していき幸せな終わりを目指していくのが軸でした。

各話の終わり方が多種多様で、読んでて驚きました。

おとぎ話の登場人物の心情や状況は固まってないほうが面白いなと思いました。


そして、魔女と娘の未来は幸せだったのか、最後の解釈はどうなんでしょう。


(あらすじ)

魔女が人間の子供を拾ったって。 
その先には、ロクな結末が待っていやしないのにーーー 
魔宴の夜、魔女集会へ生け贄として捧げられたサラは 
古き魔女、エンゲル・ヘクセンナハトに拾われる。 
『幸福になれなかった物語』を管理する彼女の書架には、 
銀の鎖で封印された“呪われた御話”たちが眠っていた。 
在るべき結末を迎えなかったお伽噺を幸せな終わりに導くため 
サラは禁忌を破って独断専行、本の中へと飛び込んだ! 
物語世界を旅する魔女と少女を待ち受けるのは、 
幸福な結末か、哀切な運命か、それともーーーー 


ビブリア古書堂の事件手帖Ⅱ〜扉子と空白の時〜

ビブリア古書堂の事件手帖II ~扉子と空白の時~ ビブリア古書堂の事件手帖 ~扉子と不思議な客人たち~ (メディアワークス文庫)


久しぶりの続巻でしたが、するりと内容に入っていけました。

横溝正史先生の作品がテーマでしたが、自分は1冊も読んだことがないので心配してましたが杞憂に終わりました。

知らない自分でも楽しめるので親切な内容です。

ストーリー中に横溝先生の作品の良さが挟まっていて思わず読みたくなりました。 余裕が出来たら…


内容としては1冊の本が一家をかき乱していて、その過程が凄いややこしい。

みんな因縁がこんがらがっていて、たどり着いた最後にはスッキリとは言わず、むしろ苦い気持ちになりました。

本人は軽い気持ちで起こしたんでしょうが、周りの人にとってはやるせない思いでしょう。



重くならないように栞子さんと大輔さんの甘々な触れ合いにはご馳走様でしたと。

扉子ちゃんは栞子さんとは違う成長をしていきそうですね。

読書感想文の学校側の思惑については正直知るかと思いますが、ブレないでほしいです。人それぞれの読書があるから良いのです。


最後に扉子ちゃんと祖母の対面は見ものでした。ただ、祖母は余計なことはしないでくれと願うばかりです。


話の緩急や構成が巧みで、ぐいぐい読めました。 

次巻はもう少し刊行ペースを…


(あらすじ)

シリーズ累計700万部の人気古書ミステリ、最新作は丸ごと「横溝正史」! 

ビブリア古書堂に舞い込んだ新たな相談事。それは、この世に存在していないはずの本――横溝正史の幻の作品が何者かに盗まれたという奇妙なものだった。 
どこか様子がおかしい女店主と訪れたのは、元華族に連なる旧家の邸宅。老いた女主の死をきっかけに忽然と消えた古書。その謎に迫るうち、半世紀以上絡み合う一家の因縁が浮かび上がる。 
深まる疑念と迷宮入りする事件。ほどけなかった糸は、長い時を超え、やがて事の真相を紡ぎ始める――。 




記憶書店うたかた堂の淡々

記憶書店うたかた堂の淡々 (講談社タイガ)


記憶を売買することができる青年・現野一夜が様々な迷いを抱えている人から依頼を受けて、記憶を誰かに送ったり、交換したりしてその人が本当に欲しかったものを見つけ出すのに繋がっていくのが美しい。

各話の登場人物の内側の気持ちを暴くのがとても上手くて、まず話に夢中になります。そして、記憶にまつわることが明かされていくとがらりと景色を変える展開には驚かされます。そして、どの話も胸に訴えかけてくるような切実さがあり、読み終わった後の読後感が良いです。

泣ける話はうるっときますし、笑えるところは笑える。

各話で気持ちが揺れるので、どんどん引き込まれます。


一夜も不器用ながら随所で微妙な変化をしていき、とっつきやすくなってるのも良い。


シリーズ化してほしいです。


(あらすじ)


文学少女」シリーズの野村美月、待望の最新作! 

忘れたい人は、いますか。 
忘れられたい人は、いますか。 

静乃の優しすぎる恋人、誠が突如失踪した。職場に連絡すると彼は一年前に亡くなっているという。では、彼は一体誰だった? 
静乃の脳内に存在する、自分のものではない思い出。これは人の記憶が綴られた書物を売買する、うたかた堂の仕業か。記憶に浮かぶ海を、静乃は目指した。冷めた目をした美貌の青年が書物を繙くとき、心に秘めた過去が、秘密が、願いが、解き明かされる!


教え子に脅迫されるのは犯罪ですか?7時間目

教え子に脅迫されるのは犯罪ですか? 7時間目【電子特典付き】 (MF文庫J)


天神の塾講師としてではなく、作家としてどうなりたいのか。

物語の価値に悩みながらもたどり着いた結果には暖かくなりました。

届けたいターゲットを明確にしないと埋もれてしまうし、戦略を練らないと売れない。どんな方法を試しても良い。だけど、それ以上に読者の顔を考えないといけない。素晴らしい結論だなと。

ようやく作家として前に進めそうですね。

面白いだけでは売れないから、作家は悩むんだ。リアリストな編集者と接していくうちに嫌でも現実と向き合わなければならなくなったが、必要な過程だったと思います。

作家としてモヤモヤした感情を抱えていた天神の気持ちが晴れて良かったです。

これからは大丈夫だ。

ただ、天神が星花に話そうとしていたが話せずにいた真実がひょいと明かされるのはびっくり。

フラグはあったが、タイミングが最悪。

これからどうなる。


冬燕は妻みたいな立ち位置でしたがこれから殻を破るのが楽しみです。

うじうじした感情を払えるような出来事が起これば良いんだが。


星花は天神が苦しいときに助けにきてくれる。そんな彼女との曖昧だった関係はしっかり話さないといけなかったんだろう。


次巻が楽しみだ。



(あらすじ)

「わたしは、このお話が、読みたかった」 
――『教え子』の物語をついに描いた天神。 
その新作の宣伝のため、担当編集者から提案されたSNS運用を始めるが、一向に認知が高まらない。 
ヤヤにアドバイスを求めたところ、天神の自宅にて疑似新婚生活(!?)を送る冬燕と、予測可能回避不可能なご対面を果たすことに。 
たちまち勃発する大惨事冬ヤ大戦―― 
「もう、天くんとキスした?」 
「……は?」 
「ヤヤは毎日ちゅっちゅしてる」 
「はあああ!?」 
挙句の果てには、星花と冬燕とヤヤの三人娘が、なぜか揃って動画に出演することになってしまい……? 
これは“才能の話”ではない。もっと根源的な、物語の価値についての話だ。



僕たちにデスゲームが必要な理由

僕たちにデスゲームが必要な理由 (メディアワークス文庫)


表紙や推薦文に惹かれて読みました。

佐野先生、松村先生が推すなら合うんだろうと思いましたが、見事にページをめくる手が止まらなかったし、スリリングなようで優しさの積み重ねの展開は見事でした。

大人が決めたルールに従わなければならない子供達の行き場のない気持ちを夜の公園の死なないデスゲームで晴らしていく。

自分とは違うけど、悩みを抱えている子供達同士の関わり合うことで、解消していく。

仲介の人の接し方もとても優しくて、これは良いですね。

主人公が相手に寄り添える感受性だからこそ、この物語は優しくなったんだろうな。

主人公が殻を壊し、気持ちを吐き出したシーンには胸が熱くなりました。

ぶつかり合うことを手段から捨てないのは大切なことですね。


何かしらに抑圧されて悩みを吐き出せずに、抱えこんでいる子供達の背中をそっと押すような作風でした。

デスゲームが必要な理由には納得しました。

いつかデスゲームがなくなればいいんだろうけど、どうかな。


設定、キャラクター、文章、展開、どれも丁寧な読みごごちでした。


(あらすじ)

衝撃と感動の問題作、第26回電撃小説大賞「隠し玉」デビュー! 

生きづらさを抱える水森陽向は、真夜中、不思議な声に呼ばれ、辿りついた夜の公園で、衝撃の光景に目を見張る――そこでは十代の子ども達が、壮絶な殺し合いを繰り広げていた。 
夜の公園では、殺されても生き返ること。ここに集まるのは、現実世界に馴染めない子ども達であることを、陽向は知る。夜の公園とは。彼らはなぜ殺し合うのか。 
殺し合いを通し、陽向はやがて、彼らの悩みと葛藤、そして自分の心の闇をあぶりだしていく――。 

「生きること」を問いかける衝撃の青春小説に、佐野徹夜松村涼哉、大絶賛!! 
衝撃と感動の問題作、第26回電撃小説大賞「隠し玉」デビュー。 

このぬくもりを君と呼ぶんだ

このぬくもりを君と呼ぶんだ (ガガガ文庫)


やがて君になるの仲谷さんがイラストというだけであらすじを読まずに反射的に買いました。

勝手な思い込みですが、学園で暖かい作品かと思ってたので、無機質な世界観に驚きました。

そんな味気ない世界でみんなは違和感を感じることなく暮らしていて、その中で主人公のレニーは異物感を拭えずにいる。

周囲の当たり前にげんなりしているときにレニーは周りに受け入れられなくても自らの芯を持っているトーカと出会って、彼女から目を離せなくなる。


レニーとトーカの各視点で見えるからこそ、徐々にすれ違っていき、迷路に迷い込んでいく2人がもどかしく感じます。だが、その上手くいかない感情の揺れを、醜いものも晒していくことで最後に繋がっていくのが良いですね。

隣の芝生は青いというが、互いに相手に理想を感じていて、そのバイアスから抜け出すのは大変だ。


虚しい現実と戦ったレニーとトーカがぶつかり合っていくことで開けた道は応援したくなりました。


(あらすじ)

繋いだ手のぬくもり。これはきっとリアルだ 
「この雨も、風も、空も全部。もうずっと昔に地上にあったものを再現してるだけ。ただのフェイクじゃん」 
有機ディスプレイは偽物の空を映し、人工太陽の光が白々しく降り注ぐ地下都市『Polis-UK8』。この全てが人の手によって作られたフェイクタウンで生きる十六歳の少女・レニーは、周りに溢れるフェイクを嫌い、リアルな『何か』を探している。 
そんなレニーが出会ったのは一人の少女・トーカ。サボリ魔で不良少女たるトーカに、レニーは特別な『何か』を感じ、一緒の時間を過ごすようになる。 
ある日、レニーの前に空から謎の球体が降ってくる。まるで太陽のように真っ赤に燃えていた小さなそれを、レニーは『太陽の欠片』と名付け正体を探ろうとする。 
一方その頃、トーカの方でも何やら変化が起こっていて、二人の日常は音を立てて崩れ始めていく―― 。 
「きっと隣にレニーがいるから――こんな毎日なら、あたしは悪くないと思えるんだ」 
いつかトーカが言った言葉。あれはフェイクだったの? それとも――。 
第14回小学館ライトノベル大賞優秀賞受賞作! 
地下都市に生きる二人の少女のリアルとは――ガールミーツガールから動き出す、青春SFストーリー! 



君はヒト、僕は死者。世界はときどきひっくり返る

君はヒト、僕は死者。世界はときどきひっくり返る (ガガガ文庫)


スニーカー文庫でデビューした作者がガガガ文庫にも登場。

暗い雰囲気の世界の片隅を照らすような作品でした。


主人公のデッドは死者。ヒロインのファイはヒト。これは確かな壁となっていて2人の関係の試練になっていた。

天獄ではデッドは生きられないし、地国ではファイが生きられない。

2人は離れないといけないのか。

2人は納得して別れられるのか。

デッドとファイの関係の築き方が丁寧、というか関係こそ大事な作品ですが、2人のままならない感情の揺れ動きが描かれていて、最後の互いの決断には胸が熱くなりました。

逃避行物語として最高でした。

幸せになってほしいです。


中盤から重たくなりますが、前半のコミカルなやりとりも癖になるものがありましたので良かったです。

デッドとファイの出会いの頃のジタバタした感じはにやけてしまいます。


独自な世界観で織りなしているので、他では味わえない読後感になっているので是非多くの人に読んでほしいです。




(あらすじ)

交わることのない、君と出会った。 
天空に浮かぶ「世界時計」を境に分かたれた「天獄」と「地国」。地国で暮らす死者の僕はある日、常夜の空から降ってくる彼女を見つけた。 
一目見た瞬間から僕はもう、恋に落ちていた。 

彼女の名前はファイ。僕の名前はデッド。 
彼女はヒトで、僕は死者。だからこの恋は、きっと実らない。 
それでも夜空は今日も明るい。 
二つの世界の引力バランスがひっくり返る「天地返り」の日まで、僕は地国のゾンビから彼女を守り、そしてきちんと「さよなら」を告げる。 
これはやがて世界を揺るがすことになる、相容れない僕たちの物語だ。 
第14回小学館ライトノベル大賞・ガガガ賞受賞作!!