羽休みに娯楽を

読書、主に小説の感想を上げています。たまに、漫画や映画等も。

髭と猫耳

髭と猫耳 (星海社FICTIONS)

 

賭博師は祈らない、吸血鬼に天国はない、の周藤先生の新作。

髭の執事・ロイドが猫耳のお嬢様・エミリアに付き添い、自分探しの旅に出るというもの。

エミリアのわがままにロイドが付き合って解決していく。

一見無鉄砲に感じるエミリアだけど、要所で物事を俯瞰して見ているところがあり、ただものではないなと。

 

エミリアやロイドが旅先で出会う人の背景には善意、悪意が絡んでいて、解決というのは難しい事柄でもエミリアやロイドが最大限寄り添おうとするのは心にきますね。

善悪というのは生まれ育った環境次第で育まれていくものだから、人は他人と溝が出来たら簡単にはいかないんだなと。

みんな仲良くなるのは難しいよね。

獣腫という設定で人間は自分より上の生き物とは暮らしていくのは一筋縄にはいかないんだなと思ったし、人の根っこの部分を掘り下げることに繋がっていて良かったです。

 

ロイドがエミリアを支えていることが多いけど、エミリアもロイドをきちんと見ているのが分かる終盤はいいなぁって思いました。

年の差や様々な障害があってもエミリアは信じてるんだな。

 

出来れば続きが読みたいです。

エミリアとロイドの旅を最後まで見届けたいです。

 

「獣腫」の猫耳を持つエミリアは、学術都市ラグノマで学院に通う18歳の貴族令嬢。
決められたレールを歩む人生に悩んだ彼女は、一念発起し「自分探しの旅」へ繰り出すことに!
壮年の執事・ロイドを連れて、未知への一歩を踏み出した。

「獣腫」とは、人体が獣の形質を宿す現象。
世界は戦後の穏やかさに浸りながらも、「獣腫差別」が残存していた。

いざ、世界を見つめ、自分を見つける卒業旅行へ!

サブマリン

サブマリン (講談社文庫)

 

チルドレンの続編。

今回は少年犯罪でも重い殺人問題について書かれていた。

未成年の重罪への世間の風当たりの強さは行き場のない気持ちをどこかに向けたくなる人間の弱さからなのかなと。

被害者が加害者を怒るのはまだ分かるが、関係ない人が怒りだして過剰な攻撃がやまないのは気持ちの向かう先がどこにもないから悪いとされている人に怒りが向いてしまうんだよな。

犯罪を起こす背景や犯罪を受ける背景にも目を向けていて、考えさせられました。

 

また、事故起こした加害者に対して復讐しようとする気持ちは分からなくないからこそ、止めるだけの言葉を陣内さんが持っているのが凄い。

現実にも陣内さんがいたらなー。

近くにはいてほしくないが。笑

 

陣内さんと武藤さんが犯罪を起こして苦しむ少年達に寄り添って、決して分かることはないが分かろうとする気持ちに救われます。

 

巡り巡って収まるところに収まって、見事な着地点に落ち着いたのかなと思う最後にホッとしました。

 

 

(あらすじ)

家庭裁判所調査官の武藤は貧乏くじを引くタイプ。無免許事故を起こした19歳は、近親者が昔、死亡事故に遭っていたと判明。また15歳のパソコン少年は「ネットの犯行予告の真偽を見破れる」と言い出す。だが一番の問題は傍迷惑な上司・陣内の存在だった!読み終えた瞬間、今よりも世界が輝いてみえる大切な物語。

 

 

 

揺籠のアディポクル

揺籠のアディポクル

 

ジェリーフィッシュは凍らないで有名な市川憂人先生の新作。

1年に1冊ペースが早いのか遅いのか分からないが、どの作品も読み応えがあるのでいつまでも待てます。

 

今作は無菌病棟で起きた殺人。

その殺人が起こるまではタケルとコノハのじゃれあいに頬が緩んだりしていたおかげで不意を突かれた気持ちになりました。

キャラの魅力を見せてから殺人が起きたので、切なさと同時にいったい誰が犯人かと気持ちが駆り立てられました。

主人公のタケルとコノハが周囲から孤立してから殺人が起きるということで犯人は限られているシチュエーションではあるが、当然簡単には分からせてはくれない。

コノハが死に、タケルが真実を知ろうと動き出してからはあっという間に最後まで読めました。

情報の出し方が巧みで分かりそうで分からないし、途中でコノハの視点などもあり、余計に真実が知りたいと必死に読み進めました。

 

タケルが必至に辿り着いた真実はただただ切なさがありました。

タケルとコノハの関係は実は綱渡りしていたようだったことや事件が起きるに至った経緯や結末には胸が苦しくなるくらい愛がありました。

 

また、最後まで読むとあちこちにヒントはあったがヒントと感じさせないのが憎い。

真実を知った上で最後にタケルが起こした行為には美しさを感じました。

 

 

 

 

半人形―それがコノハの最初の印象だ。隻腕義手の痩せた少女が、タケルのただひとりの同居人だった。医師の柳や看護師の若林とともに、病原体に弱い二人を守るはずだった無菌病棟、通称“クレイドル”。しかし、ある大嵐の日、“クレイドル”は貯水槽に通路を寸断され、外界から隔絶される。不安と焦燥を胸に、二人は眠りに就き、―そして翌日、コノハはメスを胸に突き立てられ、死んでいた。外気にすら触れられない彼女を、誰が殺した?

氷の令嬢の溶かし方1

氷の令嬢の溶かし方 : 1 (モンスター文庫)

 

正統派の純愛になっていきそうなラブコメでした。

主人公・朝陽が冷たいと言われている美少女の冬華とふとしたきっかけで知り合い、2人の距離が近づいていく過程が丁寧で、冬華が朝陽に心を許していくのが凄く良いです。

簡単に絆されるのではなく、しっかり段階を踏んでいくのが大事ですね。

朝陽のお人好しに慣れて、冬華も素顔を見せるのが微笑ましいです。

2人のまったりとした空気が素晴らしいです。

ただ、朝陽、冬華共にまだ明らかになってないところがあるので、気になりますね。

また、朝陽の友人カップルも闇がありそうで、登場人物達の掘り下げを読みたいです。

 

出だしとしてはゆっくり目だったが、次巻はどうなるのか楽しみです。

 

(あらすじ)

「私に構わないでください」ぶっきらぼうながらも世話焼きな火神朝陽と心を閉ざし、他者を寄せ付けないことから“氷の令嬢”と呼ばれる氷室冬華。マンションの隣に住んでいるとはいえ、関わる機会がなかった二人だが、朝陽のお節介から冬華との関係性に変化が訪れ…。第8回ネット小説大賞受賞作!じれったくも甘酸っぱい遅効性ラブストーリー。

 

五色の殺人者

五色の殺人者

 

今年の鮎川哲也賞の受賞作品はどんなミステリーだと期待してたら見事に読者の隙を突くようなトリックと犯人の姿が目撃者によって違う色を指しているという魅力的な設定を上手く利用した力作でした!

 

介護施設で殺人が起きるので、犯人を見たのを覚えていられなかったり、見間違いが生じるので、そこが謎に繋がっていくのは唸りました。

語り手であるメイや他の人物達がニックネームで呼んでいたというのもキモになっていて、思わぬ勘違いへ誘導していて、やられました。

悔しい…

真面目に推理しながら読んでたが、思わぬところに落とし穴ががありましたが、フェアなミステリー小説になっているのは好感持てます。

 

主人公のメイや人物紹介、事件の背景などで中盤まで物語の流れがゆっくりなのは気になりましたが、メイの行き当たりばっかりなところや仕事熱心なところ、人柄が良くて、身近に感じられました。彼女の素人探偵っぷりには応援したくなりました。

 

解決シーンが短くあっという間に解決されているように感じましたが、肝心の真相についてはミステリーのロジックが完璧で驚きをもらいました。

 

これからの活躍を楽しみにしたい作家さんですね。

 

 

高齢者介護施設・あずき荘で働く、新米女性介護士のメイこと明治瑞希(めいじみずき)はある日、利用者の撲殺死体を発見する。逃走する犯人と思しき人物を目撃したのは五人。しかし、犯人の服の色についての証言は「赤」「緑」「白」「黒」「青」と、なぜかバラバラの五通りだった!ありえない証言に加え、見つからない凶器の謎もあり、捜査は難航する。そんな中、メイの同僚・ハルが片思いしている青年が、最有力容疑者として浮上したことが判明。メイはハルに泣きつかれ、ミステリ好きの素人探偵として、彼の無実を証明しようと奮闘するが…。不可能犯罪の真相は、切れ味鋭いロジックで鮮やかに明かされる!選考委員の満場一致で決定した、第30回鮎川哲也賞受賞作。

 

 

きみって私のこと好きなんでしょ?2 とりあえずデートでもしてみる?

きみって私のこと好きなんでしょ?2 とりあえずデートでもしてみる? (GA文庫)

 

1巻で仮のお付き合いすることになった黒矢と白森先輩はデートをする。

周囲には秘密だけど、秘密にしている分やりたい放題やる開き直りの良さが作品として良いテンポを作っている。

大体、白森先輩が黒矢をからかって引っ張っていくが、ところどころで黒矢もやり返しているのが良い。

また、今回は白森先輩の家庭環境の問題で、小さな頃から自分を抑えて都合の良い子になっていた白森先輩の悩みを黒矢がすっぱり晴らしてくれるのが素晴らしい。

普段やられっぱなしの黒矢だけど、白森先輩のことを理解して、それでいてかけて欲しい言葉を出せるんだから良いカップル、良い関係なんだよなぁ。

 

黒矢と白森先輩の関係が進み、創作面でも黒矢が作家として進んでいて、順風満帆な展開かと思いきや、恋愛相談という形から思わぬ展開に発展していて、詳細を知りたいです。

黒矢がなぜ、特に仲の良い白森先輩の友人に大事なことを話したのか。

 

次巻が待ち遠しいですね。

 

(あらすじ)

陰キャ男子×美人先輩のお試し交際ラブコメ、第2弾! 

「黒矢くんって、誰といても私のことばっかり考えちゃってるんだね。まったく、大好きかよ? 」 

陰キャ男子・黒矢と、学園一の美少女・白森先輩がまさかの「お試しカップル」になって早くも一ヶ月。 
恋に無縁だった黒矢には、先輩との毎日が悔しいけれど幸せすぎる! 
そんなある日、先輩からまさかのお誘いがあり――

「とりあえずデートでもしてみる? 」 

街中で、電車で、駅地下で。 
恋人だけに見せるいろんな表情を知っていく二人。
「顔に書いてあるよ。大好きな先輩とデートできて幸せです、って」 
付き合っているのにからかわれる、憧れの先輩との悶絶イチャイチャが止まらない激甘青春ラブコメ第2弾。 

 

 

僕の軍師は、スカートが短すぎる 〜サラリーマンとJK、ひとつ屋根の下

僕の軍師は、スカートが短すぎる ~サラリーマンとJK、ひとつ屋根の下 (GA文庫)

 

素敵な年の差同居ラブコメでした。

読み始める前までは軍師ってどういうことだ?と思っていたが、心理学の知識を駆使してサポートしていくというものでした。

主人公の史樹は終電帰り残業当たり前の社畜サラリーマンだが、定時で上がりたい。

史樹と同居することになるヒロインの穂春はこの家に住んで学校に行きたい。

初めは史樹の好意で同居生活が始まったが、穂春が心理学の応用で史樹の会社生活が変わっていき、史樹は大人として穂春の気持ちを尊重していくことで互いに信頼関係が構築されていく。

2人の関係はどちらかがもたれかからないようになっていてバランスがとれているのが良いです。

ふとしたことで穂春を照れさせる史樹にはやるな〜となるが笑

穂春以外にも、同僚の鴇田、穂春の知り合いの汐音にも困っていたら助けるという親切さが伝わって、良い関係を築いていくのは人たらしいだ。

鴇田と汐音はただのサブキャラではなく心境も見せていたおかげで2人にも魅力がありました。

 

終盤になって、穂春の目的の背景が明らかになるが、苦境に立たされた穂春を助ける史樹の機転の良さは穂春と過ごした日々が影響しているというのもあって、なお良かったです。

嫌な敵はざまぁみろな落ちになり、めでたし。

 

綺麗な引きで読後感が良かったが、史樹はまだ目標は達してないし、穂春の目的も達成してないので、出来れば続きが読みたいです。

 

史樹と穂春の同居生活をもっともっと見たくなる2人の絡みが好きになってしまいました。

互いが抱えていた願いは暖かいもので叶えるところまで行ってほしい!

 

(あらすじ)

「おにーさん、助けてくれたお礼に、定時帰り、させてあげよっか」 
ブラック企業に勤める史樹。終電帰りのある日、家の前に少女がうずくまっていた。その少女・穂春は、助けてもらったお礼として、史樹の抱える仕事上のトラブルをたちどころに解決してしまう。 
どうしても定時帰りしたい史樹と、身を寄せるところを探していた穂春。史樹は衣食住を提供する代わりに、穂春のアドバイスに頼ることにする。 
「人は先に親切にされると、お返ししなきゃって思う生き物なんだよ」 
二人の同居生活が始まると同時に、史樹の社畜生活は一変するのだった。 
サラリーマンとJK の、温かくも奇妙な同居生活ラブコメディ、開幕。