羽休みに娯楽を

読書、主に小説の感想を上げています。たまに、漫画や映画等も。

いたいのいたいの、とんでゆけ

いたいのいたいの、とんでゆけ (メディアワークス文庫)

 

ハロウィンの時期が過ぎたので今作を読みました。

仮装行列の中に本物の血を流して傷がある人が紛れられるのだろうか。

相変わらず三秋先生の発想が独特で、良い感じに人生の危ない道を渡り歩いていく設定でスリルと背徳感に包まれていました。

主人公・瑞穂は何もかもどうでもよくなった男でヒロインである少女を轢き殺して始まるラブコメは中々ないです。

少女は傷や痛みを先送りにすることが出来て、それを利用して、今まで恨みがある人物に復讐していくのは大変非日常で、自分達の行為に酔っていく2人の落ちていき様には中毒性がありました。

 

とことん底まで落ちていった男女の有り様に感情を揺さぶられていきました。

絶望から希望を見つけだして上を向けるようになって終わる読後の余韻が堪らないです。

 

最後に疑問だったことが明かされて、そういうことだったのかと唸ること間違いなしです。

瑞穂と霧子の世界との戦いは儚くも暖かいものだったんですね。

 

「私、死んじゃいました。どうしてくれるんですか?」何もかもに見捨てられて一人きりになった二十二歳の秋、僕は殺人犯になってしまった―はずだった。僕に殺された少女は、死の瞬間を“先送り”することによって十日間の猶予を得た。彼女はその貴重な十日間を、自分の人生を台無しにした連中への復讐に捧げる決意をする。「当然あなたにも手伝ってもらいますよ、人殺しさん」復讐を重ねていく中で、僕たちは知らず知らずのうちに、二人の出会いの裏に隠された真実に近付いていく。それは哀しくも温かい日々の記憶。そしてあの日の「さよなら」。

探偵は友人ではない

探偵は友人ではない

 

待ちに待った続巻。

前作、探偵は教室にいないですっかり心が掴まれたので、楽しみにしていました。

 

今回もまた青春とミステリーが絡み合っていて、読み心地が良いです。

バランスがうまくて、話の中で無駄が一切なく描かれているので読みやすいし各話の読み終えた後に浸ることが出来るので素晴らしいです。

謎が解決することによって中心人物のことを別の角度から見えるのは魅力です。

謎だけでなく、登場人物も頭に残るようになっていて、好きですね。

人の心の些細なところも大切にしているところに温かみを感じます。

 

 

語り手は真史だけど、実際は歩の過去や今を掘り下げていて、より歩のことが好きになりました。1巻ではぶっきらぼうな感じでしたが、親しみやすくなってました。

また、真史も歩との関係に悩んでいて互いの胸中を焦ったく感じるくらいの距離にいてもどかしいけど、ここから徐々に距離を縮めていくのが楽しみです。

互いに遠慮し合っているが気にかけていて、繊細で簡単に言葉で伝えられないからこそ、大切な関係なんだなと。

歩は素直になれない方が魅力ですね笑

 

 

謎がなくても名探偵の彼に
会いたいときは、どうすればいい
洋菓子店の暗号クイズ、
美術室での奇妙な出来事―
札幌を舞台に描かれる、
謎を通して少しずつ大人になっていく、
少年少女の日々。
第28回鮎川哲也賞『探偵は教室にいない』に続く、待望のシリーズ第2弾!

わたし、海砂真史(うみすなまふみ)の幼馴染み・鳥飼歩(とりかいあゆむ)は名探偵だ。歩は中学校には通っておらず、ちょっと素直じゃない男の子。でも、わたしが奇妙な事件に遭遇して困っていると、話を聞くだけで解決してくれて、頼りになるんだ。 歩の元に新たな謎――ケーキ店の暗号や美術室で起きた不思議な事件を持ち込みながら、ふと思う。わたしたちは依頼人と探偵として繋がっているから、友人ではない。でも、謎がなくたって会いたいと思った場合、どうすればいいのだろう? ささやかな日常の謎を通し、少年少女の成長を描き好評を博した第28回鮎川哲也賞『探偵は教室にいない』、待望のシリーズ第2弾!

声優ラジオのウラオモテ#03 夕陽とやすみは突き抜けたい?

声優ラジオのウラオモテ #03 夕陽とやすみは突き抜けたい? (電撃文庫)

 

熱かった!

1.2巻は声優として演技以前の違う方面を掘り下げていましたが、今回はやすみが大事な役を手に入れて、演技についての心構えや方法を突いてきていました。

壁にぶつかるやすみ。励ます友人の若菜やマネージャーの加賀崎さんの優しさが染みる… 辛いときに寄り添ってくれる人がいるのは良いですね。

 

壁を越えた先に壁がまた出てきて、どこに行けば分からなくなったときに自分のプライドとかを気にせず周りに意見を求められるやすみは凄い。そしてしっかり自分のものにするのは素晴らしい。しかも指摘された事を覚えているのも何気に大事だと思いました。

やすみの必死な努力や姿勢が演技に反映されていくのは感情が揺さぶられます。

終盤の盛り上がりは見事です。

やすみが声優としてアフレコで主演をするのはどういうことかを学んで、これからの活躍が楽しみです。

 

大分切り込んできたなという印象ですが、これからが楽しみなシリーズになってきました。

 

「コーコーセーラジオ!」新コーナーも存外(?)の好評を博し、晴れておだやかな日常を取り戻した夕陽とやすみ。目下やすみの悩みは―仕事が無い!そんな崖っぷちに舞い込んだのは、夕陽主演・神代アニメの宿敵役!?やっとつかんだ大役に意気込んだのも束の間…「あんた今、周りに迷惑だから」「すげーやりづらかったよ」容赦なく突きつけられる、一流の壁。できない、苦しい、まだ足りない、でも「あんたにだけは」「あなたにだけは」「「負けられない!!」」突き抜けたいふたりの声優ラジオ、熱い声援を受けて、まだまだON AIR!!

天才王子の赤字国家再生術8 〜そうだ、売国しよう〜

天才王子の赤字国家再生術8 ~そうだ、売国しよう~ (GA文庫)

 

遂にシリーズ8巻にもなってくると敵が大きくなってきますね。

それでも切り抜けるウェインの逆境を切り抜ける知恵と度量は健在で安心感があるので、最後にはひっくり返すだろうと思えます。

しかし、ウェインの凄さがどんどん広がっていくと同時に側にいるニニムやフラーニャも注目されるようになってきたので、彼女らも狙われてることになっていきそうです。

ニニムはウェインの心臓なので、なんかあったらウェインがブチギレるだろうからそれが楽しみだったり。

フラーニャは徐々に成長していくのが分かるが、どうなっていくのか気になります。ウェインに迫れるのかどうか。

 

登場人物が増えてきて、規模が大きくなっていきそうでワクワクしてます。

 

選聖会議。大陸西側の有力者が一堂に会する舞台に、ウェインは再び
招待を受けた。それが帝国との手切れを迫るための罠だと知りつつ、西へ
向かうウェインの方針は――
「全力で蝙蝠を貫いてみせる! 」
これであった。
グリュエールをはじめ実力者たちと前哨戦を繰り広げつつ、選聖会議
の舞台・古都ルシャンへと乗り込むウェイン。だが着いて早々、選聖侯
殺害の犯人という、無実の罪を着せられてしまい!?
策動する選聖侯や帝国の実力者たち、そして外交で存在感を増していくフラーニャ、天才王子の謀才が大陸全土を巻き込み始める第八弾!

吸血鬼に天国はない④

吸血鬼に天国はない(4) (電撃文庫)

 

今回はページ数は少なめだが甘い話でした。

なんだか久しぶりに落ち着いた日常の話が読めて良かったです。

シーモアとルーミーの2人は様々な経験を通して変化していたことを自覚して、それを互いに受け入れていくのは素敵でした。

遠回しな言葉や頭で噛み砕かないと分からない感情が掴めるようになってきて、より作品を好きになってきました。

相手が全てを受け止めてくれるがそのままで良いのか、自分自身はどうなりたいのか、シーモアの揺れは見事でした。

ルーミーもたしかに変わってきていて、最初の頃よりも親しみやすいです。

 

みんな成長していくんだな〜

 

今回シーモアの娘のサラが登場して、良い意味で砕けた雰囲気になってて読みやすかった。サラが抱えていた問題の解決方法があまりに呆気なくて笑ってしまいました。しかも、人間離れしたお話で人間だからとしか言えないようなもので、清々しかったです。

 

『死神』との戦いも乗り越えて、より一層の愛を深めたシーモアとルーミー。傍目にも仲睦まじく、なにより明るく素直に愛情を振りまくルーミーの姿は、出会った頃からの大きな変化を感じさせるものだった。そしてもう一つ、変化はあった。白昼を切り裂いた夜空と、日の中を飛んでいく吸血鬼。あの日、怪異が多くの人の目に留まった。そして世界の理の箍が外れたように、これまで隠されてきた無数の怪物たちが静かに蠢き出していく。そんな新しい日常。突如事件は起きる。「―パパ!会いにきたの!」自分とどこか似ている『娘』の登場に動揺を隠せないシーモア。否定しきれない彼の態度に、ルーミーの視線はどんどん険しくなっていく…!

魔女の旅々

魔女の旅々 (GAノベル)

 

以前から気になっていた作品です。

コミカライズやアニメに触れたので、原作も読もうと思いました。

魔女のイレイナの旅の様子から入り、どうやって魔女になったのかを描いていて、全体的に優しさが見えました。しかし、中には無常なお話も含まれていて決して明るいだけではなかったです。だが、そこが良い。

記憶を失った王紀の話や奴隷の少女の話など、報われない出来事もイレイナは知っていく。

旅は良いことだけではない。

ときには変化球みたいなお話もあり、種類が豊富ですね。

 

イレイナが魔女になった話のフラン先生との生活は愉快でしたし、両親やフラン先生の気遣いが心に染みました。フラン先生もポンコツと見せかけて優秀で、独特の感性を持っているのでそこがイレイナに合っていたのかな。

 

ただ、一つ一つの話が短いのでもう少し膨らませると良いのになと思いました。

 

あるところに旅の魔女がいました。彼女の名はイレイナ。旅人として、色々な国や人と出逢いながら、長い長い旅を続けています。魔法使いしか受け入れない国、筋肉が大好きな巨漢、死の淵で恋人の帰りを待つ青年、滅んでしまった国に独り取り残された王女、そして魔女自身のこれまでとこれからのこと。わけのわからない可笑しな人や、誰かの美しい日常に触れながら、今日も今日とて魔女は出逢いと別れの物語を紡いでいきます。「構わないでください。私、旅人なものですから。先を急がなければならないのです」

安達としまむら2

安達としまむら2 (電撃文庫)

 

1巻で人物を紹介したので2巻は風呂敷を広げずに主要人物の掘り下げを行なっていくのはありがたいです。

サクサク進んでいき、テンポ良い会話や居心地の良い空気が流れているので、まったりと作品を読むことが出来ました。

ボーっと読んでも浸れる暖かさが好きです。

 

安達としまむらの母が出てきて、改めて対象的な2人なんだと改めて思いました。

しまむらが安達母に物申して議論をするつもりはないと言い切るところは、爽快でした。

安達母もしまむらの言葉に影響を受けたが、簡単には変わらないところに現実味がありました。安達家庭の話もいつか読みたいです。

 

安達としまむらの互いに探り探りに進む関係も良いですが、対象的に日野と永藤の昔ながらの落ち着いた関係も安定感があり、好きです。友人キャラとしてだけでないのも良いです。

安達と日野、しまむらと永藤という珍しい絡みも人付き合いとしては避けられない空気でしたが、うまく行ったなと思いました。


人間関係の辿々しさが焦ったいですが、良いものですね。

 

今まで興味なんかなかった。ないフリをしていた。だれにも、なにもほしがらなかった。だけど今年は違う。私が初めて願うクリスマスプレゼントは、しまむらとのクリスマスだった。今までなんとなく毎年過ごしていた。強い関心があるわけでもなかった。だけど今年は違う。少し気を遣って、安達へのクリスマスプレゼントを選ばないといけない気がしていた。変わらぬ日常を過ごしていた女子高生の安達としまむら。そんな2人の関係が少しだけ動き出す。