羽休みに娯楽を

読書、主に小説の感想を上げています。たまに、漫画や映画等も。

コンビニなしでは生きられない 文庫

コンビニなしでは生きられない (講談社文庫)

 

ふと気になるタイトルをしていて、緩い感じのミステリーかと勝手に想像してましたが、物騒な事件から始まり良い意味で裏切られました。

どの話もコンビニだからこそ、起きる事件になっていてこだわりがあって良いです。

また、働いたことがなくても使うことがあるコンビニを舞台にしていることで、想像しやすい部分もありました。

だからこそ、コンビニで起こる事件がどれも真相が気になる状況になるように作り出していて、良い味になっていました。

また、作中で違和感を感じていた部分が最後に繋がっていき、表裏ひっくり返る仕掛けが明らかになるのはミステリーとして魅力的でした。

ミステリーとして優れているだけでなく、主人公の更生していく青春小説でもあり、最後まで没頭して読むことが出来ました。

 

主人公が苦しい現実から逃げる場所から始まったが、コンビニなしでは生きられないくらい好きな居場所を持てるようになるのは救われますね。

 

ミステリーとして、少し脇の甘いところはありましたが、勢いで押し切るものがありました。

 

 

ミステリ作家・西澤保彦氏、べた褒め!
「ご近所(コンビニ)に"本格魂”続々入荷中! コスパ最高の謎解き劇場がここに」

謎解き鮮やか、仕掛け重厚の第56回メフィスト賞受賞の青春ミステリ!

大学を中退した白秋。彼の居場所はバイト先のコンビニだけだった。その平穏な日常を引っかき回す研修生が入店。店内で連続する事件にやたらと首を突っ込む女子高生の深咲だ。教育係の白秋は彼女の暴走する謎への好奇心に巻き込まれ、店の誰もが口を噤む過去の連続盗難事件の真相を推理することになり……。

コンビニの「謎」と「あるある」にとことんこだわり、他の追随を許さない秋保水菓のデビュー作、ついに文庫化!

原因において自由な物語

原因において自由な物語

 

タイトル、表紙から力が入ってる作品だと伺えますが、読み始めたら納得しました。

いじめに関して、取り上げている作品は色々あるが、今作は現実的に向き合っていて好感が持てる。

綺麗事で解決した気にならずに、倫理観を持つことを考えるきっかけを作ったりと丁寧に問題に向き合っているのに救いを感じます。

いじめの加害者、被害者、傍観者、隠蔽者、全ての関わった人の意識を変えて行かないといけないのは骨が折れるかもしれないが、行動していかないといじめがなくなることはないだろう。

作品内で現実と創作が入り乱れていて、事実と作られた部分がどう交ざりあっていくのか読めずに最後まで惹き込まれました。

最後に点と点が繋がった時の感覚は堪らないです。

ミステリーとしても楽しめるようになっていて、作品の重みがより伝わってきました。

 

文句なしの素晴らしい物語です。

 

作者の過去作がちらほら出ていて、サービスもあったのは嬉しかったです。

 

謎を解かなければ。
私は作家なのだから。

人気作家・二階堂紡季には、
誰にも言えない秘密があった。
露呈すれば、すべてを失う。
しかし、その秘密と引き換えにしても、
書かねばならない物語に出会ってしまい――。

デビュー作『法廷遊戯』が、ミステリランキングを席捲! 注目の弁護士作家第3作!

水野瀬高校放送部の四つの声

水野瀬高校放送部の四つの声 (ハヤカワ文庫JA)

 

表紙から青春の匂いがぷんぷんします。

しかし、明るいだけでなく、苦味がある呪いがかけられている。

表紙の4人が主人公で、それぞれが1話ずつ掘り下げられていく。

悩みは皆違って、思春期の脆さを突いていました。

悩みや苦しみを抱えて悶々と生きていた少年少女が、放送同好会で活動していくうちに抱えていた重荷から解き放たれていくストーリーは爽快でした。

心中が描かれているので、彼らが苦しんでると読んでるこちらも胸が苦しくなり、呪いから放たれて変わっていく姿には心底ホッとしたり、作品に入り込めました。

 

放送同好会の活動では良い面もあったが、人に迷惑をかけることもあり、そこは都合の良い展開にならず、問題と向き合う姿勢が見られたのは凄く良いと思いました。

顧問の先生もしっかり生徒を見ていて、良い大人でした。

 

今作を最後まで読んで、青春に呪いは付き物だが、いつか呪いは解ける。

そんな背中を押してくれるメッセージが伝わってくる良い作品でした。

 

皆のこれからが晴れやかなものであると願うばかりです。

 

校庭に響いたマイクの音に心奪われ、衝動的に放送同好会を設立した高校三年生の巌泰司。一人気ままに活動するはずが、NHK杯全国高校放送コンテスト出場を目指 す一年生の赤羽涼音と白瀬達彦が入部してくる。さらに競馬実況女子の二年生・南条梓も加わり放送"部"として歩み始めることに。だが四人はそれぞれ言葉にできない悩みを抱えていた。友達、家族、将来――ままならない思いを声に託した高校生たちの青春群像四篇

BEASTARS.vol9

BEASTARS 9 (少年チャンピオン・コミックス)

 

遂にテムを殺した犯人が見つかるが、今のレゴシでは手に届かないのが歯痒い。

犯人の動機やいきさつは明かされたが、テムからすると恐怖でしかなかっただろう。

レゴシが強くなって向き合わないといけない。

 

レゴシの家族の話は確かに語られていなかったが、明らかになる。

長らく離れていたから近づき辛かったが、一度歩み寄れたならこれからは大丈夫だなと。

 

ルイ先輩と会って、なんとか誤解が解けて良かった。

 

肉食獣、草食獣のあり方として共存することで互いに思い合える。別々に生きたら楽だろうが一度でも多種族の良さを知ってしまったら、引けないよね。

 

ジュノとハルの交流は微笑ましかったです。

 

何者かに襲撃され敗北したレゴシは、強くなるためにゴウヒンのもとで修業の毎日。肉座禅を経て、肉食の本能を克服し、食肉中毒者との捕獲劇で手足を使う戦闘スタイルを確立させた。そんなある日、テム食殺犯を追うレゴシは、ついに事件の真相に迫り…!?

 

どうか俺を放っておいてくれ なぜかぼっちの終わった高校生活を彼女が変えようとしてくる

どうか俺を放っておいてくれ なぜかぼっちの終わった高校生活を彼女が変えようとしてくる (GA文庫)

 

卒業前に美少女・花見をかばって死んだ主人公・七村が再び、入学式からやり直していく2度目の青春。

ぼっちからリア充へ変わるかと思いきや、生き方や考え方は変わらない。

七村のボッチ語りがびっくりするくらい馴染んできて、読む手が止まらない。捻くれているが人助けを自然に出来るので、近しい人は彼を信じられるような魅力がありました。

自虐的だが、近くに傷つきそうな人がいたら放っておけない優しい面、自分を貫き面倒臭がりでぼっちの面、良い悪い面がありながらも魅力的な主人公でした。

 

ヒロインの花見が七村に肩入れする理由が気になっていましたが、明かされてみたら意外で重いのがヒロインとして珍しい造形だと思いました。

チョロいオタクギャルの星ヶ崎、義理堅い委員長の白峰も魅力的でしたがチョロさは気になります。笑

 

死んでから戻れた理由は曖昧ですが、これから卒業式までの2度目の青春は改革が起きていきそうで、どんな結末を迎えるのか楽しみです。

 

七村と花見が陽キャ陰キャの価値観のすり合わせは一筋縄にはいかず、これからもぶつかり合うかもしれませんが、やり直す青春の行方が気になります!

 

恋、友情、輝かしい青春。そんな期待に胸を膨らませた俺の高校生活は――結局ぼっちのまま終わった。 そして迎えた卒業式前日……。
「死なないで! 七村くん! 」
モデル顔負けの美人・花見辻空をかばい、俺はトラックに轢かれて人生の幕を閉じた……はずだった。
「神様の気まぐれかもね」
しかし、その事故を機にどうやら俺は同級生の花見辻と一緒に高校一年生の入学式に戻ってしまったのだ。
二度目の高校生活は輝かしい青春など期待せず大人しくぼっちで過ごそうと思いきや……彼女から望んでもいない提案が。
「ぼっち脱却、私が手伝ってあげる」
この物語は俺が二度目の高校生活で送る、最悪で最高の青春ラブコメだ。

貴サークルは"救世主"に配置されました2

貴サークルは"救世主"に配置されました2 (GA文庫)

 

創作とファンタジーを絡めた青春ファンタジー

渾身の一冊を描き上げたことで燃え尽き症候群みたいになったナイト。世界を救う使命を背負い過ぎたヒメ。2人が自分への苛立ちが互いに向き合ってしまい、拗れてしまう。しかし、一回離れたくらいで壊れた関係でなくて良かったです。

 

特殊な設定、世界の危機を阻止するという要素をうまく利用して、ヒメとナイトの関係を離して、さらに固い関係になるのは見事でした。

今回は魔王などのファンタジーを脇に置いて、ヒメとナイトの関係を改めて考えることが出来て相互理解に繋がるのは良い構成だったなと。

また、新キャラの先輩は濃い人物で関係を掻き回すが創作者として、自らの悔しさを自覚して覚悟を決めて変わっていくのを見ると好感が持てます。

そして、デスメイドのサポートは欠かせないです。憎まれ口を叩く仲間って感じで魅力ですね。

 

熱い創作への熱意とファンタジーが絡み、魅力的な物語です。

次巻も楽しみです。

 

渾身の一冊を描き上げ、魔王復活を阻止することに成功したナイトとヒメ。しかしその反動からか、ナイトはスランプに陥ってしまう。進まないネームにやきもきするヒメ。
そんなとき、ナイトは同じ大学に通うソラフネを愛する“文芸先輩"と出会う。プロの小説家でもある彼女に乞われ、彼女の小説同人誌にイラストを寄稿することに。
ところが“文芸先輩"は、滅びの未来でヒメと対立していた“魔女"であった。彼女の依頼を受けるなど到底認められないヒメ。
「実家に帰らせていただきます」
果たしてスランプを脱し、再び想いを滾らせることはできるのか――
同人誌に懸ける青春ファンタジー!

ストライクフォール2

ストライクフォール2 (ガガガ文庫)

 

波乱の幕開けだった1巻の代償をしっかり描いていて、好感が持てました。

雄星の英俊との入れ替わりには罰が下り、きちんと罪を認識させるのは大事なことなので、しっかり掘り下げていて良かったです。

あっさり、解決するのではなくしっかり行いの悪かった部分を突きつけて、そこをしっかり認識して前に進むか折れるかを判断させるのは大事です。

 

ストライクフォールがスポーツとして、企業として、世間ではどういう位置付けなのか説明がされていて、より作品が深くなっていきました。

 

雄星がチームに認められず、苦しみ、自分の力の無さ、未熟さを味わいながらも、周りに支えられつつ、がむしゃらに頑張る意思を持てるのはカッコいいです。

アデーレが可愛いて優しいのずるいなぁ。

環も健気で正妻力が強いが、雄星か鈍いのがなぁ。

 

雄星がなんとかやっていけそうなきっかけを掴めて良かったです。

そして、英俊の死にまつわることが明かされていきそうで、楽しみです。

 

競技としての在り方が危うくて世界的に利用されるのは仕方ないのかな。

大人の陰謀はスカッと吹き飛ばして欲しいです。

 

 

 

史上、類を見ない“ルール違反”。運営は協議の結果、雄星を二軍練習場へと送り込む。前代未聞のスキャンダルを起こした異邦人に、選手たちはただただ冷たかった。二軍監督、ユウキ・ブラバッキーは雄星に告げる。「みんな、パワーの時代が怖いのさ。おまえはストライクフォールの次の時代そのものだからな」…新たな出会いと確執、そして「戦争」と「競技」の狭間で。雄星は、ストライクフォールともう一度向き合う。兄弟の憧れを、答えをこの手に“掴む”ために。SF界の俊英が放つ疾走スペースグラフィティ、待望の第2弾!!