羽休みに娯楽を

読書、主に小説の感想を上げています。たまに、漫画や映画等も。

スロウハイツの神様(上)

スロウハイツの神様(上) (講談社文庫)

 

辻村先生の作品で何読もうかなと思ってたら、クリエイター達の同居生活ということで気になって手に取りました。

 

クリエイター達がそれぞれの目標やそこに至れてない現実が描かれている。そこのもどかしい気持ちは重たくのしかかってきます。

また、各々の心情や葛藤を掘り下げていきつつ、徐々に変化していく生活に惹かれていきました。

それぞれの視点から見てみると、皆歪な欠片を持っているようで、関係がどうなっていくのか目が離せません。

 

作品全体で何か大きなことを隠している気はするが、それが何なのかが分からない。

終盤に訪れた波乱の気配は下巻でどう回収するのか楽しみです。

 

青春というか夢と現実の狭間にいるクリエイター達の生活はこういうものなのかなと。

 

人気作家チヨダ・コーキの小説で人が死んだ―あの事件から十年。アパート「スロウハイツ」ではオーナーである脚本家の赤羽環とコーキ、そして友人たちが共同生活を送っていた。夢を語り、物語を作る。好きなことに没頭し、刺激し合っていた6人。空室だった201号室に、新たな住人がやってくるまでは。

ブルーピリオド2

ブルーピリオド(2) (アフタヌーンコミックス)

八虎が藝大を目指すためには親を説得するというのは大事なことで。

親の気持ちを受け入れて、自分の藝大への想い伝えることが出来たのは非常に良かったと思うし、グッときました。

 

大受験へ気持ちが上向きだったが、知らない知識や情報量、絵を描く感性や方法などに圧倒され、悩む八虎。

それでも一つ一つ向き合っていく姿勢は素晴らしい。

上手い絵と評価される絵というのは必ずしも一致することではないというのは中々難しい。

 

世田介くんが爆発する理由も分からないわけではないが、八虎に対してやつあたりしたのはちょっと… しかし、世田介から見ればなんでもやれそうな八虎に思うことがあるのは分かるが。

八虎が世田介の言葉にショックを受けつつも、それをバネにして飛躍しようとしていくのは、呑まれました。

悔しさを力に変えるのは簡単ではないな。

 

鮎川に関しては現実が辛いなと。

それでも同情だけはしてはいけない。


絵だけでなく、登場人物の葛藤も上手く織り込んでいるから、深くのめり込めますね。

 

 

成績優秀、世渡り上手なリア充高校男子が絵を描く喜びに目覚め、美大を目指す! 膨大な夏休みの課題を終えた八虎は、ついに「美大専門の予備校」に足を踏み入れるが、そこで初めて「天才」と出会う。自分の身の丈を思い知らされた八虎の決意とは。話題沸騰のアート系上昇志向漫画、2巻登場!

アニメ放送中!ブルーピリオド1

ブルーピリオド(1) (アフタヌーンコミックス)

 

テレビアニメが始まったので読み返していこうかなと。

内容知っていても引き込まれる面白さ。

主人公・八虎が魅力的なキャラクターで、本気になれることがなく、頭も良いものだから達観している。

そんな彼が絵を描き喜びと出会い、本気になれる好きなものを見つけるというのはグッとくるものがあり、勇気が貰えます。

 

大受験を目標に歩き出した八虎。

始めたばかりで学ぶことがあり、知識を学んで絵を描く努力が必要なところからだが、悔しさや未熟さを受け止めて、努力し続ける姿を見ると応援したくなります。

 

八虎を絵の道に引きずり込んだ佐伯先生は言葉や声掛けが巧みで、人を導くのが上手い笑

 

天才の世田介と出会い、改めて凡人だと突きつけられながらも、前に進む八虎は熱い。

 

最後の八虎と世田介の会話には心掴まれました!

 

 

成績優秀かつスクールカースト上位の充実した毎日を送りつつ、どこか空虚な焦燥感を感じて生きる高校生・矢口八虎(やぐち やとら)は、ある日、一枚の絵に心奪われる。その衝撃は八虎を駆り立て、美しくも厳しい美術の世界へ身を投じていく。美術のノウハウうんちく満載、美大を目指して青春を燃やすスポ根受験物語、八虎と仲間たちは「好きなこと」を支えに未来を目指す!

ワンダンス06

ワンダンス(6) (アフタヌーンコミックス)

 

表紙、カボか!?

随分、自信がついてきたようだ。

帯にあるが、俺は誰かの代わりじゃない。

俺は俺だ。とダンスが上手い壁谷とのバトルで怯まずに表現していくのは痺れました。

悔しがれるくらいのめり込んでいくのを見ると、本気で何かに打ち込むのは良いものだと実感させられます。

 

伊折と壁谷が昔からの因縁で、仲悪そうでしたが、ダンスに対する考えがはっきりと分かれているからか。

あと、壁谷が拗らせた性格だがら折り合いつけられないのが可愛く見えて来た。

 

さて、ダンスバトル大会はどうなっていのだろう。楽しみだ。

 

高校対抗ダンスバトル個人戦
準決勝でカボ vs. 壁谷が激突!

「俺は誰かの代わりじゃない。俺は俺だ」

経験もスキルも格上のB-BOY壁谷との決戦に、
カボは自らのダンスと、そして自分自身を信じて挑む。

対する壁谷は、トレードマークのマスクで目隠しをして、
超挑発的かつ攻撃的ムーヴで対峙する。

その他者を寄せ付けない圧倒的な強さで、
壁谷が一瞬でフロアの熱気を支配する中、
カボが魅せるムーヴは――。

決勝進出を賭けた大熱戦が始まる!

 

 

ホヅミ先生と茉莉くんと。 Day.3 青い日向で咲いた白の花

ホヅミ先生と茉莉くんと。 Day.3 青い日向で咲いた白の花【電子特別版】 (電撃文庫)

 

今回は女性キャラ達の出番が多くて、日常要素が多めでした。

箸休めみたいにゆったりとした空気でしたが、そのまま終わらず。

このシリーズはホヅミと茉莉の創作への想いが重要で、終盤のイベントで起きたハプニングも機転の効いた策で乗り越えたのはグッときました。

文章、展開の緩急が良い感じでした。

実際、小説のイラストから飛び出してきたような美少女が現実で現れると息を呑むだろう。

表紙がエモいですね。

 

ホヅミの普段の姿と創作に対する時の顔の違いも際立っていました。

 

編集者の双夜さんが良いはじけ方をしていたのは印象的でした。

 

メディアミックスが進んでいき、ホヅミと茉莉の関係に変化が生まれるのか楽しみ。

 

 

 

忘れられない、宝物みたいに眩しい夏が始まる――。

“茉莉ちゃんに頼みたい仕事があるの”
出版社が主催する夏のイベント準備に奔走する双夜から、ホヅミに届けられた一通の相談メール。それはイベントの企画で“放課後、制服姿の君と。”のメインヒロイン、日向葵のコスプレを茉莉にしてもらえないか、というもので……!?
みんなで訪れた海や一面に広がるひまわり畑、肩を並べて見上げた花火、突然のお泊まり――宝物みたいに眩しい季節はあっという間に過ぎていく。
そして、迎えた夏の終わり。ホヅミと茉莉が辿り着いた景色は――。
拗らせ作家×世話焼きJKが贈る忘れられないひと夏のハートウォーミングラブコメ、シリーズ第3弾!

フーガはユーガ 文庫

フーガはユーガ (実業之日本社文庫)

優我と風我。双子には誕生日にだけ起きることがある。

それは意識が入れ替わるということ。

恵まれない家庭環境で、その特別な能力があったから、2人で生き延びれた。

入れ替わりは地味で使い方が難しいと思っていたが、柔軟な発想で効果的に使っていて上手い!

また、最後の最後に最高の使い方をしていて、痺れる。

まさに不意を突かれました。

しかし、その不意打ちに救いがあって、よくやった!と唸るしかない。

 

 

今作は生きるのに苦労している人が登場していて、成長して報われていくのが良い。

酷な目に遭ったけど、幸せに生きてほしい。

 

反対に悪ともいえる、存在に立ち向かっていく双子は天晴れ。

逃げ切らせずにしっかり報いを受けさすのにはホッとしました。

 

切なくて、許せない強敵に立ち向かった双子の想いが伝わってくる作品でした。

 

最後の結末まで目が離せない。

ふとした言葉や出来事が繋がって、収束していくのはお見事。

 

 

 

伊坂幸太郎史上
もっとも切なく、でも、あたたかい。

僕たちは双子で、僕たちは不運で、
だけど僕たちは、手強い
双子の兄弟が織りなす、「闘いと再生」の物語

常盤優我は仙台市内のファミレスで一人の男に語り出す。
双子の弟・風我のこと、幸せでなかった子供時代のこと、
そして、彼ら兄弟だけの、
誕生日にだけ起きる不思議な現象、「アレ」のこと――。
ふたりは大切な人々と出会い、
特別な能力を武器に、
邪悪な存在に立ち向かおうとするが……。
文庫版あとがき収録。
本屋大賞ノミネート作品!
解説/瀧井朝世

7.5グラムの奇跡

7.5グラムの奇跡

 

目が普通に機能して、世界が見えるということがどれだけの奇跡か。

この作品を読んで、改めて見えることの有り難さを痛感しました。

 

主人公・野宮が最初はミスして周りにフォローされてばかりだったが、誠実に目を見て話す彼の人柄が評価されるようになっていく成長には、心が晴れやかな気持ちになりました。

最初と最後で比べてみると一目瞭然で、自分の仕事に対する想いというのも明確になって、彼がどんな視能訓練士になっていくのかワクワクするし、読んでる側も仕事に対しての考えを考えるきっかけにもなりました。

 

登場人物で野宮の周りにいる人が優しくて人間味が感じられて、物語に入りやすかったです。

 

1話1話に目の不調を訴えて受診してくる方達、皆不安や苦しみを鮮明に描かれているので辛いものがありましたが、最後には闇を抜け出すような結末を迎えるので、涙腺が崩壊しそうでした。

目の見えない理由は様々で、原因も見つけるのが難しい。

緑内障白内障などはもう目が良くなるのはなく、進行を遅らせるしかないのは歯痒い。

点眼しかないが、伝える先生も大変だ。

 

連作短編集で各話の完成度の高くて、最初から最後まで没頭して読み耽る魅力がありました。

目の病気と真摯に向き合う北見眼科医院の面々に希望と勇気を貰えました。

 

 

国家試験に合格し、視能訓練士の資格を手にしたにもかかわらず、野宮恭一の就職先は決まらなかった。
後がない状態で面接を受けたのは、北見眼科医院という街の小さな眼科医院。
人の良い院長に拾われた恭一は、凄腕の視能訓練士・広瀬真織、マッチョな男性看護師・剛田剣、カメラが趣味の女性看護師・丘本真衣らと、視機能を守るために働きはじめる。
精緻な機能を持つ「目」を巡る、心温まる連作短編集。