羽休みに娯楽を

読書、主に小説の感想を上げています。たまに、漫画や映画等も。

鬼人幻燈抄(四)幕末編 天邪鬼の理

鬼人幻燈抄(四)-幕末編 天邪鬼の理 (双葉文庫 な 50-04)

あぁ、この作品好きだなと改めて思う1冊。

刀を振るう機会がなくなっていき、武士の時代が終わる間際に揺れる武士の迷いが見事。そこに鬼の存在が絡んできて、より複雑になっていく。

辛くて儚い。だけど、それで終わらずに前向きに未来へ行けるような余韻が堪らない。浸ってしまう心情の揺らぎがありました。

妖刀に魅せられた武士、鬼を利用する会津藩士、鬼と人の共存を謳う今回だが、上手くいくところよりも上手くいかないことが多いのが歯痒くてしんみりさせられる。

甚夜が娘が出来て、居場所がある。それでも本来の目的もある。まさに濁っていた状況だが、1冊を通して、甚夜の迷いが晴れていく様は見事でした。

出会いと別れの諸行無常さが色濃く含まれるお話でした。

 

武士の時代が終わり、甚夜はどう生きるのか楽しみです。

 

 

文久二年(1862年)。
酒を巡る騒動から6年、江戸は仄暗い不安に揺れていた。
討幕の動きが日に日に強まるなか、甚夜は妖刀を巡る事件をきっかけに、幕府に忠義を捧げる会津藩士・畠山泰秀と出会う。
泰秀は幕府存続という目的のため、鬼を使役する武士だった。
武士と鬼――滅びゆく者たちの美学を描く幕末の物語。大人気和風ファンタジーシリーズの第四巻が文庫化!

天才王子の赤字国家再生術12~そうだ、売国しよう~

天才王子の赤字国家再生術12 ~そうだ、売国しよう~ (GA文庫)

 

ウェインとニニムの関係は1巻から強固に結ばれている感じが出ていて、いかにしてそうなったのか馴れ初めが気になっていた。

そして遂にウェインとニニムの初めましてのエピソードが入ってる!と気持ちが上がりました。挿絵で小さな頃の2人を見るだけで嬉しかったです。2人とも今とは違う考えをしていて、新鮮でした。

ウェインは達観しすぎ、ニニムは意志を持てず、そんな2人が出会って関わりあっていくことで変われたのだなと。

もっと過去エピソードを読みたいなと思いました。

 

ウェインとニニムの馴れ初めだけでなく、平行して、ウェインとニニムが離れなければならなくなるような裏事情も進行しているの鬼畜過ぎる。そして、訪れた最後の爆弾はニニムならず、読んでるこっちも衝撃でした。真相が早く知りたいので次巻は早めにお願いします…

いったい、ウェインの身に何があったのか。流石にブラフ臭いが、どうなるんだ。

 

ナトラ王国とフラム一族の関係は複雑なだけにこれ以上拗れないで欲しいが、カルドメリアの悪意が厄介。

ウェインがいつものように切り抜けるのを願わずにはいられない。

 

そして、前半にフラーニャがウェインに気持ちを打ち明けたのが今後にどう影響するのか。

あと、ロワが帝国の王女になりナトラ王国との同盟を考え直す気配を見せているのが気になるところ。

 

ウェイン、一体どうなる!?

 

アースワルド帝国の皇位継承戦も決着し、ようやくナトラ王国にも平穏が訪れたかに見えた。
だが、ナトラ王国と、その王子であるウェインには、さらなる試練が待ち構えていた。
帝国の皇位継承問題をも凌駕する、ナトラを根幹から揺るがす大波乱。
シリーズ第12弾、ここに開幕!


帝国の皇位継承戦が終息し、大陸の情勢は新たな局面を迎えていた。

帝国は安定を取り戻しつつあり、
西側からはカルドメリアが来訪するなど、
ウェインは依然として東西の間で難しい舵取りを求められていた。

そんな折、ナトラ国内に新たな動きが生じる――フラム人による独立国家。

そして本人も望まぬ形で、その渦中へと巻込まれていくニニム。

内憂外患、かつてない試練に直面するウェインにさらなる衝撃が。

「――お兄様、今いいかしら?」

思い詰めたフラーニャから発せられたひと言が、ナトラを揺るがす。

ニニムの苦悩、フラーニャの決意。疾風怒濤の第12弾!

invert II 覗き窓の死角

invert II 覗き窓の死角

 

ドラマ化、コミカライズ化、おめでとう!

絶好調のシリーズなので早くも3冊目。

しばらくは相沢先生、このシリーズ中心かな。

 

さて、今回は短編1本と表題作の中編1本。前半の短編は紙魚の手帖で収録されていたので読んだことがありましたが、改めて読んでも翡翠の情報収集方法はあざといが的確だなと。そして、推理を積み重ねてからの真相にはそうなるのかと驚く飛躍があり、ドキッとする短編になってました。中学生の彼の再登場も期待したい。

 

中編に関しては、翡翠に友人が出来たと思ったら、犯人だったというもの。ミステリ好きでアリバイ工作が巧みで中々苦戦する。それ以上に翡翠が友人と腹の探り合いが心苦しかったのが印象的で、結末にはほろ苦さがありました。

推理力に優れていても、友人を追い詰めていくのは心理的にしんどいか。

そんな時にワトソンでホームズの真の行動には驚きました。あと、そんなこと思っていたのかという心中は意外でした。

ミステリ的にもあそこかな?と思う部分はあったが、切り崩していくのが分からなかっただけにまさに死角からの一撃でした。素晴らしい。

犯人に感情移入してしまう事件背景でしたが、翡翠の正論に関しては耳障りの良い言葉しか出なかったのは残念。あえてなのかは分からないが、もう少し具体的に説得力がある問いかけだったらなぁ…と思いました。

 

最後に翡翠の秘密が明らかになり、今後にどう絡んでくるのか気になるところではあります。

 

5冠獲得ミステリ『medium 霊媒探偵城塚翡翠』、発売即重版10万部突破『invert 城塚翡翠倒叙集』に続く、シリーズ3作目!

反転、再び。

あなたは探偵の推理を推理することができますか?

嵐の山荘に潜む若き犯罪者。そして翡翠をアリバイ証人に仕立て上げる写真家。犯人たちが仕掛けた巧妙なトリックに対するのは、すべてを見通す城塚翡翠。だが、挑むような表情の翡翠の目には涙が浮かぶ。その理由とはーー。ミステリランキング5冠『medium 霊媒探偵城塚翡翠』、発売即重版10万部『invert 城塚翡翠倒叙集』に続く待望の第3作目。犯人視点で描かれる倒叙ミステリの金字塔!

税金で買った本(4)

税金で買った本(4)

 

図書館の知識は知っているようで、知らない。

勉強になります。

本を返却して、すぐ借りるのは確かに所有しているようになってしまうよな。

借りた本の紛失について、借りたカードの持ち主か失くした人どちらが責任を取るかでは、カードの持ち主に責任があるのは当然か。

 

弁償したいと脅迫概念に追い詰められる女性の心情は辛いものがあったが、気持ちを切り替えられて良かったです。

司書さんに見つけて欲しくてイタズラする少女の心情はいじらしくて、なんか良いなと思いました。

 

石平は成長していて、利用者との対応が板についてきているのは何より。他の図書館で働く面々にも馴染んできていて、何よりです。濃ゆい面々の掘り下げもあり、読み応えあります。

 

 

小学生ぶりに訪れた図書館でアルバイトすることになったヤンキー・石平くん。夜の図書館でぬいぐるみとお泊まり会をしたり、仕事を邪魔する長話おじさんと戦ったり、今日も図書館員として大忙し!
大重版! 累計30万部突破! 話題の「ぬいぐるみお泊まり会」編を収録した、ヤンキーくんによる図書館お仕事漫画、第4巻!

薫る花は凛と咲く(4)

薫る花は凛と咲く(4) (マガジンポケットコミックス)

 

凛太郎達と薫子、昴の距離がグッと近づいていて、良い傾向だ。

しかし、学校間の関係は険悪なまま。

だけど、互いの生徒は距離がありつつも、気になってしまう様子があり、交流が出来れば雪解けは出来るのではないかな。ネックは桔梗の教師かな。和解するまでに一、二波乱が待ち受けてそうなのが怖い。今が上手くいっているからこそ、ヒビが入って欲しくないが果たして。

 

凛太郎が薫子を好きになって、友人達に心開いていて、凛太郎自身が変化を実感している様子を見ると微笑ましいです。

凛太郎の両親も凛太郎のことをよく考えていて、2人の想いは暖かくて優しい。

 

次巻の薫子の誕生日ではどうなるか楽しみです。

 

それにしても、前巻から昴の素が見逃せないです笑

 

お嬢様校・桔梗女子に通う和栗薫子と出会った、底辺男子校・千鳥高校の紬 凛太郎。隣接する二校の溝の深さに悩む凛太郎だったが、ついに千鳥の友人たちに薫子と昴を紹介する。そして、この日を境に良い関係を築き始め、凛太郎も周りの人たちへとより心を開くようになってゆく。自宅で自身の過去を打ち明け、絆は深まり、母の想いが揺れる中、仲間たちと過ごす、青春の夏が始まる───!!

リコリス・リコイル Ordinary days

リコリス・リコイル Ordinary days (電撃文庫)

 

今、勢いに乗っているアニメのスピンオフ小説。

発売前の重版が決まるのはかなり凄い。

それだけ注目されているということ。

 

まったりとした日常感が素晴らしい。喫茶店リコリコのお客さんから見た店の良さは羨ましく見えました。こんな落ち着ける、隠れ家みたいな場所で過ごすのは楽しいですよね。

 

また、千束達のわちゃわちゃした日常は限られているからこそ、尊く見えますね。

 

リコリコメンバーの千束、たきな、ミズキ、クルミ、ミカの日常が楽しくて、もっと読みたいです。

 

人助けをする千束達の連携は魅力でした。

 

 

これは、喫茶リコリコの日常的な非日常を描いたささやかな物語!

「喫茶リコリコへ、ようこそ!」
あの破壊された旧電波塔をのぞむ東京の東側にあるオシャレでおいしいカフェ――それが、喫茶リコリコである。
本作はオリジナルテレビアニメーションリコリス・リコイル』では描かれる事がなかった錦木千束や井ノ上たきななど、看板娘たちが織り成すありふれた非日常のちょっとした物語。
おいしい甘味に、ガンアクションに、ゲームに、人情ドラマ、ゾンビと怪獣にロードムービー……そしてほのかに愛!? もちろんコーヒーに人助けだって!!
「どんなご注文も……おまかせあれ♪」
そんな日々を積み重ねていくことで彼女たち絆が生まれていく――オマケ付きお菓子のバラエティパックのような何でもありの詰め合わせを原案者自らがスピンオフ小説化!

方舟

方舟

 

帯のミステリ作家陣の書評を読んで期待値が上がってましたが、それを頷ける衝撃がありました。終盤まで、このまま推理するだけだと少し味気ないなと思っていたら、まさかの真相に度肝を抜かれました。

作中にトロッコ問題について語られていたのはそういうことかと打ちひしがれました。誰かを犠牲にすれば生き残るとなれば、誰しもが少数の犠牲で済ましてしまうだろう。そうした人の心理を突いたミステリでした。

 

特殊なクローズドサークルで、登場人物が多かったが、登場人物の掘り下げがあまりされていなかったのはちょっと残念かなと。

探偵役だった彼が舞台装置みたいな扱いだったのは気になります。

ミステリとして優れていただけに、気になる点があったのは勿体ない。

しかし、最後まで読んで受けた衝撃を思うと全てが吹っ飛びました。

 

終わり悪ければ全て良し。

 

9人のうち、死んでもいいのは、ーー死ぬべきなのは誰か?

大学時代の友達と従兄と一緒に山奥の地下建築を訪れた柊一は、偶然出会った三人家族とともに地下建築の中で夜を越すことになった。
翌日の明け方、地震が発生し、扉が岩でふさがれた。さらに地盤に異変が起き、水が流入しはじめた。いずれ地下建築は水没する。
そんな矢先に殺人が起こった。
だれか一人を犠牲にすれば脱出できる。生贄には、その犯人がなるべきだ。ーー犯人以外の全員が、そう思った。

イムリミットまでおよそ1週間。それまでに、僕らは殺人犯を見つけなければならない。