羽休みに娯楽を

読書、主に小説の感想を上げています。たまに、漫画や映画等も。

思い出リバイバル

思い出リバイバル

 

心がほぐされるような読後感でした。

思い出というのは美化しがちだけど、冷静に俯瞰して見ると違う感覚になりますね。

今作は思い出を再び見たいと願う、切実な人達に一度だけ過去の思い出の場面に戻すことが出来る映人の元に集まる人を描く短編集です。

最初の1話でがっつり心を掴まれました。また、話ごとにアプローチを変えていて、話の流れに慣らさせない工夫が感じられる構成で素晴らしかったです。

なので、各話に違った想いが込められていて結末まで気になって仕方なかったです。

登場人物が思い出に触れて、生き方を見直していく様子を見守るのは良い読後感になっていました。

 

最後に映人自身の掘り下げで、そうなのかという驚きがあり、最後まで良い読後感でした。仕掛けにも納得します。

 

シンプルな話だけど、思い出を題材にしているならば、これしかないのかなと。

無駄に誇張しない感じが好みでした。

 

ひとつだけ、過去を「再上映」できるとしたら。今だから気付けることがあるーー思い出とは、未来へ一歩踏み出す自分を支えてくれるもの。

思い出をひとつだけ「再上映」してくれる不思議な存在、映人。
過去を変えることはできないが、今の自分の視点でもう一度過去を見直すことができる。
幸せだった頃を取り戻したい人、後悔にけりをつけたい人……映人に再上映を依頼する理由は様々だが、受けるか受けないかは映人なりの基準があったーー。

幸せなものでも、苦しいものでも、自分にとって価値があって大切なものだと心から思えたら、きっと「これから」が変わっていく。

思い出を再体験した依頼人たちは、何を得るのか。
そして、映人の正体と目的とは。

2022年16本目映画すずめの戸締り

新海誠さんの新作映画となれば観るしかないと思ってることに驚きつつも観に行きました。

 

母と娘、祖父と息子、血の繋がりのない関係と家業などの悩みを抱えていた、主人公・鈴芽と物語のキーパーソンである草太が世を乱す存在を封じ込めていくというもの。

開始早々、草太がイスに変えられてしまってどうなるのか気になりましたが、うまく物語が転がっていって上手かったですね。

世界、日本の平和を守れても大切な人が守れなければ意味がない。

必死に動き回る鈴芽が魅力的でした。

 

災害を起こさせないようにあちこちを旅していく様子も魅力的でした。出会いが鈴芽を支えていて、印象深いです。

 

様々な目的がありながらも大円団まで向かっていく過程は厳しい困難の連続でしたが、最後まで惹きつけられました。

無事に災害や親子関係などを清算出来て、優しさに包まれていた作品だったなと思います。

 

 

 

嘘つきなふたり

嘘つきなふたり (角川書店単行本)

 

表紙、タイトル、あらすじ、帯から、ひしひしと感じるものがあり楽しみにしてましたが、その通り、いや想像以上に良かった。

雰囲気的に武田綾乃先生の黒小説!と思いきや、最後まで白い部分もあり、新境地を迎えた作品だったのかなと。

ミステリ要素がありつつも、悩みを抱えている女性2人が殻を破る成長小説。

正しさでは拭えない不幸があり、それを分かち合えた2人の嘘つきに幸あれ。

2人が嘘を吐露する瞬間はおっ!と驚くものがあり、分かり合えているようですれ違っていて、そういうものだよなと納得しました。

嘘の内容そのものも、当人にとっては切実だけど他者から見たらそうでもないというのは上手い落とし方でした。

 

正しいと思い込んでる人、正しさを通せなかった2人の教師に関しては考えさせられます。

前者に関してはろくでなし過ぎて、何も思いませんでしたが、後者の方に関してはしんみりとさせられました。

どう考えて生きるのか問われているようでした。

 

『私が先生を殺したの』 “正解を選ぶだけの人生”からの逃避行がはじまる

誰か教えてほしい
恋愛や親友の定義を、人生の模範解答を――

親元から離れ寮で生活する19歳・朝日光は、小学校の同級生だった長谷川琴葉と偶然再会する。
当時の担任が川に転落したニュースが飛び込んできて動揺していると、
琴葉が「私が先生を殺したの」と告白、そのうえ一緒に逃げてほしいと言う。
しかし光は先生を殺した犯人は琴葉ではないと確信していた。なぜなら――。
互いに秘密を抱えながら、ふたりは小学校の修学旅行先だった京都に向かう。

『愛されなくても別に』の著者が描く、愛と友情と嘘だらけの衝撃作!

竜の姫ブリュンヒルド

竜の姫ブリュンヒルド 竜殺しのブリュンヒルド (電撃文庫)

 

衝撃のデビューを飾った竜殺しのブリュンヒルドの前日譚にあたる物語。続編ではなく、世界観をより掘り下げたのは英断でした。

あれだけの作品を書いてしまったら、書くのに迷いが生まれてもおかしくはないな。

ただ、それでも今作を書いて下さってありがたいです。

世界観が素晴らしいですし、登場人物が周りの環境に振り回されて翻弄されるのは、ままならなさを感じつつ、惹かれてしまう。

 

竜と姫の関係はもちろんだが、姫と従者の関係も魅力的でした。

いつの時代も人と竜の関係はうまくいけないのは自然な流れなのか。

姫に拾われた従者が徐々に心境が変わっていき、行動にも現れていて、彼が報われたかは読み手次第ですが、個人的には報われたと思いました。

 

前作同様、切なさがある作風で重たく響く余韻が堪りませんでした。

作者の作品は見逃せませんね。

 

すべてを赦し、ただ一度、憎んだ

人々は彼女をこう呼んだ。時に蔑み、時に畏れながら、あれは「竜の姫」と。
帝国軍の大砲が竜の胸を貫く、そのおよそ700年前―-邪竜に脅かされる小国は、神竜と契約を結び、その庇護の下に繁栄していた。
国で唯一、竜の言葉を解する「竜の巫女」の家に生まれた娘ブリュンヒルドは、母やその母と同じく神竜に仕えた。 竜の神殿を掃き清め、その御言葉を聞き、そして感謝の貢物を捧げる――月に、七人。
第28回電撃小説大賞《銀賞》受賞の本格ファンタジー、第二部堂々開幕!

ノッキンオン・ロックドドア2

ノッキンオン・ロックドドア2 (徳間文庫)

 

素晴らしいシリーズですね!

1巻を読み返して、今巻を読んだら、1作目よりもグッとキャラクターに魅力が増して、過去も明かされて、より今作品の虜になりました。

前巻で明かされなかった探偵2人と刑事と容疑者の大学時代のエピソードが描かれていて、そんな過去が…と驚くと同時によくバディになって働く気になったなと思いました。

 

1冊通して、人は思い込みである程度の判断をしてしまうのを利用した内容になっていて、様々な場面で深く考えねばと勉強にもなりました。ミステリ的に決めてかかってしまいそうな場面で、二段構えの構想になっていています。振り回されますが、それが良い。頭をよく使わないといけなくなるのが楽しいです。

 

倒理と氷雨の過去が明かされ、ひと段落したようだけど、ここから続くんですよね?

このシリーズなら何事もなく始まりそうではありますが、どうなるやら。

 

帯や解説も今作品を理解しているなぁと感じるものだったのは良かったです。

 

人気声優・斉藤壮馬さん、絶賛!

倒理も氷雨も魅力的ですが、穿地さんも素敵かつ変
なお姉さんだし、神保も食えないやつで面白いし、
美影もめちゃくちゃ演じてみたいです。
絶対に朗読したいと改めて思うと共に、このカタル
シスは小説でしか味わえないよな、とも感じており
ます。
軽妙な掛け合いに隠されたトリックやオマージュの
数々に、ミステリ好きも唸ること間違いなし!

解かないほうがいい謎なんてこの世には存在しない
──。不可能な謎専門の御殿場倒理、不可解な謎専
門の片無氷雨。大学のゼミ仲間だった二人は卒業後
、探偵事務所を共同経営し、依頼人から持ち込まれ
る数々の奇妙な事件に挑んでいく。そして、旧友と
の再会により、唯一解かれていなかった〝五年前の
事件〟の真相が遂に明かされて……ダブル探偵が織
りなす人気シリーズ第二弾。
(解説 東川篤哉

ノッキンオン・ロックドドア

ノッキンオン・ロックドドア (徳間文庫)

 

続巻が文庫化するので再読しました。

初めて読んだときよりもミステリ作品として、より深く読み込めました。

 

バディモノで、動機、シチュエーション、得意推理が違う探偵2人が様々な事件を解いていく。互いに分かりあって、信頼している関係性が良い。軽口やくだらない会話もユニークで面白かったです。

どちらの面からも事件に挑めるので、真相にたどり着くまでの推理が読んでいて楽しくて、興味深い。事件を解体しているようで、事件の全貌を丸裸にするようでした。

また、事件の真相も捻りがあり、驚かされました。

どの話も締めに至るまでに充分な検討をしているので、気持ちが良い読み応えです。

探偵2人、刑事、犯人側、事情があるようでそちらも気になります。

 

 

密室、容疑者全員アリバイ持ち―「不可能」犯罪を専門に捜査する巻き毛の男、御殿場倒理。ダイイングメッセージ、奇妙な遺留品―「不可解」な事件の解明を得意とするスーツの男、片無氷雨。相棒だけどライバル(?)なふたりが経営する探偵事務所「ノッキンオン・ロックドドア」には、今日も珍妙な依頼が舞い込む…。新時代の本格ミステリ作家が贈るダブル探偵物語、開幕!

薫る花は凛と咲く(5)

薫る花は凛と咲く(5) (マガジンポケットコミックス)

 

毎巻良いのだが、今巻も無事冒頭から涙が滲んできてしまいました。

凛太郎が薫子の為に頑張って誕生日ケーキを作って、渡して、どう思われるのか不安でハラハラするが、薫子の言葉で安心する。読んでるこちらも嬉しくなりました。

凛太郎の気持ちが薫子にきちんと伝わっていて、薫子も胸が一杯になるところなんて素敵過ぎる!

 

昴の輪に踏み込めない臆病さを皆が理解して受け止めてくれるなんて、優しい空間でした。

薫子と昴の関係も互いに寄り添っていて、良いなと思います。

 

このまま終わるかと思いきや、ぽろっと凛太郎の気持ちが溢れてしまう。

しかし、凛太郎は誠実に薫子に向かっていく。

薫子も凛太郎を想う。

2人の関係はどうなるのか、次巻が非常に気になります。

 

 

お嬢様校に通う和栗薫子と出会った、底辺男子校に通う紬 凛太郎。薫子と過ごす時間を心地よく感じていた凛太郎は、次第に、自身が抱く淡い恋心に気づき始めるのだった。仲間たちと過ごす夏休みの訪れに胸を膨らませる1学期終盤。突如、薫子の誕生日が2週間後だと知った凛太郎は、悩み抜いた末、彼女が大好きなケーキを手作りすることを決意する。父に教えを乞い、日々自作ケーキの特訓に励む凛太郎。この一途な想いが詰まったプレゼントに薫子は…?