羽休みに娯楽を

読書、主に小説の感想を上げています。たまに、漫画や映画等も。

公務員、中田忍の悪徳 (4)

公務員、中田忍の悪徳 4 (ガガガ文庫)

 

表紙の躍動感良いね〜

忍とアリエルの生活が根づいてきた頃にやってくる、忍の限界。最初から今まで、ありとあらゆる可能性を想定して、未知のエルフと生活を送ってれば、そうなるか。

一から百まで細かく、考え続けて、仕事や日常が乱れないわけがない。

凡人な忍だからこそ頑張り過ぎてしまう。

そんな時こそ、周りに頼る。

部下の一ノ瀬におはちが回るのは自然か。

逃避しようとする忍に一ノ瀬がビシッと言えるあたり、良い部下だ。

雨降って地固まるというところ。

 

アリエルが成長して、忍達も覚悟が固まってきて、どうなる。

 

中田忍の苦悩。物語は謎の限界へと向かう。

謎のメッセージとともにもたらされた“異世界エルフ”アリエルの身分を公的に証明する書類の数々。
多くの問題を解決し、忍の目指す異世界エルフの社会的自立を大きく助けてくれるはずのそれは、同時に『公的機関のデータベースを自在に操り、インターネット通信を常時監視しているかの如き、超越的な謎の監視者』の存在を示唆するものでもあった。
浮き彫りとなった異常を前に、家族を守るべく戦線を離脱する徹平、遠ざけられた由奈、空回りする環、じっと見守る義光。
そして、アリエルを送り出すべき現代社会もまた、中田忍を苦しめる。
いち現代人として、いち地方公務員として、目を逸らすことのできない人類の闇が、アリエルの自立を目指す忍の前に横たわる。

そして、ある真夜中。
完全体異世界エルフの装いとなり、己の前に立つアリエルを前に、忍はぽつりと呟く。

「さよならのためか」

「ハイ」

敵は現実。
逃れ得ぬ現実。
夕闇迫る江の島シーキャンドルの頂上で忍を襲う、前代未聞の「悪徳」とは。

打ち寄せる新たな波紋は、忍から何を奪い、何を与えるのか。
異世界エルフ×地方公務員×群像劇、開花の第四幕!!

公務員、中田忍の悪徳 (3)

公務員、中田忍の悪徳 3 (ガガガ文庫)

 

2人目のエルフが登場!?ということでしたが蓋を開けたら、そういうことかと納得。

アリエルの仲間と思いきや、アリエルの羽を見つけることで、エルフの存在を確信する環が登場。

新しく登場した環の背景を想うと泣けてくる。

辛い生活を送っていた環にとっては、エルフという存在は縋りたくなる存在だった。

忍と環の探り合いは悲しい現実と向き合うものだったが、互いにとっては自身の気持ちと折り合いをつけられるために必要だった。

 

そして、忍が様々な葛藤を経て、変わっていく様子もじんわりと来ました。

忍の中でアリエルとの距離感も変わり、関わり方も変わっていくのが楽しみ。

今まで通りではない日々は様々なハプニングがありつつも、嬉しい発見の連続で良いですね。

仲間も集まってきて、今後どうなるのだろうか。

 

 

俺は二人目の異世界エルフを見殺しにする。

年の瀬も押し迫るころ――。
壁、電柱、道路、市内のそこここに魔法陣のような謎の紋様が落書きされる奇妙な事件が頻発していた。
そしてその落書きは、アリエルが忍たちに描いてみせた紋様と酷似していた。
SNSによって伝播していく魔法陣の画像の出現時期と、アリエルの来訪時期がほぼ一致することから、忍たちは“二人目の異世界エルフ”の存在を推測。
だが、我らが中田忍は、

「俺は、二人目の異世界エルフを保護するつもりはない」

と、二人目の異世界エルフを見殺しにすることを宣言する。
自分たちがこの件に深入りし目立った行動を起こすことで、アリエルの存在までもが脅かされる可能性を危惧したのだが……。

――12月30日。
落書き騒動がついに全国ニュースへ取り上げられてしまったため、行政の手抜きを糾弾されないよう、市長の一声で区民の防犯パトロールに区役所職員も参加することになる。
私人でなく公務員として“魔法陣事件”に干渉する権利を得た忍は、真相を探るべく動き始める。

“二人目の異世界エルフ”が巻き起こす、新たな騒動。激情と勝負の第三幕!

陽キャになった俺の青春至上主義

陽キャになった俺の青春至上主義 (GA文庫)

 

これは新たな青春ラブコメだ。

陽キャ陰キャ、問わず仲良くなって、その枠組みそのものと向き合っていく様子はまさにそう。

序盤は軽いラブコメで、中盤以降に陽、陰という個人の性質について掘り下げていく。

軽い雰囲気で、ズイズイ進んでいく展開が良いですね。

会話がとにかく面白くて楽しい。関係性もよく描けていて、陽キャ陰キャ構わず仲良くなっていくのが良い。人は人だから、その人らしくあれたら良いんだよね。笑いでシリアスを中和しているのは流石だなと。

 

続編はどうなるか楽しみです。

 

陽キャ】と【陰キャ】。
世界には大きく分けてこの二種類の人間がいる。
限られた青春を謳歌するために、選ぶべき道はたったひとつなのだ。
つまり――モテたければ陽であれ。

陰キャの俺、上田橋汰は努力と根性で高校デビューし、陽キャに囲まれた学校生活を順調に送っていた。
あとはギャルの彼女でも出来れば完璧――なのに、フラグが立つのは陰キャ女子ばかりだった!?
ギャルになりたくて髪染めてきたって……いや、ピンク髪はむしろ陰だから!

GA文庫大賞《金賞》受賞、陰陽混合ネオ・アオハルコメディ!
新青春の正解が、ここにある。

ドールハウスの惨劇

ドールハウスの惨劇

 

素晴らしい!

高校生の男女の仲だったり、友情を描きながらもミステリとして強いフックを用意しているのは青春ミステリとして文句なし。

というか、最初から最後まで作品に浸れた感じがしました。

惨劇から程遠い日常から徐々に惨劇に近づいていく様子に胸が痛む。いざ、惨劇が起こってからの推理は見事でした。

タイトルの通り、操り人形みたいに生きている姉妹には同情しかなく。しかし、彼女達には災厄が待っているのがまた辛い。

推理する側の蓮司と麗一のコンビのドタバタ感が非常に良かった。

各キャラ立っていて、魅力がある物語運びでした。まさかの真実に驚かされました。

そんなところに!?という着地をして、ゾッとしました。

 

続編が楽しみです。

 

舞台は鎌倉にある名門・冬汪高校。
同高二年の滝蓮司は、眉目秀麗だが変人の卯月麗一とともに、生徒や教師から依頼を受け、思ってもみない方法で解決を図る"学内便利屋"として活動している。その名も「たこ糸研究会」。会長は蓮司、副会長は麗一。取り壊しの決まっている古い校舎の一角が、ふたりの部室にして"事務所"だった。
ある日蓮司は、道を歩けばスカウトが群がり学内にはファンクラブすら存在する超絶美少女、藤宮美耶という同級生から、ある依頼を受ける。
その依頼とは――。
蓮司と麗一が依頼を引き受けたがゆえ、惨劇の幕は開く! 舞台は、鎌倉に佇む白亜の豪邸。ふたりは特異な家族にまつわる、おぞましい事件の真相をひもといてゆく。
新進気鋭の著者が放つ、渾身のミステリー!

麦本三歩の好きなもの 第二集

麦本三歩の好きなもの 第二集 (幻冬舎文庫 す 20-2)

 

住野よる先生の引き出しの多さが分かるシリーズ。

三歩の日常は読者にとって非日常的に感じるから良い。三歩の生き方はとても良いなと思うが、中々出来ない。だから、読むのが楽しい。

ふわふわした生活から、心抉られる箇所もあり、緩急が上手くついている。緩いエピソードが多めではあるが、別れや失敗にも焦点を当てているのは良いことだ。

友人が侮辱されたら怒ったり、先輩との別れに悲しんだり、兄弟の繋がりを感じたり、様々な三歩が見えて嬉しい。

 

日常系の物語で、三歩の確かな歩みを感じられるのがまた良い。

失敗も糧にしていく様子は良い。

読んでいて、応援したくなります。

 

新しい年になって、図書館勤めの麦本三歩にも色んな出会いが訪れた。真面目な後輩、謎めいたお隣さん、三歩に興味がなくもなさそうな合コン相手。そして、怖がりつつも慕ってきたひとりの先輩には「ある変化」が──!?マイペースな彼女の、あいかわらずだけどちょっとだけ新しい日々。気軽に読めてほんわか気分になれるシリーズ最新刊。

#塚森裕太がログアウトしたら

#塚森裕太がログアウトしたら (幻冬舎文庫 あ 79-1)

読んでいて、胸が詰まる思いでした。

タイトルと作品のテーマに惹かれて読みましたが、性にまつわることから始まり、個人の問題に踏み込むのが魅力的でした。

主人公・塚森裕太が同姓愛者だと周囲にカミングアウトし、様々な人に影響を与えていく。

苦しむ人達の葛藤を密に描いているから、読んでいて寄り添いたくなる。苦しみから抜け出していく、跳ねる瞬間というのが非常に美しく思いました。

 

様々な視点から見る塚森裕太と実際の塚森裕太は乖離していて、タイトル回収する最後は天晴れでした。

誰だって仮面を持っているが、仮面が素を上回ると苦しい。

ログアウトした結果、様々な痛みが伴ったが、見える景色が変わったのは良かったのだろう。

救いで締められていたのは安心しました。

 

高三のバスケ部エース・塚森裕太が突然「ゲイ」だとSNSでカミングアウトした。騒然とするも反応は好意的。しかし同じ学校の隠れゲイの少年、娘をレズビアンだと疑う男性教師、塚森ファンの女子高生、塚森を崇拝する後輩は、彼の告白に苦しみ、葛藤する。それは「本当の自分」になるはずだった塚森も同じだった──。痛みと希望の青春群像劇。

プロトコル・オブ・ヒューマニティ

プロトコル・オブ・ヒューマニティ

壮絶な物語を浴びたようでした。

SF要素がありつつも本筋は息子と父の関係、ダンサーとしてのあり方が問われていたのかな。

 

主人公がダンサーとして致命的な怪我をして、AIに頼ることに。その過程で、人間の動きをAIに学ばせるために必要な人間性と再現性が必要なことが分かる。

しかし、対比して主人公の祖父が認知症になり、本来の姿から離れていく。残酷な現実と向き合うために、力を振り絞る主人公の姿は素晴らしかったです。

家族介護のシビアな現実も描き、苦境に立たされながらもパートナー、仕事仲間に支えられて踏ん張れて良かった。

途中、読むのが辛くなりますが、最後まで見届けなければと思いました。だって、献身的になっていくにつれて、光が刺してくるのだから。

 

伝説の舞踏家である父の存在を追って、身体表現の最前線を志向するコンテンポラリーダンサーの護堂恒明は、不慮の事故によって右足を失い、AI制御の義足を身につけることになる。絶望のなか、義足を通して自らの肉体を掘り下げる恒明は、やがて友人の谷口が主宰するダンスカンパニーに参加、人のダンスとロボットのダンスを分ける人間性の【手続き/プロトコル】を表現しようとするが、待ち受けていたのは新たな地獄だったーー。SF史上もっとも卑近で、もっとも痛切なファーストコンタクト。『あなたのための物語』「allo, toi, toi」『BEATLESS』を超える、10年ぶりの最高傑作。