羽休みに娯楽を

読書、主に小説の感想を上げています。たまに、漫画や映画等も。

放課後 文庫

放課後 (講談社文庫)

 

東野圭吾先生のデビュー作を読みました。

 

学校で起こる殺人。しかも密室。構えながら読んでいて終盤のある部分まで読めば犯人にたどり着きました。トリックは半分くらいですけど。

わりとフェアなミステリーになっていて好印象でした。

大胆なトリックでしたが、犯人を隠すのが上手いです。

 

主人公・前島が狙われているという序盤からの伏線がそう化けるのかと驚きました。

 

青春であり、人間の感情を追っていて、読み応えありました。

犯人の動機はそこまでいってしまうのかと。

被害者には同情出来ない事実がありました。

 

最後の幕引きは悲しみがありつつ、仕方ないのかもしれない。

 

個人的に大谷刑事が好きだったので、この後どうなったのか気になります。笑

 

 

登場人物の描き方も作風に沿っていて、良かったなと。

 

校内の更衣室で生徒指導の教師が青酸中毒で死んでいた。先生を2人だけの旅行に誘う問題児、頭脳明晰の美少女・剣道部の主将、先生をナンパするアーチェリー部の主将――犯人候補は続々登場する。そして、運動会の仮装行列で第2の殺人が……。乱歩賞受賞の青春推理。

黒と茶の幻想 (上) 文庫

黒と茶の幻想 (上) (講談社文庫)

 

上巻とはいえ、かなりスローな出だしなのかな。

男女4人の旅の間の会話を中心に展開していく。

昔からの付き合いで気さくに話し合う空気感に落ち着くなと思ったら、鋭く胸を突いてくることも。

小さな、不思議な謎をこうなんじゃないかと話していく、合ってるか合ってないかは置いといて、推理していく様子が見事。

 

それぞれが持つ悩みや謎が明かされていき、待ち受けるものは何なのか。今巻は2人が掘り下げられて、下巻ではあと2人が掘り下げられてどうなる。

不穏な雰囲気が漂いつつ、下巻へ。

どんな結末を迎えるのか想像出来ない。

それぞれの人物が考えが描写されている分、視点が変わると別人みたいに見えたような。

人の表と裏を見せていて、中々苦しい。

 

梶原憂理というこの場にいない存在がどう影響を与えてくるのか気になるところではあります。

 

 

太古の森をいだく島へ―学生時代の同窓生だった男女四人は、俗世と隔絶された目的地を目指す。過去を取り戻す旅は、ある夜を境に消息を絶った共通の知人、梶原憂理を浮かび上がらせる。あまりにも美しかった女の影は、十数年を経た今でも各人の胸に深く刻み込まれていた。「美しい謎」に満ちた切ない物語。

追想五断章 文庫

追想五断章 (集英社文庫)

 

一読目より時間が経ち、再び読んだら物語の流れや結末に没入出来ました。静かな雰囲気だが、探し求めていた、依頼者の父の想いに舌を巻きました。暴かれる真実は読者に任せると言う締めが美味すぎる。

 

1つずつ別れている物語を追いかけて、どういう意味があるのか探していくのが気になって、読み進めるのが止まりません。

全ての物語が見えていきそうになり、今作に隠されている秘密に触れる終盤はゾクっとしました。人の裏側を描いていて、より光る嘘が魅力的でした。

 

語り手の義光の人生で陰があり、人生を切り開いていくわけでもなく、物語の中心に据えられていると思いきや、端役に過ぎないというのはなんとも言えない苦味があります。

 

 

大学を休学し、伯父の古書店に居候する菅生芳光は、ある女性から、死んだ父親が書いた五つの「結末のない物語」を探して欲しい、という依頼を受ける。調査を進めるうちに、故人が20年以上前の未解決事件「アントワープの銃声」の容疑者だったことがわかり―。五つの物語に秘められた真実とは?青春去りし後の人間の光と陰を描き出す、米澤穂信の新境地。精緻きわまる大人の本格ミステリ

数奇にして模型

数奇にして模型 (講談社文庫)

 

今回はストレートな謎解きと思いきや、事件ではない部分が印象的でした。

国枝先生の考えや新キャラの大御坊、萌絵の友人、知人のラブちゃんと金子の顔見せなどがありました。

 

事件は密室のトリックや犯人の目的や動機が分からない事が多かったが、明かされてみたら、そんなパターンもあるのかと唖然としました。想像の範疇を超えてました。

犯人像で常識と異常の境目は側からは判断出来ないのだなと。

振り返ってみれば、遠回しに伝えていたのかもと思いました。

 

萌絵の事件への執念も異常なんだよな。

犀川先生はほったらかしにしてるけど。

 

今回、

犀川先生が身体を張る珍しくシーンもありました。

萌絵のピンチには動くんだよなぁ。

 

模型交換会会場の公会堂でモデル女性の死体が発見された。死体の首は切断されており、発見された部屋は密室状態。同じ密室内で昏倒していた大学院生・寺林高司に嫌疑がかけられたが、彼は同じ頃にM工業大で起こった女子大学院生密室殺人の容疑者でもあった。複雑に絡まった謎に犀川・西之園師弟が挑む。

償いの雪が降る

償いの雪が降る (創元推理文庫)

 

続編の新刊が発売されるそうで、気になってたら今作が先というので読みました。

想像以上にタイトルが胸を打つ展開でした。

 

主人公・ジョーか殺人の罪を負った罪人・カールの話を聞き、伝記を書くことに。

カールの様子や関係者の話を聞いていくうちに不審な点が浮かび上がってきて、カールが本当に罪を犯したのか分からなくなる。

本当にカールが殺人を犯したのか。

ジョーは三十数年前の事件を掘り起こしていくうちにカールの冤罪を晴らすために奔走していく。

証拠を掴むために危ない道を渡るジョーにハラハラします。

真相を突き止めていく調査が魅力的でした。たどり着いた結末に救いが溢れていて良かった。

本当に良かったとホッとしました。

 

ジョーは事件の調査だけでなく、自身の家族の問題やお隣の悩みにも向き合っていて、大変だけど投げ出さない姿勢が良くて、魅力的な主人公でした。

 

続編でジョーがどんな成長を遂げているのか楽しみです。

 

素晴らしいミステリーであると共にジョーの人生逆転劇でした。

 

授業で身近な年長者の伝記を書くことになった大学生のジョーは、訪れた介護施設で、末期がん患者のカールを紹介される。カールは三十数年前に少女暴行殺人で有罪となった男で、仮釈放され施設で最後の時を過ごしていた。カールは臨終の供述をしたいとインタビューに応じる。話を聴いてジョーは事件に疑問を抱き、真相を探り始めるが…。バリー賞など三冠の鮮烈なデビュー作!

今はもうない

今はもうない SWITCH BACK S&Mシリーズ (講談社文庫)

 

萌絵の語りで事件が話されるということは様々な予想が立てられるが、自分は最後の最後に気づきました。遅いか。

1冊全体を通した仕掛けの正体にはやったなと思いました。

ただ、語り手である笹木が魅力的ではないのと、西之園のおかしさ、不審な点があるから薄々ですが気付けるようになっていたのは優しいですね。

 

しかし、いかんせん犀川先生の出番が少ないのが痛い。犀川先生の語りが好きならば不満かもしれない。

幕間の犀川先生と萌絵の数少ない会話の安定したチグハグっぷりは癒しでした。

犀川先生、巻数重ねるごとに適当になってるのに、推理はピカイチなんだよな笑

 

 

嵐の山荘で起きた2つの密室殺人事件!
隣り合った部屋で死んだ美人姉妹。40歳の私は、西之園嬢と推理する。

避暑地にある別荘で、美人姉妹が隣り合わせた部屋で1人ずつ死体となって発見された。2つの部屋は、映写室と鑑賞室で、いずれも密室状態。遺体が発見されたときスクリーンには、まだ映画が……。おりしも嵐が襲い、電話さえ通じなくなる。S&Mシリーズナンバーワンに挙げる声も多い清冽な森ミステリィ

強欲な羊 文庫

強欲な羊 (創元推理文庫)

 

ミステリーズ新人賞受賞作品集の監獄舎の殺人で表題作を読んでいて、他の話も気になって読みました。

 

やはり、表題作が鮮烈で印象深くて何度読んでも良い意味でイヤな気持ちになります。

認識を誤らせる展開とその伏線の回収方法が非常にいやらしさがあって、堪らないです。

完成度が高いですね。

1番初めにこのエピソード入れて、後が大丈夫かなとも思いましたが、次から次へと手を変え品を変えと変幻自在の作風で騙しに来るので、飽きるどころが惹きこまれていく。

良い感じに嫌な気持ちさせるのが素晴らしい。

 

短編集で、最初の表題作のインパクトも相まって警戒してしまいますが、逆手に取って読者を翻弄していました。

 

 

美しい姉妹が暮らすとある屋敷にやってきた「わたくし」が見たのは、対照的な性格の二人の間に起きた陰湿で邪悪な事件の数々。年々エスカレートし、ついには妹が姉を殺害してしまうが──。その物語を滔々と語る「わたくし」の驚きの真意とは? 圧倒的な筆力で第7回ミステリーズ!新人賞を受賞した「強欲な羊」に始まる“羊”たちの饗宴。企みと悪意に満ちた、五編収録の連作集。解説=七尾与史