羽休みに娯楽を

読書、主に小説の感想を上げています。たまに、漫画や映画等も。

龍の耳を君に 文庫

龍の耳を君に (デフ・ヴォイス) (創元推理文庫)

 

前巻で終わらずにシリーズ化してくれたのは嬉しいです。

荒井が家庭、仕事で悩みながらも困っている人を見捨てられない優しさがある。

その性分が今回、人助けにつながっていて良い。

 

ろう者がろう者を犯罪にハメたり、障害を持っている人が証言をしたり、健常者だけではなく、障害を持っている人達にも生き方や苦悩があるのだと実感させられます。

言語があれば証言は出来る。

その言語を理解されるのが難しいというのが描かれていて、胸が苦しくなります。

ただ、救いがある結末を迎えられるのでそこは安心しました。

 

苦しむ人に寄り添う物語だからこそ、成長、変化していく登場人物達に光が感じられる。

 

今回はタイトルの意味が素晴らしいくて、読み終える前と後ではタイトルを見て感じる気持ちが違うだろう。

 

 

<デフ・ヴォイス>シリーズ第2弾
丸山さんのこのシリーズを読むと、
昨日まで見えていたのと世界が変わる。
あなたにも、どうかその世界の中で、
彼らの「声」を聴いてほしい。辻村深月推薦!

手話通訳士の荒井尚人は、コミュニティ通訳のほか、法廷や警察で事件の被疑者となったろう者の通訳をする生活の中、場面緘黙症の少年に手話を教えることになった。めきめきと上達した少年はある日、殺人事件について手話で話し始める――。NPO職員が殺害された現場は、少年の自宅の目の前だった。果たして少年の手話での証言は認められるのか? ろう者と聴者の間で苦悩する手話通訳士を描いた『デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士』(文春文庫)に続くシリーズ第2弾、待望の文庫化。

六法推理

六法推理 (角川書店単行本)

 

デビューして勢いの止まらない五十嵐律人先生の新作。

短編集なので、今までの作品に比べると軽い雰囲気もあるので読みやすい作品でした。

先生の作品を知らない人にもおすすめです。

 

今作は大学内で無料法律相談所を運営している主人公・古城の元に他学部の戸賀が依頼してくる事から始まる。

戸賀が依頼を通して、古城とペアを組みことになり依頼を解決していく。

法律と倫理、真実にたどり着くのはどっち。

古城と戸賀、互いに長所と短所が見えたが補い合う関係で事件の真実にまで届くというのは良い構成でした。

キャラクターも立っていて、愉快な掛け合いも出来るし推理の話し合いも魅力的。

良いコンビでした。

 

事件そのものもとっかかりやすい始まりだが、調査が進むうちに人の闇が見えてくる構造で読後感はビター。

人は一面だけでは測れないものだ。

読み始めと読み終える頃で印象がガラリと変わるのは切れ味あります。

 

それでも最後は晴れやかに締めたのは良かったです。

 

古城自身の悩みも向き合っていて、だからこそ最後良い方向にいけたのかなと。

 

現役弁護士作家が放つ、青春×多重解決ミステリ!

その悩み、一人で抱え込まずお気軽に無法律へ。

学園祭で賑わう霞山大学の片隅。法学部四年・古城行成が運営する「無料法律相談所」(通称「無法律」)に、経済学部三年の戸賀夏倫が訪れる。彼女が住むアパートでは、過去に女子大生が妊娠中に自殺。最近は、深夜に赤ん坊の泣き声が聞こえ、真っ赤な手形が窓につくなど、奇妙な現象が起きているという。戸賀は「悪意の正体」を探ってほしいと古城に依頼するが……。リベンジポルノ、放火事件、毒親問題、カンニング騒動など、法曹一家に育った「法律マシーン」古城と、「自称助手」戸賀の凸凹コンビが5つの難事件に挑む!

天久鷹央の推理カルテ

天久鷹央の推理カルテ(新潮文庫nex)

 

数年ぶりに再読。

鷹央先生のキャラ立ちが強烈。

最初読んだときはあまり、良さを理解出来なかったが今は傍若無人の中にある医療者としての誇りや微かな人間らしさに魅力を感じます。

小鳥遊との凸凹コンビは好きです。

小鳥遊も鷹央先生の無茶振りに答え続けるあたり、関係性を気に入ってるんだろうな笑

小鳥呼びが病院内に広がっていくのは可哀想だが。

 

最初はキャラ紹介を兼ねたミステリー、といった感じだけど、中盤から終盤にかけての話はミステリーと医療がよく絡み合っていて、真相が気になるようになっていました。

最後の事件の真実はよく気づいたなと。主役2人のコンビが魅力的です。

 

 

統括診断部。天医会総合病院に設立されたこの特別部門には、各科で「診断困難」と判断された患者が集められる。河童に会った、と語る少年。人魂を見た、と怯える看護師。突然赤ちゃんを身籠った、と叫ぶ女子高生。だが、そんな摩訶不思議な“事件”には思いもよらぬ“病”が隠されていた…?頭脳明晰、博覧強記の天才女医・天久鷹央が解き明かす新感覚メディカル・ミステリー。

ecriture 新人作家・杉浦李奈の推論 IV シンデレラはどこに

ecriture 新人作家・杉浦李奈の推論 IV シンデレラはどこに (角川文庫)

 

今回は小説家のパクリ騒動に絡めて、李奈へ謎の脅迫が迫ってくる。

小説家ならば、自分の作品がパクられているのはしんどいし悲しいが、法律に照らすと証明するのが難しいのが現実的で辛い…

李奈への脅迫は意図が見えず、怖いものがありました。ただ、シンデレラの原点という文学的追求にはなるほどと勉強になりました。

 

複数の軸で展開していくので、中々真相まで辿りつかないが、最後まで読めば納得。さもありなんといった感じだが、李奈はよくぞ気づいたなと。

犯人との対峙は読んでいて、ドキドキしました。

 

本人の意思とは違う方向に成長しているが、どこに向かうのやら。次巻も楽しみです。

解説にもあったが、李奈にそろそろ作家としての活動をだな…

 

 

中堅・グライト出版が大々的に売りだした新人作家REN。刊行した作品が女子中高生を中心に次々ベストセラーになるが、既刊からのパクり問題が浮上しブームは突如として失速。出版界の事件を解決してきた李奈には、被害作家からの相談が寄せられる。自著からの盗作も判明し、頭を悩ませる中、別の難題も抱えていた。「シンデレラの原典を探れ」という不可解なメールが届いたのだ。送り主の意図、そしてその正体は一体……!?

掟上今日子の家計簿 文庫

掟上今日子の家計簿 (講談社文庫)

 

今回はメタなミステリー構造談義と言ったところ。

1冊丸々先生の好奇心が詰まっているようで、苦手な人は苦手かもしれないです。

 

最初の事件の殺人動機にはこんなのもありかと新たな発見をしました。無鉄砲な犯人の動機は読めないよな。犯人の心理状況も加味すればありえないわけではないなと納得。

 

叙述トリックの講義は幅広いトリックの数々が知れました。あまりにも種類が多すぎるが、叙述トリックは読み慣れていけば、注意して気付ける。ミステリ作家はそれでも騙してくるけど。

 

心理実験、筆跡鑑定も今日子さんを通して、意味が分かって良いです。

 

今回は今日子さんに依頼する刑事さんが凡庸だったのは残念でした。

 

 

脱出ゲームを最速でクリアせよ!!

名探偵にライバル登場!?
”最速の刑事”からの依頼は、殺人事件のアリバイ崩し!

被害者が殺害された時刻に、容疑者Aは遊園地の脱出ゲームに参加していた。
容疑者より速くクリアできれば、アリバイを崩せる――。”最速の刑事”からの依頼
を受け、最速の探偵・掟上今日子は謎解きイベントに挑戦することに。眠ると記憶
を失うから守秘義務は絶対厳守、警察も頼る名探偵。
大人気ミステリー第7巻!

二重らせんのスイッチ

二重らせんのスイッチ

 

冤罪ミステリーであり、家族小説でもある。計算された計画通りに進行していく不穏な雰囲気の中で育っていく、互いの信頼。どこに着地するのか分からず、最後まで気が抜けないスリルがありました。

冤罪をかけられても信じる人はいる。

ただ、報道を鵜呑みにする人達の声は暴力が孕んでいるのはなんとかならんかな。

 

冤罪を晴らした後に更なる試練が待っていて、ストレスがかかる展開だが、主人公と犯人の関係の行く末に気になるので耐えられる。

ミステリーとして、細かい伏線がミスリードに繋がっていて、種明かしの際は驚いた。

 

生まれや環境は選ぶなくても、大人になってからは生き方を選べる。そんなふうに感じました。

 

 

俺は犯人なのか――。
強盗殺人容疑で逮捕された、桐谷雅樹。
証拠は全て雅樹の犯行を示す!
最注目の著者が描く、"冤罪"ミステリー。

「桐谷雅樹。殺人の容疑で逮捕する。午前八時十一分」
2015年2月、桐谷雅樹の“日常"は脆くも崩れた。渋谷区松濤の高級住宅地で飲食店経営者が殺害され、現金およそ二千万円を奪われる事件が起きた。凶器が購入された量販店の防犯カメラに映っていたのは、まぎれもなく自分自身の姿。犯行現場から検出されたDNA型は雅樹のものと一致する。紙で切ったはずの手の傷跡、現場付近で寄せられた目撃証言……。すべては雅樹による犯行を示唆していた。やはり俺が犯人なのか――自らの記憶、精神をも疑いはじめた矢先、雅樹の不在証明が偶然にも立証される。しかし、待ち受けていたのはさらなる苦難だった。

黒と茶の幻想 (下)

黒と茶の幻想(下) (講談社文庫)

 

下巻。

上巻から気になっていた部分が中盤前くらいで疑問は解けて、どうするのかと思ったら、大人しそうな節子の冷静な一面にドキッとしました。とはいえ、話してわがだまりなく旅を終えてホッとしました。

 

今作は様々な謎と題して、登場人物の深層心理と向き合っていく。

その過程にはそれぞれ理由があり、人生があり、各章が終わるごとにスッキリしていく様子は見事でした。

 

蒔生にはおいおいと思わないではないが、無事に帰れそうで何より。

 

梶原憂理の謎については、揺さぶられるものがありました。

 

 

雨の音を聞きながら、静かな森の中を進んでいく大学時代の同窓生たち。元恋人も含む四人の関係は、何気ない会話にも微妙な陰翳をにじませる。一人芝居を披露したあと永遠に姿を消した憂理は既に死んでいた。全員を巻き込んだ一夜の真相とは?太古の杉に伝説の桜の木。巨樹の森で展開する渾身の最高長編。