松村涼哉先生の新作はメディアワークスから。デビュー作からこちらの文庫に移っても違和感ない作風でしたが、今作はより、色濃く感じました。
テーマは少年法ということで、現実でも問題になっていることで、小説ならではの仕掛けを整えていた。読んでいて、やるせなさや、悔しいと気持ちがナイフのようで、作者の伝えたいメッセージというのが痛いほど伝わってきました。
主人公の渡辺篤人と記者の安藤が各立場から少年法でこんな酷い目に遭ったことが細かく現実的で、加害者への憎悪が酷く伝わってきた。そして、だからといって、加害者も苦痛を味わっているわけで。ネットやニュースに踊らされてクルクル回るように世間の人は加害者を叩いて傷つけて、そこまで言うのかという線を平気で超えてしまう。現代の問題点を問いかける、作品になっています。
読み終えた後に訪れるのは幸福感か絶望感か
。読者それぞれだと思いますが、渡辺篤人の叫びをただの小説の主人公の声だと思わず、しっかりと受け止めてもらえたら良いなと思います。
考えて考えて、意見を言う前に、全てを知ろうとすることから始めるべきなんだ。