羽休みに娯楽を

読書、主に小説の感想を上げています。たまに、漫画や映画等も。

いつか僕らが消えても、この物語が先輩の本棚にあったなら

いつか僕らが消えても、この物語が先輩の本棚にあったなら (MF文庫J)

 

永菜先生がスニーカー文庫だけでなく、MF文庫からも出すなら読むしかない。

ラノベに限らず小説家の物語でした。

小説家を目指している人にはたまらなく刺さるだろうし、目指しいない人でも手に汗握る展開が伝わるようになっていました。

小説家を目指す、今と小説家になった、未来。

交差していく構成なので読みながらいったい主人公・海人とライバル・浩太のどっちが先輩である朱音の隣に立つようになるのかが気になって仕方なかったです。

生きながらも死んでいた海斗が朱音と出会えて、小説を書く喜びを知り、浩太と競い合うように成長していく過程も良い。

海人と浩太の男臭い友情や青春には心が揺れるものがありました。

 

書きたいこと、書くべきもの。

創作について回ることも追求して、悩みながらも答えを見つけるというのも良かったです。

 

上手くいっていたら、落とし穴が待っている。

だが、絶望があれば希望もある。

過酷な現実に海人は打ちひしがれながらも、創作仲間達の支えや、ある声に救われる展開は惹きつけられます。

 

クライマックスの種明かしに驚きつつ、小説家という戦場で見せる成長譚は見事でした!

 

読み終えた後にも胸の中に作品の熱さが残るようでした。

 

小説が好きな人に届いてほしい物語がここにあります。

 

(あらすじ)

青春の全てを捧げた、小説の世界は――戦場だった。 

柊海人の日常は全てが灰色だった。可愛い妹と何かと気に入らないことがあればすぐに激昂してしまう父。アンバランスな家庭を守るため、アルバイトに明け暮れ、将来のことなんて考えられなかった。 
天谷浩太の日常は全てが虹色だった。幼いころから欲しいものは何でも与えられ、何をしたって上手くいった。そんな二人に文芸部部長・神楽坂朱音は小説の世界の素晴らしさを説いた。そして、囁く 
「君たちのどちらかがプロデビューして、私を奪って欲しい――」 
いびつな関係の3人が小説という名の戦場に出揃うとき、物語は動き出す。小説に魅せられた少年少女が贈る、本物の青春創作活劇!