羽休みに娯楽を

読書、主に小説の感想を上げています。たまに、漫画や映画等も。

愛されなくても別に

愛されなくても別に

 

武田彩乃先生の新作。

愛情を払えない少女・宮田と愛情を受けられなかった女性・江永が互いに傷と向き合い、孤独から抜け出していく物語。

生きていくうえで必要とされている両親からの愛情の無さに飽き飽きとしている2人が相性が良いのは納得だし、出会えて良かったなと。

互いに共同生活をしていき、傷をそっと蓋してくれる関係っていうのは良いですね。

愛情や世の常識なんて、自分のためにならないなら切り捨てていけばいい。強いメッセージに励まされる様でした。

自分の事は自分で決めないと。そうしないと誰かに食い物にされてしまう。

必死に気楽に生きようと思いました。

 

宮田と江永はそれぞれ苦しみを抱えていたが、その感情の隙間や揺れを絶妙に描いていて、読んでいて脳裏に張り付いてきて彼女達の苦しみが他人事だと思えなくなってました。

その苦しみから抜け出して未来へ踏み出した2人には爽快感がありました。

緩急のついた展開や感情の波を描くのが上手い作者の手腕が良かったです。

最後まで引き付けて離さなかった。

 

また、同僚の堀口や知り合いの木村なども生きていて、苦しみを抱えていて、2人が吐く台詞の一部は確かに考えないといけないものがあり、一面だけでは判断できないですね。

 

生きていくうえで大事なのは自分がどう思うかだ。

タイトルは投げやりなようだけど、そうではないのが伝わってきました。

 

(あらすじ)

時間も金も、家族も友人も贅沢品だ。 

響け! ユーフォニアム」シリーズ著者が、息詰まる「現代」に風穴を開ける会心作! 


遊ぶ時間? そんなのない。遊ぶ金? そんなの、もっとない。学費のため、家に月八万を入れるため、日夜バイトに明け暮れる大学生・宮田陽彩。浪費家の母を抱え、友達もおらず、ただひたすら精神をすり減らす――そんな宮田の日常は、傍若無人な同級生・江永雅と出会ったことで一変する! 

愛情は、すべてを帳消しにできる魔法なんかじゃない――。