表紙に惹かれて読みました。(小市民シリーズ好き)
主人公である音野順が消極的に事件を解いていく短編集。
ここまで弱気な探偵は珍しい。友人でワトソン的立ち位置の白瀬白夜が音野のためだったり、自分の執筆のために音野に見せ場がくるように事件などを引き受けるようにしているのは優しさと取れます。
毎回弱気な音野を支える白瀬の存在は大事だし、いざ謎に挑み始めるととことん調査する音野の関係は読んでいて賑やかで明るい。
最初から仲が良かったわけではないだろうから、2人が仲良くなったきっかけとか読みたいなと思いました。
また、肝心の謎も物理トリックとしてかなり練られている印象がありました。
最初の2話は行き当たりばったりな感じもありますが、3.4.5話はエンジンかかっている感じで良かったです。
中でも4話の毒入りバレンタイン・チョコはトリックに衝撃を受けたし、犯人の動機が愚かな感じも気に入りました。最後の引きも素晴らしいです。
最後に音野が白瀬に問いかけたことは簡単には答えが出ないだろうが2人がこれから事件と関わっていて答えを見つけ出せるといいな。
名探偵に悩みはつきものだ。
続巻も文庫化するようで楽しみです。
類稀な推理力を持つ友人の音野順のため、推理作家の白瀬白夜は仕事場の一角に探偵事務所を開設する。しかし当の音野は放っておくと暗いところへ暗いところへと逃げ込んでしまう、世界一気弱な名探偵だった。依頼人から持ち込まれた事件を解決するため、音野は白瀬に無理矢理引っ張り出され、おそるおそる事件現場に向かう。新世代ミステリの旗手が贈るユーモア・ミステリ第一弾。