羽休みに娯楽を

読書、主に小説の感想を上げています。たまに、漫画や映画等も。

金木犀と彼女の時間 文庫

金木犀と彼女の時間 (創元推理文庫)

 

素晴らしい青春ミステリーでした。

タイムリープの繰り返しの特殊設定に悩む主人公・菜月の心情が綿密に描かれているからこそ周りの人達と距離を置いて悩む気持ちに感情移入しやすくなっていました。

だからこそ、小さな頃にタイムリープが生じることで混乱して、周りに信じてもらえずに気持ちに蓋をしていた主人公・菜月が悩んだり迷ったりしながらもクラスメイトの死を回避するため奔走する姿に釘付けにされます。

過程で友人達との距離感が出てしまったがしっかり向き合えたり、自分の過去の思い出に照らし合わせたり、真実に至るまでのループの違いなど、丁寧な構成でした。

事件の真相に近づいていくうちに菜月が精神的に成長していくのも感じられて、青春とミステリーが上手く絡まっていて読み応えがありました。

ミステリーとして、犯人への道筋が分かりづらくなっていて容疑者を絞らせないようになっていて、青春だけではないというのも好印象です。

 

主人公の菜月の奮闘に惹かれるように、爽やかな読後感でした。

 

表紙に釣られて読むのも一興かと。

 

拓未に告白されたとき、菜月の人生三度目のタイムリープが始まった。この状態に陥ると、菜月は同じ一時間を五回繰り返す。つまり菜月は、このあと拓未に五回告白されるはずだった。しかし一回目、告白の場所に向かおうとした菜月の目の前で、拓未は屋上から墜死する。一体何が起きたのか? チャンスはあと四回、それまでに彼の死を止める方法を、絶対に見つけなければ。女子高生が文化祭中の校舎を駆け巡る、鮮やかな学園ミステリ。