作家や編集者の非日常な生活をブラックなユーモアを交えて、遊んでいる短編集でした。
売れない作家達の執念や執拗に編集者に迫るテクニックは不気味すぎて笑ってしまいますが、編集者側からすると迷惑すぎる…
作家と言えば印税生活の印象がありますが、シビアに追い詰められていく描写があまりに痛々しすぎて泣けてきました。残酷ですけど、売れ続けるというのは大変だ。
もしもこんなことが起きたらと作家と編集者が思うことが実現出来る悪魔がいて、実際に願いを叶えてみせた結末は皮肉が効いていてこれは悪魔だよ。
ラノベの編集、文芸選考は明るい風に見せて読書好きを地獄に突き落とす捻りが入っていて、明るくて嫌なミステリだ…
死に間際に見せたいと願う遺作はなんともやるせない感情を描いていて希望と捉えるか絶望と捉えればいいか迷う話でした。
どの話も読み終えたら後に引く苦々しさや謎に明るく幕引きしたりと自由自在な闇鍋みたいな短編集でした。話の匙加減やネタのチョイスが絶妙で、ギリギリのバランスで保っているように感じました。
座談会は話を振り返る同時に倉知先生を掘り下げていて読み応えがありました。
文学賞のパーティーで、大手出版社四社の編集者が暗い顔で集っている。皆、ある中堅作家につきまとわれて困っているのだ(「押し売り作家」)。苦節十年、やっと小説の新人賞を受賞しデビューした川獺雲助は会社を辞めて作家に専念することにした。しばらくは順調だったが……(「夢の印税生活」)。ほか、出版稼業の悲喜交々を描く連作小説。