作品は前から知っていたが、分厚いから敬遠していました。
だが、読んだら後悔しました。
分厚い1冊だが、全てが必要なことなので読み進めていくうちに気にならなくなる面白さでした。
首相殺しの濡れ衣を着させられた主人公がただただ、逃げる。誰が仕組んだのか見えず、周りが敵だらけの状況だが、かすかな糸を伝って逃げていく素晴らしい逃走劇でした。
主人公の昔からの人柄を知っている人達は彼が犯人だと誰も思わないのは素敵だなぁと。
繋がり方が露骨じゃなくてそっと繋がり合っているのは良いですね。
逃走に疲れた主人公に送られる、元恋人や父親の痛烈なメッセージは読んでるこちらにも響くものがあり、込み上げてくるものがありました。
伊坂先生は理不尽から逃げずに挑む作品が多い中、今作は戦わずに逃げるに徹していて珍しく感じました。
状況が状況だけに逃げるという選択を徹底して行うというのは逆に戦うということなのかなと思いました。
映画も観てみたいと思いました。
衆人環視の中、首相が爆殺された。そして犯人は俺だと報道されている。なぜだ?何が起こっているんだ?俺はやっていない―。首相暗殺の濡れ衣をきせられ、巨大な陰謀に包囲された青年・青柳雅春。暴力も辞さぬ追手集団からの、孤独な必死の逃走。行く手に見え隠れする謎の人物達。運命の鍵を握る古い記憶の断片とビートルズのメロディ。スリル炸裂超弩級エンタテインメント巨編。