1年振りに読み返しました。
初めて読んだ時に気にしてなかった部分にも注意して読んだら、新たな発見が出来て、何度読んでも味わえる小説だなと。
周囲からの差別や扱いに屈せずに真っ直ぐに突き進む茅森の気高さに天晴れ。
皆に同じ対応して、獅子眈々と目標に歩いていく彼女の隣を歩くのは、自分の考えをしっかり持って優秀な坂口。
坂口は完璧そうに見えて、徐々に男らしい頑固さが見えてきて、彼の考え方を応援したくなります。
倫理や愛に対する考え方、違う考え方を持つ人との会話の難しさ。文章を読み進めていくうちに頭で考えを巡らせていくのが非常に心地よい。
人と人の間の距離を埋める相互理解は中々難しい。
優しさを履き違えている人でも、その優しさに救われる人もいる。
話が合わなくても、それだけで相手を決めつけるのはいけない。
寄り添っていく姿勢が大事。
話の合間に坂口と茅森の関係にヒビが入っているのが伺えるのが挟まっており、なぜ?という意味では坂口らしい決断のせいですが、その決断をしてもおかしくはないくらいの状況だったから、納得。
坂口と茅森の関係も複雑に見えて、真っ直ぐ向き合っていく流れは素晴らしかったです。
総理大臣になりたい少女とすべてに潔癖でありたい少年の純愛共同戦線!
自分の声質へのコンプレックスから寡黙になった坂口孝文は、全寮制の中高一貫校・制道院学園に進学した。中等部2年への進級の際、生まれつき緑色の目を持ち、映画監督の清寺時生を養父にもつ茅森良子が転入してくる。目の色による差別が、表向きにはなくなったこの国で、茅森は総理大臣になり真の平等な社会を創ることを目標にしていた。第一歩として、政財界に人材を輩出する名門・制道院で、生徒会長になることを目指す茅森と坂口は同じ図書委員になる。二人は一日かけて三十キロを歩く学校の伝統行事〈拝望会〉の改革と、坂口が運営する秘密地下組織〈清掃員〉の活動を通じて協力関係を深め、互いに惹かれ合っていく。拝望会当日、坂口は茅森から秘密を打ち明けられる。茅森が制道院に転入して図書委員になったのは、昔一度だけ目にした、養父・清寺時生の幻の脚本「イルカの唄」を探すためだった――。