羽休みに娯楽を

読書、主に小説の感想を上げています。たまに、漫画や映画等も。

恋する寄生虫

恋する寄生虫 (メディアワークス文庫)

 

映画観たら、原作に戻りたいと思い再々読しました。

もう3度目になると驚きとかはないですが、高坂と佐薙が虫の存在が間に挟まっているとはいえ、世間に馴染めないという共通点や気が合うという相性の良さから仲を深めて、落ちていくのは美しいとすら思います。

 

生きづらさを抱えていた高坂と佐薙は寄生虫に振り回されながらも自分の気持ちと向き合える、この物語が至高である。

 

障害がなく、普通に戻れても。

隣に恋に落ちた人がいないと欠けた気がするという人の強情さとも言えるところは不器用に生きている高坂と佐薙の魅力でもありました。

 

自分の気持ちが作られたものか、本音なのか。

揺さぶられる心理描写が抜群に上手いです。

 

最後の落ちはその先を見たいと思うのが無粋になってしまうくらい、見事だったなと。

 

佐薙視点の物語が読みたいなと。

ほぼ、無いだろうけど。

 

 

これは、「虫」によってもたらされた、臆病者たちの恋の物語。

何から何までまともではなくて、
しかし、紛れもなくそれは恋だった。

「ねえ、高坂さんは、こんな風に考えたことはない? 自分はこのまま、誰と愛し合うこともなく死んでいくんじゃないか。自分が死んだとき、涙を流してくれる人間は一人もいないんじゃないか」

失業中の青年・高坂賢吾と不登校の少女・佐薙ひじり。一見何もかもが噛み合わない二人は、社会復帰に向けてリハビリを共に行う中で惹かれ合い、やがて恋に落ちる。
しかし、幸福な日々はそう長くは続かなかった。彼らは知らずにいた。二人の恋が、<虫>によってもたらされた「操り人形の恋」に過ぎないことを――。