羽休みに娯楽を

読書、主に小説の感想を上げています。たまに、漫画や映画等も。

凍りのくじら 文庫版

凍りのくじら (講談社文庫)

 

辻村先生の作品はまだ、数冊しか読んでいないが、その中でも屈指の満足度!

辻村先生の作品でこれ以上のものはあるのか?と思ってしまうくらい面白かった。

 

主人公・理帆子の冷めた生き方は当てはまる人はいるのではないか。多数よりは少数派かもしれないが。

そんな理帆子が少しずつ、少しずつ、心変わりしていく様子が描かれていて、出会う人の暖かさと人間の弱さを知ることで理帆子自身の成長に繋がっていて、良い読後感でした。

人の良いとこ、悪いとこ、両方知ったうえで希望ある締めくくりだったのは素晴らしいです。

 

ドラえもんの秘密道具になぞらえたエピソードになっていて、後々に効いてくる構成になっている。

 

理帆子の成長、変化物語でありながら、ほんのりミステリー要素もあり、終盤の種明かしにしてやられました。

 

感情の掘り下げ方が巧みで、読んでいて没頭してしまう作品でした。

 

人をすこし・○○と括っていた理帆子の考えがたどり着いた先は凄く良いと思った。

 

藤子・F・不二雄を「先生」と呼び、その作品を愛する父が失踪して5年。高校生の理帆子は、夏の図書館で「写真を撮らせてほしい」と言う一人の青年に出会う。戸惑いつつも、他とは違う内面を見せていく理帆子。そして同じ頃に始まった不思議な警告。皆が愛する素敵な“道具”が私たちを照らすとき―。