羽休みに娯楽を

読書、主に小説の感想を上げています。たまに、漫画や映画等も。

愛じゃないならこれは何

愛じゃないならこれは何 (ジャンプジェイブックスDIGITAL)

 

斜線堂先生の恋愛小説は感情の歪みを生んでいて、その飲み込みきれない気持ちに振り回される登場人物から目が離せない。

 

タイトルの通り、ただの愛じゃない何か。その感情が何なのか分からずモヤっとしながらも自分の感情と向き合っていく女性達の心境の変化を描いている。

愛じゃないけど、その気持ちを受け止めていく引きには良くも悪くも登場人物の成長を感じます。

良くも悪くもというのは、人の気持ちを人が評価するのも変な話か。人の抱いている気持ちはその人のものだ。

彼女、彼らの行く末に興味が湧くばかりです。

 

各話マニアックというか、そこを突くのかと感心しながら読めました。

短編ですが、1話1話読み応えがありました。

どの話もバッドエンドに行きそうなものだが、活路を見いだしていく登場人物に力強さを感じました。

読み始めはいったいどうなるのかハラハラしますが、畳む際の着地の仕方に唸りました。

 

また、斜線堂先生の恋愛小説を読みたいなと思いました。

 


 

斜線堂有紀のはじめての恋愛小説集。

『きみの長靴でいいです』
天才ファッションデザイナー・灰羽妃楽姫は、二八歳の誕生日プレゼントに、ガラスの靴を受け取った。
送り主は、十年来の妃楽姫のビジネスパートナー、そして妃楽姫がいつか結婚すると信じている男、妻川。
人生の頂点に到達しようとしている妃楽姫だったが、しかし次の瞬間彼女が聞いたのは、妃楽姫以外の女との、妻川の結婚報告だった。

『愛について語るときに我々の騙ること』
「俺さ、ずっと前から新太のことが好きだったんだ。だから、付き合ってくれない?」
そういう男――園生が告白しているのは、私――鹿衣鳴花に対してだった。私たちの関係は、どこに向かおうとしているのか。
男と男と女のあいだに、友情と恋愛以外の感情が芽生えることはあるのだろうか。

『健康で文化的な最低限度の恋愛』
美空木絆菜は死にかけていた。会社の新入社員、アクティブな好青年、津籠の気を引きたかった絆菜は、彼の趣味――映画にもサッカーにも、
生活を犠牲にして一生懸命頑張って話を合わせた。そして今、絆菜は孤独に山の中で死ぬかもしれない。どうしてこんなことに。

『ミニカーだって一生推してろ』
二十八歳の地下アイドル、赤羽瑠璃は、その日、男の部屋のベランダから飛び降りた。男といっても瑠璃と別に付き合っているわけではない、
瑠璃のファンの一人で、彼女が熱心にストーカーしているのだ。侵入した男の部屋からどうして瑠璃が飛び降りたのか、話は四年前にさかのぼる――。

『ささやかだけど、役に立つけど』
初めて高校の放送部の部室で鳴花と出会った時に、自分はいつか彼女と付き合うんじゃないかと、園生は思った。
しかしそれから十年経って、彼女と自分の関係に、新太が加わった。二人よりも三人のほうが、ずっと安定している。
自分たちは、このまま死ぬまで三人なのだろう――でも、それでいいのだろうか。