凄い物語を読んだ。
そんな気持ちになりました。
1人の警察官がアルツハイマーを患った妻を殺した。自主的に事情を明かしていく中、決して語らない空白の二日間の行動が、警察官、検察官、記者、弁護人、裁判官、保安官などの様々な立場の人に影響を与えていく様子は読んでいて、じわじわと胸に迷いや苦しみが広がっていくのは見事としか言えない。
最初は皆、梶を疑って真意を測ろうとするが梶の頑なに話さないのを知り、梶に寄り添っていく流れになっていくのが自然となっていて読み進める手が止まりませんでした。
それぞれの立場の人が梶と向き合い、殺人を犯した背景を追っていくうちに見えた真実は目頭が熱くなりました。
ミステリーというよりは人間ドラマとして読み応えがありました。
ベルトコンベアみたいに流れるように、人の中身を知ろうとせずに罪を決めて良いのか?
問われる物語でもありました。
「妻を殺しました」。現職警察官・梶聡一郎が、アルツハイマーを患う妻を殺害し自首してきた。動機も経過も素直に明かす梶だが、殺害から自首までの二日間の行動だけは頑として語ろうとしない。梶が完全に“落ち”ないのはなぜなのか、その胸に秘めている想いとは―。日本中が震えた、ベストセラー作家の代表作。