羽休みに娯楽を

読書、主に小説の感想を上げています。たまに、漫画や映画等も。

夏の陰 文庫

夏の陰 (角川文庫)

 

殺人犯の父を持った岳と殺人犯に父を奪われた和馬が呪いから放たれるまでの物語。

前半が加害者側の岳の苦悩、後半は被害者側の和馬の苛立ち、両方の視点を知ることで終盤に剣道を通して、ぶつかり合う2人に圧倒されました。

 

互いに異なる生き方をしているが、一つの事件をきっかけに変わっていった人生を生きていく姿に心が締め付けられます。

 

岳は自分が犯罪を犯したわけではないのに、我が事のように苦しむのはしんどいなぁ。

和馬は理不尽のように父を失った喪失感を抱えて生きていき、歪む心は読んでいて辛い。

 

岳と和馬、2人の共通点である剣道で決着をつけるのが良いですし、最後の種明かしには救いがありました。

 

 

殺人犯の息子と被害者の息子、交わらぬ二人が相見える時。罪と赦しの物語

自分が認められることなどあってはならない。殺人犯の息子なのだから――。息を潜め生きてきた岳を導いてくれたのは、中学時代、ボランティアで剣道を指導してくれた柴田だった。やり場のない気持ちを剣道にぶつけてきた岳は、父が殺した警察官の息子・和馬と遭遇する。既に剣道で名を馳せる和馬との接触を絶とうとする岳に、柴田は「最後に岳の試合を見せてほしい」と言い……思わぬラストで涙腺が決壊する罪と赦しの物語。