羽休みに娯楽を

読書、主に小説の感想を上げています。たまに、漫画や映画等も。

流浪の月

流浪の月 (創元文芸文庫)

 

映画化を機に読み返しましたが、再び物語に呑まれました。

世間では誘拐とされている事件も蓋を開けてみれば、救いの時間だった。

更紗と文の同居は世間から許されないものだったかもしれないが、許される必要があるだろうか。

世間は事実を拡大解釈して決めつける。余計な善意ほどタチが悪いものはない。

それを振り切るのは力がいるが、更紗と文ならば大丈夫だと思わされました。

更紗と文が苦しみながらも、自分達の歩く道を決められて良かったです。繊細な心理描写に長けていて、惹きこまれました。

 

更紗は文への罪悪感、文は性や自分の至らなさ、その他にも様々な感情や事情が絡みあっていて、2人の繋がりは大切なものだったんだと感じました。

 

世間と付き合っていけなくても、自分が良いと思う方へ進めば良い。世間は勝手なんだから。

 

あなたと共にいることを、世界中の誰もが反対し、批判するはずだ。わたしを心配するからこそ、誰もがわたしの話に耳を傾けないだろう。それでも文、わたしはあなたのそばにいたい―。再会すべきではなかったかもしれない男女がもう一度出会ったとき、運命は周囲の人を巻き込みながら疾走を始める。新しい人間関係への旅立ちを描き、実力派作家が遺憾なく本領を発揮した、息をのむ傑作小説。