阿津川先生ならば読みたいと思うくらい、今勢いのあるミステリ作家の阿津川先生の新作。
短編集の透明人間は密室に潜むに収録されていた、盗聴された殺人に登場した探偵と助手を主人公にした作品。
印象的だった短編が、こうして厚い長編に膨らむなんて幸せでした。
キャラクターが立っていて、かつミステリーとして多重構造で伏線回収も抜群となれば盛り上がるのは間違いない。
阿津川先生の作品は様々読んでいるが、今作はかなりお気に入りの1冊になりました。
名探偵対頭の切れる犯人では欠かせないメタなやりとりや、腹の探り合いは好きでした。
最初から最後までドキドキハラハラしつつ、そんなところに伏線がという驚きがあり、最後の最後まで気が抜けない展開でした。
二転三転ところではなく、数え切れないくらい読者が驚く反転をしていて、サービス精神が凄いなと唸ります。
そして、作中で最後まで隠されていた耳が良い美々香の秘密には圧倒されました。気持ちいいくらい騙されました。ええ。
そんなことある!?と。
作品で売りにしている部分にそんなことがあるなんて、想像出来るわけがない。唖然としました。
これは、是非ともシリーズ化して欲しいと思う作品でした。
驚きたいならば、今作を是非!
大野探偵事務所の所長・大野糺が誘拐された⁉ 耳が良いのがとりえの助手・山口美々香は様々な手掛かりから、微妙な違和感を聞き逃さず真実に迫るが、その裏には15年前のある事件の影があった。誘拐犯VS.探偵たちの息詰まる攻防、二転三転する真相の行方は……。新世代本格ミステリーの旗手が描く今年最大の逆転ミステリー開幕。 本当に騙されていたのは誰だ?