すかすかの作者の新作。
物語の流れが分かりやすく、かつ綺麗な気持ちにさせられる作品でした。
スパイ・宗史と未知の細胞・ノンが同居して、築いていく関係。そして崩れていく感情。起床転結が非常に良く出来ていて、素直に流れるがまま読み進められました。
安定した物語運びでした。
宗史には複雑な過去があり、ノンにはタイムリミットがある。2人の短い同棲生活は儚く散るのかと思いきや… 中々良い収まり方をしていて、良い読後感でした。
独特のコミュニケーションと譲れない個人の矜持が魅力的な作品でした。単巻で終わらずに続いて欲しいです。
宗史とノン以外の登場人物も魅力的で、愉快な掛け合いが作品を和らげていました。
産業スパイの青年・江間宗史は、任務で訪れた研究施設で昔なじみの女子大生・真倉沙希未と再会する。 追懐も束の間、施設への破壊工作(サボタージユ)に巻き込まれ…… 瀕死の彼女を救ったのは、秘密裏に研究されていた未知の細胞だった。 「わたし、は――なに――?」 沙希未に宿ったそれ=呼称“アルジャーノン”は、傷が癒え身体を返すまでの期限付きで、宗史と同居生活を始めるのだが―― 窓外の景色にテレビの映像、机上の金魚鉢……目に入るもの全てが新鮮で眩しくて。 「悪の怪物は、消えるべきだ。君の望みは、間違っていないよ」 終わりを受け入れ、それでも人らしい日常を送る“幸せ”を望んだ、とある生命の五日間。