帯のミステリ作家陣の書評を読んで期待値が上がってましたが、それを頷ける衝撃がありました。終盤まで、このまま推理するだけだと少し味気ないなと思っていたら、まさかの真相に度肝を抜かれました。
作中にトロッコ問題について語られていたのはそういうことかと打ちひしがれました。誰かを犠牲にすれば生き残るとなれば、誰しもが少数の犠牲で済ましてしまうだろう。そうした人の心理を突いたミステリでした。
特殊なクローズドサークルで、登場人物が多かったが、登場人物の掘り下げがあまりされていなかったのはちょっと残念かなと。
探偵役だった彼が舞台装置みたいな扱いだったのは気になります。
ミステリとして優れていただけに、気になる点があったのは勿体ない。
しかし、最後まで読んで受けた衝撃を思うと全てが吹っ飛びました。
終わり悪ければ全て良し。
9人のうち、死んでもいいのは、ーー死ぬべきなのは誰か?
大学時代の友達と従兄と一緒に山奥の地下建築を訪れた柊一は、偶然出会った三人家族とともに地下建築の中で夜を越すことになった。
翌日の明け方、地震が発生し、扉が岩でふさがれた。さらに地盤に異変が起き、水が流入しはじめた。いずれ地下建築は水没する。
そんな矢先に殺人が起こった。
だれか一人を犠牲にすれば脱出できる。生贄には、その犯人がなるべきだ。ーー犯人以外の全員が、そう思った。タイムリミットまでおよそ1週間。それまでに、僕らは殺人犯を見つけなければならない。