素晴らしい短編集でした。
各話の語り手の名前が白野真澄で統一するというのは斬新でした。同姓同名の赤の他人で性別、年齢、悩みなど、持っているものが違うのに不思議と親近感が湧いてしまう。
名前というのは大切なものだが、自分では選べない。名前に左右されてしまいそうならば、変わることも考えなければいけないのかもしれない。
妙な味のある作品で、各話印象深い。その中で1番はやはり表題作かなと。
名は体を表すと言うが、正にこのことといった話になっていました。しょうがない。というのはマイナスなイメージがあるが、その言葉に救われる人もいるというのはハッと目が覚めました。
他には1番最初の短編の純粋であることを振り払ってみせた目覚めはカッコ良かったです。押し付けられる自分ではなく、生きたい自分になっていくというのは大切ですね。
全体的に読み終えると肩の荷が下りる感覚がする読後感です。物語の始まりでは悩みがあるところからだが、終わりに向かうにつれて、胸中で変化していく様子が描かれるので、最後の方は白野真澄の決断を応援したくなります。
解説も興味深くて、最後まで楽しめる作品でした。
この名前でこの人生で本当によかった
同じ名前を持つ5人の、抱きしめたくなるような日々心の刺を優しく包みこむような
確かな文学世界がここにある!
――ブックジャーナリスト 内田剛白野真澄はしょうがない。
なんてホッとさせてくれる言葉だろう。
――うさぎや 矢板店 山田恵理子小学四年生の「白野真澄」は、強い変化や刺激が苦手だ。横断歩道も黒い部分は暗い気持ちになる気がして、白いところだけを渡って歩いている。なるべく静かに過ごしたいのだが、翔が転校してきてからその生活は変化していく……(表題作)。頼れる助産師、駆け出しイラストレーター、夫に合わせてきた主婦、二人の異性の間で揺れる女子大生。五人の「白野真澄」たちが抱えるそれぞれの生きづらさを、曇りのない視線で見つめた短編集。