東大出身作家を集めたアンソロジーというのは珍しいですね。
個人的に市川先生、辻堂先生作品が好きなので、読みました。
2作家はもちろんですが、どの短編も粒揃いで面白かったです。
読んだ後スッキリする話やイヤミス的な締めをする話もあったりと、揺さぶられました。良い感じに作風がばらけていて楽しめました。
シリアスは市川先生、伊予原先生、結城先生、浅野先生。
ユーモアは辻堂先生、新川先生。
新川先生の砕けっぷりはタイトルから匂うが。話としてはふざけたところから真面目に推理まで移るのは非常に好みだった。
辻堂先生の可愛さと危うさ、東大に行く為に勉強している間に欠け落ちてしまったものを描いていて、納得の落とし方でした。
結城先生の東大をこれでもかと使いまくったイヤミスはほんっっっとに呑まれるかと思った。締めがまた効いてくる。
浅野先生はミステリとして二転三転する状況と語り手の苦悩を繋げていて、安定感があった。余韻が良い苦さ。
市川先生は青春、現実にあったことを混ぜていて、上手く騙しに来ていました。解決の起点が良い場所を突いていました。
伊予原先生は研究者の業とシビアな事実を交ぜていました。崩れ落ちそうになる結末から、前を向く姿は印象的でした。
好きな作家がいるならば、読んでみたら良いと思います。とはいえ各話読み応えあるので、今作を機に好きな作家と出会えるかもしれません。
東大卒&東大生作家による「東大ミステリ」アンソロジー!
収録作
「泣きたくなるほどみじめな推理」 市川憂人
1995年、憧れの従姉を失った私は、彼女の痕跡を探すため東大の文芸サークルに入った。「アスアサ五ジ ジシンアル」 伊与原 新
地震研に突然届いた1枚のはがき。虹で地震を予知したという「ムクヒラの電報」との関連は。「東大生のウンコを見たいか?」 新川帆立
東大卒のミステリ作家・帆立は、親友リリーとともに農学部で起きたウンコ盗難事件の犯人を探す。「片面の恋」 辻堂ゆめ
五月祭の準備中、クラスメートの熱烈な恋を一瞬にして冷めさせた「片面」の意味とは。「いちおう東大です」 結城真一郎
美しく完璧な妻がまっさきに提示した新居の条件は、「東大が見えるところ」だった。「テミスの逡巡」 浅野皓生 (東大生ミステリ小説コンテスト大賞受賞作)
卒業生の医師を取材した学生メディア「UTディスカバー」のもとに、彼は人殺しだという告発状が届く。