蝉かえるが文庫化されたので、読み返しましたが、何度読んでも面白い。
主人公・魞沢のユーモア溢れる語り口から、切ない事件の真相に向かう流れがスムーズ。
だから、感情の流れをよく追いかけられる。事件関係者の内なる想いまで拾っているからこそ、読後に思わず浸ってしまう。
魞沢のお調子者具合が絶妙で、物語にピッタリな立ち位置なのが素晴らしい。
事件をかき回したりしながらも、しっかり探偵としての推理力を披露するあたり、憎たらしい。
昆虫オタクのとぼけた青年・エリ沢泉(えりさわせん。「エリ」は「魚」偏に「入」)。昆虫目当てに各地に現れる飄々(ひようひよう)とした彼はなぜか、昆虫だけでなく不可思議な事件に遭遇してしまう。奇妙な来訪者があった夜の公園で起きた変死事件や、〈ナナフシ〉というバーの常連客を襲った悲劇の謎を、ブラウン神父や亜愛一郎(ああいいちろう)に続く、令和の“とぼけた切れ者"名探偵が鮮やかに解き明かす。第10回ミステリーズ!新人賞受賞作を含む連作集。