羽休みに娯楽を

読書、主に小説の感想を上げています。たまに、漫画や映画等も。

僕が電話をかけていた場所

僕が電話をかけていた場所 (メディアワークス文庫)

 

君が電話をかけていた場所で撒かれていた伏線を回収して、終わりに向かっていくので身体に重たくのしかかってくるような重厚感がありました。その分、読み応えはバッチリ。

 

奇妙な四角関係になり、陽介が揺れるのは分かる。自分の大切な人が別の方向を向いていて、場の空気を壊さないようにするのは辛い。

千草も複雑なポジションにいて、報われない立ち位置でした。

陽介を思っているが、陽介は…みたいな。

だか、最後に明かされた千草が秘めていた想いは確かに響くものがありました。

 

そして、陽介と初鹿野の関係の行方ですが、陽介がある嘘をついたことで取り返しのつかないことをしてからは、悪い方向に傾くんじゃないかと思いましたし、初鹿野の過去が明らかになり、絶望に埋め尽くされていたが、そこから一転。

気持ちがすれ違っていたり、思い込みで噛み合わなかっただけで、本当は互いを考えていたというのが分かって、美しいとさえ思いました。

真相を知った時は良い意味で腰が抜けたというか、全身から力が抜けました笑

 

不器用な陽介と初鹿野が幸せを掴んだんだから、これからは手を離さないで欲しいですね。

 

最初はビターな感じで終わるかと思いきや、良い余韻が残る最後で、良かったです。

 

 

(あらすじ)

ずっと、思っていた。この醜い痣さえなければ、初鹿野唯の心を射止めることができるかもしれないのに、と。「電話の女」の持ちかけた賭けに乗ったことで、僕の顔の痣は消えた。理想の姿を手に入れた僕は、その夜初鹿野と再会を果たす。しかし皮肉なことに、三年ぶりに再会した彼女の顔には、昨日までの僕と瓜二つの醜い痣があった。途方に暮れる僕に、電話の女は言う。このまま初鹿野の心を動かせなければ賭けは僕の負けとなり、そのとき僕は『人魚姫』と同じ結末を辿ることになるのだ、と。