朝井リョウ先生の作品は桐島〜を読んであまりしっくりこなかったですが、今作はずっしりきました。
映画監督を目指す尚吾と紘の2人が別々の道に進み、映像を作っていくうちに縛られていき、自分が何の為に作っているのか分からなくてなってくる。
勢いがあるYouTubeの発達。
手軽に動画が作られて、評価される。
そんな世界で時間をかけて映画館まで足を運ぶ数は少なくなるし、作り手も客に合わせようとなっていく。
作品の完成度や価値についてもとことん突いてきて、しんどくなるくらい本質に迫っていく文章から目が離せなくなっていきます。
何か発信するならば発信したものの正確性や責任を持ち、胸を張れることが大事。
自分の中で頭の中で噛み砕いていくのに必死になっていましたが、消化していくうちに思考が柔らかくなっていきました。
視野が広くなったような気がします。
物事の本質を見極めることの重要性が痛いほど胸にグサグサ刺さってきます。
手軽さに怠けて、思考を手放してしまうのはやめようと思いました。
何度も読み返して、噛み締めたくなる言葉がたくさんありました。
「どっちが先に有名監督になるか、勝負だな」新人の登竜門となる映画祭でグランプリを受賞した立原尚吾と大土井紘。ふたりは大学卒業後、名監督への弟子入りとYouTubeでの発信という真逆の道を選ぶ。受賞歴、再生回数、完成度、利益、受け手の反応―作品の質や価値は何をもって測られるのか。私たちはこの世界に、どの物差しを添えるのか。朝日新聞連載、デビュー10年にして放つ新世代の長編小説。