羽休みに娯楽を

読書、主に小説の感想を上げています。たまに、漫画や映画等も。

千歳くんはラムネ瓶のなか5

千歳くんはラムネ瓶のなか 5 (ガガガ文庫)

 

毎巻厚みのあって、素晴らしい青春ものですが今回は千歳達の高校2年生の夏休みという、もう戻れない大切な日々が瑞々しく切り取られていて、わいわいしつつ切ない感情が混ざり合っていたり、ヒロイン達の悩める乙女心や男の秘める想いが感じ取れて濃密な青春でした。

 

語り手が変わっていき、いろいろな角度から千歳達の間にある関係性やその間にある亀裂がが浮かび上がって、最後に破裂する構成は見事で、衝撃を受けました。

表紙の通り夕湖が掘り下げられていて、天真爛漫だけどだからこそ語られない彼女の内側が覗けて、悶々としましたが、なんとか乗り越えられるのかと思いましたが駄目でしたね…

ただ、薄々嫌な空気はありましたが、気持ちが溢れてましたね。

そんな夕湖の気持ちが痛いほど伝わってきているからこそ、胸の中が暴れ出しそうでした。ここからどうなっていくんだ…

 

そして優空の最後のフォローは心に沁みました。

 

目が離せないシリーズですが、次巻が大注目ですね。

 

1巻から感じていた千歳達の関係で目を逸らしていたところに触れていて、辛いですが、この痛みも青春の一部だなぁと。

 

いつかきっと、この日々を思い出す。

夏休み。藤志高では恒例の、2・3年合同の勉強合宿。
と言っても、2年生の俺たちにとっては、仲間たちと夏のイベントを楽しむいい機会だ。

どこまでも青い空と海。色とりどりの女子の水着。夜、ふたりきりのナイショ話。男だけの温泉回(?)……。

眩しい光景を見つめながら、あるいは目をそらしながら。
俺たちは、こぼれ落ちそうな思い出を、ポケットいっぱいに詰め込んでいく。

――なにかが変わる夏が、賑やかに密やかに、幕を開けた。