羽休みに娯楽を

読書、主に小説の感想を上げています。たまに、漫画や映画等も。

正欲

正欲

 

内容が精神に影響しそうで、迷ってましたが読みました。

見事に精神がすり減りました笑

 

今、多様性というのが重要になってきている世の中で果たして、多様性という意味を正しく理解出来ているのかを問いかけてくる。

多様性という言葉を聞いたり、知った風に生きている人達の至らなさが非常に現実味があって、モヤモヤしました。

嫌なくらいに的をいていて、読書を切り裂いていきます。

生きていて少数派と捉えられる人達の葛藤は切実で、それこそ多様性の世の中ならばその人達も尊重しなければならない気もするが、そんなことはない。

分かろうとしない、自分は正しくいるという驕りを持っている人に話しても無駄というのは、確かにとしか…

 

登場人物の造形や思考がバランスよく整っているからこそ、突き刺さる多様性の本質に胸が切り裂かれるような気持ちになりました。多様性というのは便利な言葉として使用するべきではないなと改めて思いました。


様々な視点から展開されていき、それぞれの心境の変化が集まっていく最後は圧巻でした。

 

 

あってはならない感情なんて、この世にない。
それはつまり、いてはいけない人間なんて、この世にいないということだ。

息子が不登校になった検事・啓喜。
初めての恋に気づいた女子大生・八重子。
ひとつの秘密を抱える契約社員・夏月。
ある人物の事故死をきっかけに、それぞれの人生が重なり合う。

しかしその繋がりは、"多様性を尊重する時代"にとって、
ひどく不都合なものだった――。

「自分が想像できる"多様性"だけ礼賛して、秩序整えた気になって、
そりゃ気持ちいいよな」

これは共感を呼ぶ傑作か?
目を背けたくなる問題作か?

作家生活10周年記念作品・黒版。
あなたの想像力の外側を行く、気迫の書下ろし長篇。