羽休みに娯楽を

読書、主に小説の感想を上げています。たまに、漫画や映画等も。

月まで三キロ

月まで三キロ(新潮文庫)

素晴らしい作品でした!

以前から気になっていたが、読んで良かった!様々な岐路に立つ人達が上を見れるようになっていく短編集。

各話のスポット当たる人物論が自分の心と向き合っていき、視界が開けていく様子は読んでいて安心します。何に悩んでいるのか自覚するのが大事。また、不安が尽きないと視野が狭くなってしまうので、助言出来る人と出会うというのも大切だなと。

どの話も良い話でした。

表題作に限らず、どのエピソードも印象的でした。

全6編を収録したこの短編集は、それぞれに多彩な魅力に富んでいて、単行本発売以来、どれも人気を集めています。いわばハズレのない短編集なのですが、とりわけ人気の高いのは「エイリアンの食堂」。
舞台はつくば市にある食堂。ここは妻を亡くした男が切り盛りする定食屋なのですが、「エイリアン」とは、そこに来る風変わりな女性客。毎晩決まった時刻に来店しては、ひとりで定食を注文する。男の一人娘の鈴花はひそかにあだ名をつけるのですが、はたしてこの女性の素顔とは。作品のごく一部をご紹介します――。

プレアさんはもとの澄まし顔に戻り、ルーペのひもを首にかけた。
「(前略)これさえあれば、わたしは、どこにいても大丈夫」
「どこにいても?」
「そう。ジャングルでも砂漠でも、工場のラインでもネオン街でも。このルーペをのぞけば、そこにわたしの本当の居場所が見える。これをもらった頃のわたしに戻れる。わたしがわたしでい続ける勇気をくれる」
毎晩ひとり、定刻に定食だけを食べて帰る「プレアさん」は、世間的には孤独な女性にみえます。でも、読み進めるうちに、「ある情熱」が彼女の芯に燃えているのがわかってくる。そして、すべてが明らかになるとき、登場人物たちはみな、今まで想像もしなかった関係性のなかに、自分を発見することになるのです。
他の5編もふくめて、人物たちの変化に心うるおう物語ばかりです。お楽しみください!