羽休みに娯楽を

読書、主に小説の感想を上げています。たまに、漫画や映画等も。

ままならないから私とあなた 文庫

ままならないから私とあなた (文春文庫)

 

読み終えて、ずしんと身体が重たくなります。

ページ数は多くはないが、収録されている2篇のそれぞれの心理描写や自分と他者との違う考えをじっくりと描いていて、最後に突きつけられる考えの矛盾さや思考の穴、傲慢さが重たくのしかかってくる構成が効いてくる。

違う認識を持つ人との関わりをどうしていくのかは考え続けないといけないと思います。

 

自分と他者、考えや生き方は違うものだと思うが、それを受け入れて関係を築いていくのは誰にでも出来ることではないなと。自分の認識のしてない見方と直面してから、どう向き合うのか問われていく物語でした。他人事ではなく、自分事になっていくとどう考えていくのか悩ましいものがありました。

 

レンタル世界では人間関係の作り方や維持について、表題作では合理的と感性的のズレ、それぞれ考えさせられる内容で、朝井リョウ先生は片方だけではなく両側、それぞれの考え方に寄り添っているのが作品の良いバランスを生んでいるのかなと。

 

自分にとって都合の良いことだけではなく、苦手、関わりたくないと思う気持ちと直面することも大事だなと思いました。

人生はままならないけど、それがまた良いのかもしれない。

 

 

先輩の結婚式で見かけた新婦友人の女性のことが気になっていた雄太。
しかしその後、偶然再会した彼女は、まったく別のプロフィールを名乗っていた。
不可解に思い、問い詰める雄太に彼女は、
結婚式には「レンタル友達」として出席していたことを明かす。 「レンタル世界」

成長するに従って、無駄なことを次々と切り捨ててく薫。
無駄なものにこそ、人のあたたかみが宿ると考える雪子。
幼いときから仲良しだった二人の価値観は、徐々に離れていき、
そして決定的に対立する瞬間が訪れる。
単行本に、さらに一章分を加筆。少女たちの友情と人生はどうなるのか。
「ままならないから私とあなた」

正しいと思われていることは、本当に正しいのか。
読者の価値観を心地よく揺さぶる二篇。

解説は、Base Ball Bear小出祐介氏。