ふと気になって読んでみたら大当たりでした。
表紙やあらすじから生きていて悩んでいる少女の物語なんだなと思っていましたが、素直に明かさずにオセロのように白、黒パートで語り手が変わっていて二つの面から進む物語で非常に惹きこまれていきました。
途中から、あれ?と思ったが、最後に白黒が混ざり合って、反転していく様は見事でした。
ヒントはあって、読者に気づかせようという配慮も好感が持てます。
郁美の苦しみや行先の決められない感情が絶妙な配分で描かれていて、感情移入しやすい作品でした。
さらに印象的な台詞が多々あり、生きていくうえでの救いを感じました。被害者、加害者についてなんて唸るしかないです。
学生や大人でも悩むことはある。
それでも今だけでなく先にも目を向ける視野があれば生き方も変わるなぁと。
単純な言葉では表せない魅力がある作品でした。
奥田亜希子先生の他作品も読んでいこうと思います。
大切なものは、些細なことで壊れてしまう――。ティーン向けファッション誌の編集者・禄は、お悩み相談ページに投稿してきた渚との間にトラブルを抱えていた。地方に暮らす中学生の郁美は親友の明日花とともに同誌を愛読中。だが、東京からの転校生・道成の存在が二人の関係を次第に変えてゆき……。出会うはずのない人生が交差するとき、明かされる真実とは。驚きがやがて胸打つ感動にかわる、新しい時代の青春小説!