単行本時から気になってたが、読めてなかった。文庫化してくれて助かりました。
立派な家を建てたが、そこには誰も住んでいなかった。
仲良さげな夫婦、子供が住んでいた形跡がなく、ただ椅子が置いてあった。
その状況からよくぞここまで裏側を練って、今と繋げたなと唸るばかり。
物語のとっかかりがこれで良いのか?となるものでしたが、一家の行方、椅子の出所など調べていくうちに見えてくる真相というのは非常に興味深かったです。
最初はどう展開していくのか不安でしたが、中盤以降は読む手が止まらず、真実に近づいていく間に起こる出来事にも心揺さぶられました。
ミステリーだけでなく、父親、家族、お仕事小説要素もあり、全てが上手く絡み合っていました。
なので、読んでいて先が見えなくても読み進めた先に見えていくものというのを追いかけたくなるような感じがしました。
最後に明かされた真実には目頭が熱くなりました。
いったいどうなることかと思いましたが、よくまとめきったなと。
長い旅に感じましたが、読み終えてみれば彼らの今後も知りたくもなりました。
無人のY邸に、なぜ「タウトの椅子」が残されていたのか?
そして、仲睦まじそうに見えた一家は一体どこへ?
感動を超えた人間ドラマがここにある。北からの光線が射しこむ信濃追分のY邸。建築士・青瀬稔の最高傑作である。通じぬ電話に不審を抱き、この邸宅を訪れた青瀬は衝撃を受けた。引き渡し以降、ただの一度も住まれた形跡がないのだ。消息を絶った施主吉野の痕跡を追ううちに、日本を愛したドイツ人建築家ブルーノ・タウトの存在が浮かび上がってくる。ぶつかりあう魂。ふたつの悲劇。過去からの呼び声。横山秀夫作品史上、最も美しい謎。