刀と傘を読んで歴史ミステリーに興味が出てきたので、同レーベルから出てきた今作を読もうと思いました。
骨太な歴史ミステリーで、1話1話の真相に至るまでの難しさと解いた後に残される現実がとことん突き詰められていて、素晴らしいです。
なぜ、事件が起きたのかというのと解けた後にも油断ならない事情が見えて、各話に重みがありました。
主人公の頼盛の芯のある生き方もよく描かれていて、胸に秘めた想いにいたるまでの生き方が見えているからこそ、エピローグの後にまで残る彼の気持ちに盛大な拍手をしたくなります。
兄の清盛に使われたり、周りに理解されずとも、自分の考えを信じ抜いて見せたのはまさに蝶としての本懐だったのではないかと。
タイトルの意味はどんな風になっているのか気になっていましたが、作中でしっかり回収されていて、読み終えてから表紙を見ると感慨深いものがあります。
ミステリーとしてもがっちり楽しめるし、主人公の頼盛を追うのもよし。
素晴らしい作品でした。
平清盛の配下である童子・禿髪は、なぜ惨殺されたのか? 首のない五つの死体から、どうすれば探している人物を特定できるのか? 帝の庇護下にあった寵姫を、どのようにして毒殺したのか? ――不可思議な謎に挑むのは、清盛の異母弟にして一族の裏切り者・平頼盛。平安時代ならではの、前代未聞の新しい謎を描いたと話題を呼んだ、第15回ミステリーズ!新人賞受賞作「屍実盛(かばねさねもり)」など5編を収録。新鋭が贈る歴史ミステリ連作集(受賞時の齊藤飛鳥名義より変更)。