羽休みに娯楽を

読書、主に小説の感想を上げています。たまに、漫画や映画等も。

線は、僕を描く 文庫

線は、僕を描く (講談社文庫)

 

単行本既読。単行本読んだ際は正直、作品の魅力に気づけなくて描写が薄い印象だったが文庫で再読してみたらガラッと印象が変わりました。

多分、前よりも読解力や楽しむツボが変わっているから、今は今作の魅力を感じとれたのかなと。

作品との出会うタイミングが大事なのかなと。

 

主人公、霜介が生きる意味を感じずにいるところに水墨画を教え込む先生が現れる。水墨画の描き方、良さを学ぶうちに人として生きる意味を感じるようになっていく変化が見事でした。

派手な展開、アクシデント、そうではなく、地道に霜介の心の動きと水墨画を描くということを掘り進めていき、霜介か水墨画を描く喜びと生と向き合うのが綺麗に絡み合うのが良い。

 

大会の結果もそうなるのかと納得出来ました。

なにより、過程を見ているだけに不思議ではないなと。

 

登場人物達の優しさにも良いなと。

皆、生きているのが伝わってきました。

 

 

「できることが目的じゃないよ。やってみることが目的なんだ」
家族を失い真っ白い悲しみのなかにいた青山霜介は、バイト先の展示会場で面白い老人と出会う。その人こそ水墨画の巨匠・篠田湖山だった。なぜか湖山に気に入られ、霜介は一方的に内弟子にされてしまう。それに反発する湖山の孫娘・千瑛は、一年後「湖山賞」で霜介と勝負すると宣言。まったくの素人の霜介は、困惑しながらも水墨の道へ踏み出すことになる。第59回メフィスト賞受賞作。