羽休みに娯楽を

読書、主に小説の感想を上げています。たまに、漫画や映画等も。

ロング・アフタヌーン

ロング・アフタヌーン

 

シンプルなタイトル、雰囲気ある表紙に惹かれて読みました。

物語の始まりから、作中作の危ういけど惹きずり込まれる雰囲気が素晴らしくて掴みが完璧過ぎた。

誰が狂気を孕んだ小説を書いたのか、なぜ描くに至ったのが気になってしかたがなかったです。作中作と分かっていても胸を掻きむしりたくなるような悶々とした気持ちにさせられるが、読み進める手が止まりません。

 

編集者が後悔しながら生きていて、狂気を孕んだ応募作を読む事で心境が変わっていき、過去のことを思い返していく。

編集者も生きながら迷いがあり、後悔していたが、考えに触れてくる小説と出会うことで変わっていく。

 

編集者がとある応募作品を読んで、作家はその作品を描くに至るまでと、描き切ることで互いに化学反応を起こして共感を重ねていき、浮かび上がってくる2人の人生に胸が締め付けられました。

 

久しぶりにゾクゾクする読書体験をしました。小説か現実か、創作だと思いたいが、恐らくは…

 

新央出版の編集者・葛城梨帆の元に突然、原稿が届く。それは以前新人賞で落選した志村多恵からのもので、学生時代の友人が時を経て再会するところから物語は始まっていた。立場の違う二人の会話はすれ違い、次第に殺意が募っていく。「いっそのこと、最後にこの女を殺してやろうか」――。そんな物語の女たちの苦境に思いを馳せるうち、梨帆自身も忘れられない出来事と原稿内容がリンクし始める……。
私たちのシスターフッドがここにある、著者渾身のミステリー。