父が有名な小説家だったが、家庭を顧みない生活を送っていて、そんな父が嫌いになり、小説そのものまで嫌いになってしまった主人公の春原が、父の死の後に文芸部に所属することになり、嫌でも小説と向き合わなければならなくなる。
最初は嫌な気持ちを持っていたが、いざ仕事になると小説にのめり込んでいったので、小説自体はそこまで嫌いではなかったよう。
最初は偉そうに感じた無愛想な直江さんに付いて仕事をしていき、編集者としての喜びや悔しさを学んでいく。
周りの先輩方からアドバイスはもらうが1人立ちしていく春原が眩しく見えました。
様々なタイプの小説家と関わっていき、本を出す苦しみや読者に喜ばれる幸せを共有したり、かと思えば断筆する小説家さんも…
気持ちが揺れることが多いが、それでも経験したことは糧にして前に進んいく春原の姿は見事で、惹かれました。
夢見がちだけど、決して下を向かない彼女に救われる人達はいる。
編集者のお仕事小説として、作家との向き合い方や小説との向き合い方に誠実さがあって良かったです。
また、春原の父や母の掘り下げもあり、消化不良にならなくて良かったです。
春原の成長物語としても面白かったです。
是非続きが読みたいです。
売れる本は簡単には出てこないが、売ろうとする強い気持ちがないと始まらないよなと。
当たり前だけど大事。
(あらすじ)
「この本は絶対に売れるのかい?」――そんなこと、わかるわけない。
「どうして小説の編集部に配属されなきゃいけないの?」
小説嫌いの春原美琴は、突然の異動に頭を抱えていた。
「文芸編集者ってのはな、小説を食って生きるやつのことを言うんだよ」と語る無愛想な先輩の指導のもと、彼女は一筋縄ではいかない作家達と悪戦苦闘の日々を送ることに。
そして「この本は絶対に売れるのかい?」と睨むような目で訊いてくるのは、誰もが恐れる厳格な文芸局長――。
これは、慣れない仕事に悩みながらも挫けず、成長していく美琴の姿を描く物語。