一読目より時間が経ち、再び読んだら物語の流れや結末に没入出来ました。静かな雰囲気だが、探し求めていた、依頼者の父の想いに舌を巻きました。暴かれる真実は読者に任せると言う締めが美味すぎる。
1つずつ別れている物語を追いかけて、どういう意味があるのか探していくのが気になって、読み進めるのが止まりません。
全ての物語が見えていきそうになり、今作に隠されている秘密に触れる終盤はゾクっとしました。人の裏側を描いていて、より光る嘘が魅力的でした。
語り手の義光の人生で陰があり、人生を切り開いていくわけでもなく、物語の中心に据えられていると思いきや、端役に過ぎないというのはなんとも言えない苦味があります。
大学を休学し、伯父の古書店に居候する菅生芳光は、ある女性から、死んだ父親が書いた五つの「結末のない物語」を探して欲しい、という依頼を受ける。調査を進めるうちに、故人が20年以上前の未解決事件「アントワープの銃声」の容疑者だったことがわかり―。五つの物語に秘められた真実とは?青春去りし後の人間の光と陰を描き出す、米澤穂信の新境地。精緻きわまる大人の本格ミステリ。