鮎川哲也賞最優秀受賞作
去年は受賞作が無かったので、今年はあって良かったです。
花と人、おろそかになってしまいそうな事を見つめ直していき、人の関係を前に進めていく優しい物語でした。
人情味ある物語でありながらも、ミステリとして気になるようなシチュエーションを作り上げていたのは上手いなと。
主人公・航大がやりたいこと、夢中になれることを探していくが中々見つからない。そんな彼が様々な謎と出会って変わっていく様子が見事でした。青春作品としても推せる。
また、安楽椅子探偵みたいなポジションの青年とお話好きの叔母さんも、魅力的でした。家族小説としての側面もあり、多彩な要素が詰まっていたかな。
地道に繋いでいく感じで、好きな作風でした。
爽やかな読後感がありました。
一年前、偶然出会ったおばあさんに会いたい。しかし手掛かりは、庭に沈丁花が生えていることと、その庭で交わした会話だけ――。トラブルにより部活を辞め無気力な日々を送る航大が、一年前の記憶を頼りにある家を探していたところ出会ったのは、美しい庭を手入れする不愛想な青年拓海だった。拓海は植物への深い造詣と誠実な心で、航大を導いていく。植物と謎を通して周囲の人間関係を見つめなおす、優しさに満ちた連作ミステリ。鮎川哲也賞優秀賞受賞作。