羽休みに娯楽を

読書、主に小説の感想を上げています。たまに、漫画や映画等も。

魔女の原罪

魔女の原罪 (文春e-book)

やはり五十嵐律人先生の作品は素晴らしいなと。テーマがあり、それを生かす舞台を整えるのが非常に上手い。法律を遵守するあまり、法律でなければ何やっても良いという歪な街を舞台にしていて、惹き込まれる導入でした。

今回は犯罪加害者、被害者、そして傍観者、それぞれの核となる部分を炙り出していて、読み進める手が止まらない。立場が違えど、同じ人だろうと思ってしまいます。

前半は学園モノだったが、中盤以降は殺人発生で一気にスリリングな展開をしていて、決意の法廷まで持っていくのは流石でした。

加害者家族、被害者家族、それぞれの悩みに寄り添いながらも、未来に希望を見出す最後は見事でした。

 

法律が絶対視される学校生活、魔女の影に怯える大人、血を抜き取られた少女の変死体。
一連の事件の真相と共に、街に隠された秘密が浮かび上がる。

僕(宏哉)と杏梨は、週に3回クリニックで人工透析治療を受けなければならない。そうしないと生命を維持できないからだ。ベッドを並べて透析を受ける時間は暇で、ぼくらは学校の噂話をして時間を潰す。

僕らの通う鏡沢高校には校則がない。ただし、入学式のときに生徒手帳とともに分厚い六法を受け取る。校内のいたるところには監視カメラが設置されてもいる。
髪色も服装も自由だし、タピオカミルクティーを持ち込んだって誰にも何も言われない。すべてが個人の自由だけれども、〝法律〟だけは犯してはいけないのだ。

一見奇妙に見えるかもしれないが、僕らにとってはいたって普通のことだ。しかし、ある変死事件をきっかけに、鏡沢高校、そして僕らが住む街の秘密が暴かれていく――。