羽休みに娯楽を

読書、主に小説の感想を上げています。たまに、漫画や映画等も。

記憶書店うたかた堂の淡々

記憶書店うたかた堂の淡々 (講談社タイガ)


記憶を売買することができる青年・現野一夜が様々な迷いを抱えている人から依頼を受けて、記憶を誰かに送ったり、交換したりしてその人が本当に欲しかったものを見つけ出すのに繋がっていくのが美しい。

各話の登場人物の内側の気持ちを暴くのがとても上手くて、まず話に夢中になります。そして、記憶にまつわることが明かされていくとがらりと景色を変える展開には驚かされます。そして、どの話も胸に訴えかけてくるような切実さがあり、読み終わった後の読後感が良いです。

泣ける話はうるっときますし、笑えるところは笑える。

各話で気持ちが揺れるので、どんどん引き込まれます。


一夜も不器用ながら随所で微妙な変化をしていき、とっつきやすくなってるのも良い。


シリーズ化してほしいです。


(あらすじ)


文学少女」シリーズの野村美月、待望の最新作! 

忘れたい人は、いますか。 
忘れられたい人は、いますか。 

静乃の優しすぎる恋人、誠が突如失踪した。職場に連絡すると彼は一年前に亡くなっているという。では、彼は一体誰だった? 
静乃の脳内に存在する、自分のものではない思い出。これは人の記憶が綴られた書物を売買する、うたかた堂の仕業か。記憶に浮かぶ海を、静乃は目指した。冷めた目をした美貌の青年が書物を繙くとき、心に秘めた過去が、秘密が、願いが、解き明かされる!